第340話【売れっ子ラノベ作家になりたい4】

<<ノブナガ視点>>


スタビアヌスへの急襲の合図を出すとハリビアヌス兵は一斉の崖を下り、スタビアヌス軍が休息をとっている川べりへとなだれ込んだ。


儂は奇襲が成功したとみるや、敵本陣に一直線に向かい敵将とする貴族の嫡男を刀で一突きにした。


貴族の子弟しかいない本陣内は当然のように大混乱する。


外の護衛に助けを求める声が響くが、護衛などとっくに眠らせてあるわ。


気丈にも向かってくる者もいたが、一閃の元に切り倒す。


やがて本陣の裏側に逃げ道を見つけた貴族達は次々と逃げていった。


「我が名は織田上総介信長なり!!

敵将討ち取ったりーー!」


これ以上合戦を続ける必要も無いので、大声で勝ち名乗りを上げたことで合戦は1時間あまりで終了したのだ。



「さてと、これでハリビアヌス王への信頼は勝ち取れるだろう。

後はこの戦に参加しているシーザー伯爵家の次男たしかユリウスと言ったか。


彼と誼をどうとるかだな。」


今回の作戦の第1弾は終わった。次はシーザー伯爵家と誼を取り、共和体制に向かうよう上手く焚きつけるのだが、その為の駒として伯爵家次男のユリウスを考えている。


なかなか聡明な男で判断力や行動力もある。惜しむらくは嫡男では無いため家内で発言権が薄いことだが、王家への反乱をもくろむためにはかえって都合が良いやもしれん。


王都への帰還途中、今回いちばんの武功となった俺は大勢の武将に囲まれとうとうユリウスに接触することは出来なかった。


何度かユリウスとニアミスするも彼の隣には見慣れぬ服装の男がいてユリウスと常に楽し気に会話していた。


やがて城に着くとすぐさま王に召喚される。


武功を褒めそやかされ、労いの言葉と頂き着替えの後、王と共に戦勝会の会場へ向かう。


王に先駆け一足先に戦勝会場となる大広間に入ると、既にそこには王都中の貴族や豪商が集まっており、今回の戦の話しで盛り上がっていた。


息子や身内が合戦に参加していたものも多く、その者達を囲んで談笑する姿は今まで行ったどの世界でも共通の光景だな。


王が姿を現すとそれまでの喧騒は一気に収まり、皆整然と頭を垂れる。


「この度の合戦、まことにご苦労であった。スタビアヌスの侵攻を未然に防ぐだけでなく、その大半を壊滅させた皆のこの度の活躍、まことに天晴であったな。


これより論功行賞を行いたいと思うので名を呼ばれたものは前に出よ。


宰相、頼んだぞ。」


「承知いたしました。それではこの度の戦にかかる論功行賞を行う。名を呼ばれた者は前に出るように。


まず1番武功!ノブナガ殿!」


俺は王の前に出て跪く。


「ノブナガ殿、ソチは新参ながらこの度の戦術である奇襲を計画すると共に、一番に敵陣へと突っ込み電光石火で敵将の首を取ったと聞く。


僅か1時間あまりで終わった今回の戦は我が方の損害を最小限に抑え、我が軍の3倍にも上る敵に重大なる損害を齎したことは明らかである。


ここに1番武功を宣言し、ソチを我が軍の軍師として正式に取り立てることを宣言する。」


「「おおおおーーー」」「「いやまさか」」「「そんなーー」」


後ろから様々な反応が聞こえてくる。喜んでくれている声は今回の戦に加わった者達であろう。


そして不満を漏らすのはもちろん上級貴族である。


彼らは以前の世界でいう朝廷貴族と同じで、口だけの無能人ばかりなのだ。


この手の人間は自分達よりも下の人間が王に重用されることを何よりも恐れている。


「ありがたくお受け致します。」


「うむ、これからも王国の為に尽くしてくれよ。」


ふむふむと微笑を浮かべた王の顔を見ながら、その場を離れる。


「続いては武功2番!シルベスト将軍!」


威厳たっぷりの豪快な爺さんが俺と入れ替わりに王の前に進む。


儂も面識のある好戦的な親父だ。どことなく義父殿(斎藤道山)を彷彿させるその容貌は睨んだだけで大抵の人間は恐れるだろう。


新参の儂の案が取り入れられたのはこの将軍が後押ししてくれたおかげでもあるのだ。


第3、第4と名が呼ばれる。大貴族の子息である。彼らは活躍するもせぬも無い。


武功を上げたという実績だけが必要なのだ。これは代替わりするための箔付けであり、元の世界でも普通にあったことなので特におかしなものではなかった。


第5武功が呼ばれた時、会場がどよめいた。


「第5武功、シロウ殿!」


シロウ?聞いたことの無い名だ。それよりも家名が呼ばれないということは庶民のでということか。


王の前に進み出たのは帰還時にシーザー家の子息と一緒にいたあの男であった。







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