第441話【ユートピア計画4】

<<イリヤ視点>>


「お父様、大変です。また星が消えました。

今度はシルビア星です。」


さっき監査部から連絡を受けて、すぐにお父様に連絡しています。


この前のアースといい、星ごと消失させてしまうなんて、どんな力が働いているのでしょうか。


「イリヤ、今度はシルビア星か。


あそこには人工衛星を仕掛けて置いたと思うのだが。」


「ええ、30ほど仕掛けてあったはずです。


今確認してもらってます。… お父様、人工衛星も同時に消えたようですね。」


「すぐにそっちに向かう。」


それだけ言うとお父様は無線を切ってしまいました。


「イリヤ、ラスク星から監視させていたはずなんだが、そちらはどうだった?」


いきなり後ろでお父様の声が聞こえてビックリ。


最近瞬間移動とかっていうのを覚えたみたいで、突然現れるんですもの、全く心臓に悪いわ。


「マサル様、ラスク星に設置している魔力望遠鏡からも、シルビア星の消失は確認出来ております。」


ランスお兄ちゃんの秘書で、ここでは司令塔の役割をしてくれているイスレムさんが冷静に説明している。


「イスレムさん?やけに冷静ね。


わたしなんて驚いて硬直しちゃったのに。」


「ええ、四六時中ランス様が驚かせてくれてましたから、耐性が付いたのかと。」


耐性って、お兄ちゃんったら何をしてるのかしらね。


「マサル様失礼しました。

それでラスク星の魔力望遠鏡の映像を分析しましたところ、驚くべきことが判明しました。


消失したのはシルビア星だけではありません。


近くの星、そうですね、シルビア星の恒星を中心に周回する星全てが一瞬のうちに消失しました。」


ええっ、恒星系ごとですって!!


「やはりそうか。


道理で近くまで行っても思念が拾えなかったはずだ。」


得心いったかの様に冷静に状況を分析してるお父様に感心して…って近くまで行ってきた?星も無い宇宙のど真ん中に?


もうお父様のことが分からなくなってきたわ。


神になるってこういうこと?


「心配しなくても、イリヤさんももうすぐその領域だからね。」


わたしの表情から何を読み取ったのか、ウルティムさんが、当たり前のように言い出した。


「もーー、ワケわかんないよ。」


「イリヤ、独り言は終わったかい?


とりあえずコーヒーでも飲んで落ち着こうか。」


もーー、誰の責任で独り言になったと思ってるのよ!




<<マサル視点>>


総司令部を出て、調査室に向かった。


室内に入ると、室長とジオンさんがなにやら話しをいているところだった。


「マサル君、また星が消えたようだね。」


「ええ、シルビア星と言う星ですっていうか、シルビア星を含む恒星系全体のようです。」


「と言うことはアースも?」


「そうですね。こちらに来る前にちょっと見てきましたが、間違い無さそうです。」


「そうか、分かった。こちらに入っている情報とも一致するな。

それでマサル君、何か対応を考えているのかい?」


「いえ、まだ本質的なところは思いつかないですが、いくつかの星の住人を新しく用意した星に移住してもらおうかと。」


「それはまた、どういう意図かね。」


「はい、アースもシルビアも優れた文明を持つ国ですが、双方共異世界防衛連合軍に加盟していませんでした。」


「シルビアもか?」


「ええ、シルビア星は国際連合には加盟しているのですが、星自体がひとつの大きな国として機能しているため、軍事力がほとんど持っていないんです。


そのため、これから予算を割いて軍事力を輸入する手はずになっていました。」


「そうだったのか。なるほどな。アースにしても星自体を焦土化するくらいの軍事力を持っていても、対異星人と戦うほどの軍事力は無かったはずだな。


ゼロスめ、誘拐後もし気付かれても自分に抵抗できない星を狙っているということか。」


「そうですね、少なくともこの2星に関しては。逆に言うと、異世界防衛連合軍に参加している星には、ゼロスに抵抗できるだけの軍事力が配備されていると考えているのかもしれません。」


「なるほど、それはあり得るな。恐らく今回使用している時空空間が不安定なのかもしれん。


だからこそ、内側から抵抗できない星ばかりを狙っているとも考えられるな。」



「それで、これからその軍事力に匹敵するだけの兵器を国際連合加盟国に配布したいと思っています。」


「そんなものがあるのか!」


「ええ、ちょっと前に作っておいたのですが、強力な磁場を発生させることにより、宇宙にある様々な電波を増幅、振動させる装置があります。


元々はその装置を使って広い空間を作りだすためのモノなんですが、これを多くのミサイルに乗せて恒星系の端まで送り込み、そこで電波による協力な振動を起こさせるのです。


時空空間が亜空間と同様のモノであれば、物理的な攻撃は難しいと思いますが、電波による振動であれば、膨張や破壊など何らかの攻撃が加えられると思っています。」


「なるほど、それを大量に各星に配るわけだな。しかし、それほど大規模なことをどのようにして行うのだ?」


「ええ、既に国際連合加盟国には転移用の魔方陣網が整備されています。


物質のコピー機能を持つ召喚者を集めておいたので、彼らにロケットと電波振動装置を大量に複製してもらって転移魔方陣を通して配布する予定です。」


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