第420話「スマット星の攻防6」

<<カーチス視点>>


どうやら上手くいったようだな。


先ほど、聖都に残して置いた部下から連絡が入った。


わざと逃がしておいた商人が聖都で 魔法にやられたと証言したのだ。


その言葉を聖都に居る部下があちこちで吹聴する。


特に反聖王派の議員が集まる地域でだ。


その時点で、それは反聖王派にとって強力な武器を得たことになったろう。


後は勝手に動いてくれるのを待つだけだ。


そして異世界防衛連合軍にとっても大きなダメージになるはずだ。


この星で何らかのアクションが起きれば、それは我が部下達により国際連合加盟各星に拡散されて、脱退を考える星があちこちで出てくる…か。


全く、毎回ゼロス様の作戦には畏れ入るばかりだな。


最初の魔物の氾濫時点で、大規模な火力を持つ魔法を使わざるを得なくしたところからこの計画が始まっていたとは、誰も気付くまい。


さあ、焼き殺したと見せ掛けて捕まえた家畜達を牧場に連れて行くかな。




<<テイル視点>>


商隊が襲われる事件の調査に向かった俺達は、一番最初に襲われたという現場に着いた。


襲われた現場は聖都の西城壁門を出たところから約4キロメートル以内に散らばっているようだ。


10ヶ所あるそれぞれの現場には10人を1隊として向かっている。


そしてそれぞれの隊が互いに無線機を持っていて、何かあれば近くの隊が駆けつけることになっていた。


俺達の居る位置は西城壁門から2キロ程離れた場所。

地図上では全ての襲撃現場の真ん中辺りになる。


「おかしいな…」


「どうしたんだ、ベン?」


「なあ、ここって最初の現場だよな。


もらった現場地図を見ると、他の現場ってここから放射状に拡がっているだろ。


それで襲撃された時間で現場を繋いでみても、規則性が無いって言うか、無駄な動きが多いんだよな。


しかもこれだけ離れているのに最初と最後の襲撃時間の差は半刻も無いじゃないか。」


ベンは地図を指でなぞりながら説明してくれる。


確かにベンが疑問に思うのも無理はない。


物取りの犯行であればもっと効率の良い動きもあるだろうし、金目の物を物色するための時間も必要だ。


だが、この広範囲に及ぶ10もの現場を廻るだけでも時間に余裕が無さすぎる。


っていうか、物理的に無理だろ。


「待てよ。確かマイク達って一瞬で星を渡って来たって言ってたな。


そんなことが出来るんならこの移動も可能じゃないか?」


横で俺達の話しを聞いていたエドガーが、その可能性について仮説を立てる。


「星間で移動できるのであれば瞬間的に移動することも可能だろう。


だが疑問もある。何故こんなに不規則な動きになるのか?


こんなに無駄が多い移動をしていたら、途中にすれ違う商隊に見つかるだろうし、目撃者がいてもいいはずだ。」


そんな話しをしていると、無線機に連絡が入り、俺達は驚愕した。


「容疑者が捕まった。

マイク達だそうだ。」




「そんなの信じられないよ。


だってさ、俺が思っている最大の疑問点は、何故、今襲撃する必要があったのかだな。

たしかに昨日の戦闘のせいで警備が手薄になると考えたのかもしれねえが、マイク達がやったとしたら、最悪のタイミングじゃないか。


今マイク達は聖王様達と会議中だよな。


このタイミングで事を起こす必要があったのかってことだよ。


だって早朝から会議に入っているんだから、マイクや会議に出ている奴等は襲撃に参加出来ねえだろう。


そうすると、昨日一緒に飲んでた奴等ってことになるが、あんな気の良い奴等がそんなことすると思うか?


この星の出身者もいっばい居たしな。」


「たしかにな、エドガーのいう通りだ。


だいたい、ここへ来る前に宿屋に寄って来たが、奴等はまだ宿で寝てたぜ。」


「そこでだ、ここからは俺の推理となるが、誰かがあいつらを陥れようとしてるんじゃないか?」


「誰かって誰だよ?」


「このエドガー様の灰色の脳細胞で考えるに、マイク達が捕まって一番得をする奴が怪しい。」


「で、それは誰だよ。」


「まあ、焦るなよ。よく考えてみろよ。


マイク達が来たのは聖王様が国際連合に加盟して、異世界防衛連合軍に参加したからじゃないか。


今回の件でその成果が存分に発揮されたよな。


これって反聖王派にとってはおもいっきり逆風だよな。」


「じゃあ、お前は反聖王派の仕業だと言うのか。


さすがに今回の事件は俺達の世界の人間には無理だろ。」


「そうだな、テイルの言う通りだ。これだけの事を実行出来る奴はいないな。


たが、マイク達が魔法を使えるということは、他にも使える奴等が居るんじゃないかって思うんだ。


たとえば、マイク達が戦っているモーリス教授一派とか。」


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