第204話【研究室再び】
<<ランス視点>>
移民船の第1弾が今日到着するということなので、お母様とイリヤと3人で港に来ました。
あれから港に灯台を作ったり管理棟を作ったりと、だいぶ港らしくなってきたんだよ。
あっ、船が見えてきました。
あと数分で港に着岸すると思うとわくわくしてくるね。
カトウ運輸の音楽部も今日は総出で歓迎の演奏をするそうです。
もう少しで着岸するところまで来ると、演奏が始まりました。
お父様が作曲した『軍艦マーチ』って曲です。
軽快なリズムと力強い音が気分を高揚させてくれるよね。
船から投げられたロープがビット(船を港に接岸するためにロープを引っ掛ける鉄製のフック)に引っ掛けられました。
船が着岸すると、1人目が降りてきました。
ローバー先生です。
「ローバー先生ご無沙汰いたしております。」
「ランス君、ご無沙汰じゃないよ!
こちらに来たのなら来たと我々に教えてくれなきゃ!」
ローバー先生おかんむりです。
そうか、国の建設のことで頭が一杯で、亜人大陸にいる研究室の先生方に声を掛けるのを忘れていた!
「ローバー先生、申し訳ありませんでした。
ごめんなさい忘れてました。」
「ほんとにもう!… あっ、これはこれはリザベート様。ご無沙汰いたしております。」
「ローバー先生、こちらこそご無沙汰いたしております。
ランスが連絡をしていなかったとか。
本当に申し訳ありませんでした。」
「いやいや、わたし達も亜人大陸各地に散らばっておったからしようがなかったんですが。
ところでリザベート様、わたし達もこの国に移住させて頂けないでしょうか?」
「ええ、それは構いませんが。
家族の方々とかはどうされるのですか?」
「ほとんど独り者です。
家族のいる者は、連れてくると思います。」
「そうですか。分かりました、主人に話しておきますわ。」
「助かります。
ところで、ランス君。キンコー王国の研究室もこちらに移動したいんだが。
なんとかならないかなぁ。」
「お父様にお願いしたら、移動してくれると思います。
でも、研究室に所属している生徒や先生方はどうしましょうか?」
「そうだったな。彼等を忘れておった。
しばらく亜人大陸に掛り切りだったからなぁ。」
「そうだ、転移門を研究室にも繋げれば良いんじゃない?」
イリヤが割り込んで来た。
「通れる人を限定すれば問題無いと思うわ。
お兄ちゃん、お父様に聞いてみたら。」
イリヤが勝手なことを言っているが、まぁ一理あるか。
「ローバー先生、こちらにも研究室を作って、向こうの研究室と繋げてしまいましょうが?」
「そんなことが出来るのか?」
「お父様だったら、簡単にやれると思うけど。
ただセキュリティの問題がなぁ。
とりあえず聞いて見ます。」
「助かるよ、ランス君。」
「………ローバー先生、あのぉ研究室が向こうのままだったら、こちらに引っ越す意味あります?
だって先生方、研究室に住み込んで居られるでしょう?」
「「「…………たしかに。」」」
お母様の指摘に盛り上がっていた僕達は、我に返ったのだった。
「研究室を双方に置いて、今の小学校の敷地と、マサル共和国の両方で活動すれば良いではないか。
あの研究室に参加したい研究者はたくさんおるのだぞ。
そうだ、小学校の研究室は王立にしてしまおう。」
その夜、家に遊びに来たネクター叔父様にローバー先生達のことを話したら、小学校の敷地内にある研究室は王立として存続させて、研究者を増やすとのこと。
こちらにはもう1つ研究室を作って、転移門で行き来出来るようにしたらいいらしい。
あの研究室に参加希望の人達がたくさんいるみたいで、嘆願書が溢れてたみたいです。
翌日ローバー先生達に話したらすごく喜んでいた。
次の日、アーク陛下とデカさんが遊びに来た時に、昨日の研究室の話しをしたら、ロンドーにも研究室を作るので、同じ扱いにして欲しいって。
亜人大陸での研究が途中だった先生達も大喜びしていたよ。
「ところでイリヤちゃん、亜人大陸で、すごく変わった薬草を見つけたんだ。
その研究をしようと思うんだけど、一緒にどう?」
「面白そう!是非ご一緒させて下さい。」
「じゃあ、亜人大陸に出来る研究室に部屋を用意してもらうことにするのがいいね。」
イリヤすごく楽しそう。
「ランス君はわたしと、新しい街づくりを考えようじゃないか。
どうせこの街もすぐに手狭になるだろうからね。
新しく開拓しなくちゃな。」
「そうですね。ローバー先生。」
まだまだ山はたくさん残っているし、開拓をしていかないと新しく移住してくれる人達が困るものね。
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