第427話【カーチスの最期4】

<<ランス視点>>


ヤンガさんから報告があったんだけど、新しく加盟した星の中には困った星もあるみたいだね。


お父様達が根本的な対策をとってくれているみたいだけど、もう加盟しちゃっている星については僕達で何とかしなくちゃね。


だけど歴史が無いっていうのも困ったもんだ。


歴史が無いからその星の常識が曖昧なんだよな。


何が正しくて何が間違っているのかを判断できないみたい。


だから、ラスク星の自治区長達をそれらの星に送って指導させるようにした。


まあラスク星基準にはなっちゃうんだけど、ラスク星の過去事例を元にそれぞれの星の問題点を明らかにさせているんだ。


何でラスク星かって?


どうも新しい星を創造した女神様のほとんどがラスク星を参考にしているから、現在の社会システムがほぼ同じなんだって。


この前お母様のお茶会に乱入してたマリス様がボヤキまくってたってイリヤが言ってたよ。





<<カーチス視点>>


スルーツ星に偵察にやって来た。


思っていたよりも王政基盤が惰弱だな。一応形としては出来ているように見えるが、警備体制や組織体制、内部の人材の薄さ、少し見ただけで良くわかるほどだ。


神への信仰心だけで人心を掴んでいるようだが、何か危機的なことが起こったら一気に崩壊するだろう。


ゼロス様の仰るようにこの星であれば10ヶ所もの地点でこれまで経験したことのない魔物の反乱や我が兵による攻撃が行われれば、国民の混乱により軍も、そして助けに来た異世界防衛連合軍の奴らも身動きが取れないに違いない。


さすがはゼロス様。


俺は偵察を終えると軍に帰還し、出兵の準備を始めたのだ。





<<マイク視点>>


「緊急事態発生!緊急事態発生!特別行動隊の隊長は速やかに総司令部に集合して下さい!」


突然の緊急招集に何事かと総司令部に転移する。


そこには既にランス様を含む異世界防衛連合軍の首脳が揃っていた。


最後のレイトが着席したところでランス様より詳細な説明があった。


どうやら最近加盟したばかりのスルーツ星がモーリス教授一派に襲撃されているらしい。

それも同時に9ヶ所である。いつもの魔物の氾濫だということで直ぐに制圧して欲しいとのことだった。


もう何回目になるだろうかと少々鬱陶しくなるが、この規模だと速やかに対処しないと星自体が滅んでしまう可能性があった。


「今回はわたしも一緒に戦う予定だ。皆んな!頼んだぞ!」


「「「おーーー」」」


俺達はこうしてスルーツ星の魔物出現地域へとそれぞれ向かった。


「マイク隊長。ここはわたし達が食い止めますから、早く時空空間を閉じて下さい。」


「わかった、頼んだぞ。」


特別行動隊の俺の隊と連合軍の2000人くらいを引き連れてスルーツ星に転移してきたのだが、思っていたよりも魔物の数が多くなっていた。


どうやら未曽有の危機に、スルーツ星の首脳陣があたふたして連合軍への救援要請が遅れたようなのだ。


ランス様の懸念が当たったようだ。なんでも歴史が浅い国だからトラブルに対する処置方法等の経験も蓄積も無いんだとか。


だから、今回のような異常時の判断が出来なかったのだろう。


しかし困ったものだ。この時空空間は無尽蔵に魔物を放出できるようだ。


つまり、設置されてから俺達が来る前までの時間が長いほど大量の魔物が放出され、拡散されていく。


つまり、これまでよりも多くの戦力をばら撒かないといけないわけだ。


この辺りランス様の判断で1チームあたり2000人を超える兵を連れてきたのだが、これでも現状維持が精いっぱいのようだ。


早く時空空間を塞がないと、じり貧になって負けてしまう。


俺は愛刀フロンタールを握りしめ、魔物を切り裂きながら真っ黒な霧を放出しながら魔物を吐き出している穴を目指して走り出した。





<<ムラマサ視点>>


「魔法隊、魔物群の外周500メートルの所定位置に移動し、広域魔法をぶっ飛ばせ!

一気に殲滅するぞ!」


「「「おーーーー!」」」


転移魔法で特別行動隊の俺の隊が指定した位置に現れると同時に大量の広域魔法が炸裂した。


半径2キロほどの半円上に拡がっている魔物の群れを、一気に最前線を300メートルほど後方に押し込む。


「2発目行くぞー!」


バーーーーン!!! ドゴーーーーン!!!


あちこちで広域魔法が炸裂。その度に後退した魔物の最前線を追いかけるように前へ前へと魔物の範囲を狭めていく。


やがて前方300メートルくらいのところに時空空間の裂け目が見えてきた。


いつ見てもあの漆黒の穴は気味が悪い。


俺は一気にその穴の前に移動して、いつもの亜空間バッグをかぶせようとした。


その時、俺を刃が襲ったのだった。


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