第370話【アキラ君の行方1】

<<ミリヤ視点>>


召喚中のアキラ君が黒い靄に飲み込まれてから2ケ月。


監査部や公安課、マサルさん達調査室の懸命の捜索にもかかわらず依然として行方が掴めないの。


運営課としても初めてのケースなので今後の召喚体制について連日会議が開かれているんだけど、あまりにも不可解で現象が特定できないため、なかなか結論が出ないみたい。


最初の内はわたしも証言するために出席してたんだけど、証言も何も言葉にしたら3分くらいの話しだし、マサルさんの映像の方がよっぽど分かり易いから最近は全く呼ばれなくなったわ。


先日マサルさんが新情報を取得したってことで会議に呼ばれていた。


何でも機密情報が含まれているということで、残念ながらわたし達みたいな平職員には内容を教えてもらえなかったけどね。




「マリス先輩、なにか知ってることがあったら教えて下さいよー。」


「えーー、わたし何も知らなーいよ。」


マサルさんが絡んでいるならマリス先輩も何か知っているかと思って聞いてみるんだけど、はぐらかされちゃう。


語尾のイントネーションがぎこちないから絶対何か知ってるんだと思うんだけど、お酒を飲ませても教えてくれなかったわ。



マサルさんにも聞こうと思って待ち伏せしたりしてるんだけど、忙しそうでなかなか会えない。


調査室まで押しかけたいところなんだけど、あそこって局長室の隣でしょ、行けるわけ無いわよね。


そんなこんなで、わたしの心配をよそに時間ばかり過ぎていくの。





<<マサル視点>>


シベルス商会の摘発で生命エネルギーカプセルの違法販売を潰したのだが、黒幕であろうマフィアには未だ辿りつけていない。


おそらく本店で警備を担当していたあの厳つい男達、あれがマフィアの構成員であり、シベリスの護衛をしているようで実際は監視していたのではないだろうか。


警察に連行される連中の中にあいつらの姿は無かった。


事前に摘発を察知してシベリスを逃がす振りをしながら本店を撤退し、その後シベリスを殺害したのだろう。


実はあの後、シベリスの遺体発見現場に侵入し彼らの残した物が何かないか徹底的に調べた。


何かしら残っていたらそこから思念を追いかけてやろうと思っていたのだが、残念ながらそこには何も残っていなかった。


どうやら殺害現場は別にあって殺害後にあの場所に運ばれたようだな。


用意周到で手慣れた鮮やかさにマフィア追跡の難しさを悟ったのだ。





「マサルさん、新しい情報よ。また召喚元不明の召喚が検知されたみたい。

今度はラスク星からよ。」


「本当かい!ユウコさん。」


「間違いないわ。監査部の仕掛けてあった検知網に引っかかったんだから。」


「それで場所は?」


「それが、分からなかったみたいなのよ。途中まで追っていたんだけど、途中で真っ黒な靄がかかって計器類が誤動作したみたい。それ自体は数秒で収まったんだけど、その間に忽然と消えたんだって。」


「どこから攫われたか分かるかい?」


「たしかハローマ自治区とか言ってたわ。」


「分かった。とりあえず行って見るよ。」


「まって、わたしも一緒にいくわ!」


俺達はラスク星へと急いだ。


「まずはランスのところへ行こう。何か掴んでるかもしれない。」


俺達はランスのいる星都へと向かう。


「ランス、いるか?」


「お父様、どうしたんですか?そんなに急いで。」


「ハローマ自治区から強制召喚で誰かが誘拐されたみたいなんだ。何か気付いたことはないかい?」


「ちょっと待ってね、人工衛星に何か残っていないか確認してみるよ。」


そう言うとランスは右手を上げて魔力を四方八方に飛ばした。


やがてその魔力はそれぞれが細い糸のようになり、ラスク星全体を覆うように無数に飛ばしてある人工衛星ひとつひとつに繋がり、そこに記録された情報を集めていく。


「人工衛星か、懐かしいな。まだ動かしていたんだな。」


「そうよ、シンゲン星と国交を結ぶきっかけになったんだったよね。お父様のアイデアで太陽光から魔力を作っているから、今でも現役で動いているのよ。」


いつの間にか現れたイリヤが話しかけてきた。


「ユウコさん、こんにちは。またお会いできて嬉しいわ。」


「イリヤさん、こんにちは。こんな状況じゃなければまたお宅にお伺いしたかったんだけど。残念だわ。」


「わたし達も協力しますから、早く解決してまた一緒にお話ししましょうね。」


「是非、お母様にもよろしくね。」


「お父様、情報が一通り集まりました。この魔石に記録しておきましたよ。」


「ランスありがとう。」


ランスから魔石を受け取る。


マリス様から頂いたタブレットを久しぶりに取り出し、そこに魔石を乗せると青白い光が魔石を中心に拡がり、タブレットに吸い込まれていく。


タブレットにより高速処理された検索機能は指定したいくつかのキーワードをAIを駆使して関連検索し、結果のみを画面上に表示していく。


画面を目で追っていると、その情報が整理されて自然と脳裏に刻まれていく。


「よし、大体わかった。ランス、誘拐されたのはハローマ自治区に住むナタリーという人だ。すぐに連絡してフォローしてやってくれよ。」


「分かりましたお父様。すぐに手配します。」


「頼んだよ。俺は戻ってナタリーさんを追跡するよ。」


「お父様、ユウコさん、お気をつけて。」


そして俺はユウコさんと一緒に調査室に戻ったのだった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る