第375話【アキラ君の行方6】

<<マサル視点>>


昨日、1ケ月ほど前に古代魔方陣と思われる映像の調査をお願いしていたアスカ教授から研究結果の報告について連絡がきた。


酷く興奮していて、上手く聞き取れないところもあったけど、有名な研究者先生が歴史的な大発見をしたそうだ。


早速、その研究者先生シュパード教授の元へアスカ教授と共に向かうことになった。



「やあ、ようこそいらっしゃい。」


「シュ、シュパード教授、は、初めまして、ほ、本日はお招き頂き有り難うございます。」


「君がアスカ君だね、初めまして。そしてそちらが。」


「シュパード教授、初めまして。異世界管理局調査室のマサルと申します。こちらは同僚のユウコさんです。


この度はわたしの持ち込んだ資料を調査頂き感謝しております。」


「調査室のユウコです。初めまして。」


「うむ、マサルさん、ユウコさん初めまして。君達が持ち込んでくれた資料なのだが、考古学史上まれにみる大発見になるかもしれない可能性があるんだ。

これから説明させてもらうからね。


とりあえず中へ入ろうか。」


俺達はシュパード教授に案内されて彼の研究室へと向かった。


権威ある国立考古学研究所の最奥、ひときわ立派な扉の中にシュパード教授の研究室があった。


扉を抜けると幾つかの助手用の個室と秘書室が並ぶ通路を進んで、奥の応接室に通される。


30畳はあろう広さには豪華なソファーセットや20人掛けの会議机、高い天井には精緻な調光機能を持つ照明と、ソファーセットの上には豪奢なシャンデリアがあり、会議机の周りの壁には全て大型スクリーンが敷き詰められている。


「はあー!」


アスカ教授のため息が聞こえるが、この部屋の主であるシュパード教授がいかに考古学分野の重鎮であるかをまざまざと見せ付けられた気がする。


「さあ、こちらへ。」


シュパード教授に促されて会議机に着く。


秘書さんが飲み物を運んできて並べ終わると、シュパード教授が話し始めた。


「アスカ君から資料をもらって解析を始めたんだ。


これまで古代遺跡以外から古代魔方陣を見つけることは無かったからね、非常に興味深く拝見させて頂いたよ。


まさかアースの監視中にこんな高度な古代魔方陣が現れるなんてね。


この現代にこんな魔方陣を発動出来る者が存在すること自体が大きな脅威なのだが、こちらについては異世界管理局と監査部の判断に委ねるよ。


局長と監査部長宛にはわたしから手紙を書いておくからね。


それで魔方陣自体についてだが、君達の読みどおり、この隠れていた魔方陣は物質変換の魔方陣だったよ。


正しくは物体を魔力に変換する魔方陣だね。


実は古代遺跡から発見された次元トンネルの受信魔方陣に使われている物質変換は物体を光に変換するモノなんだよ。


つまり古代遺跡から見つかった次元トンネルとこの資料で判明した次元トンネルは別物だってことなんだ。


物質変換は。光に変換するより魔力に変換する方が圧倒的に効率がいいのは理論上分かっているんだが、その実現は今までなされていなかったんだ。


そういう意味ではこの魔方陣は画期的なものだとも言える。


また、表の魔方陣については古代魔方陣と同じ記述方法が使われていたものと同じだから、恐らく古代魔方陣をアレンジして作ったのがこの魔方陣なんだろうね。」


シュパード教授はそこまで一気に話すと冷めてしまっているコーヒーを一気に飲み干し、秘書におかわりを頼んだ。


「それでだね、この物質変換の魔方陣だが、表の魔方陣の下に描くことで魔力導線を極力短く設計されていたのだ。


物体を魔力に変換することを前提に考えると、効率を最大限に高めた実に理想的な魔方陣だと言えるな。


これ程の魔方陣を構成できるだけの技術を持った古代文明はいかほどの者であったか、これまでの考古学を根底から見直す必要があるだろう。」


「シュパード教授、概ね理解出来ました。それではなぜこの魔方陣が発動したのでしょうか?」


「うむ、そうだな、資料全体を読み解いたが、異世界からあちらの住人が攫われる事件が起きているということだったが。


そしてその誘拐現場でこの魔方陣とよく似た魔方陣を見つけたとあったが。


マサルさんはこの魔方陣が何らかの関与をしていると考えているのではないか?


恐らくその考えは正しいと思われる。


アース監視映像に映っていたこの魔方陣は発動はしているものの成功はしていない。


あの映像を見る限りアース全体を魔方陣の影響範囲にしようとしたようだが、魔力量が足りなくて、起動途中で魔方陣自体が霧散してしまったのだろう。


そしてその影響範囲を小さく絞ってしまえば.....」


「なるほど、分かりました。つまりこの魔方陣を発動させた者達と、一連の誘拐者は同じということですね。」


「そういうことだな。」

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