第176話 【教育制度】

<<ヤコブ改革担当ネリア視点>>

ヤコブ族はドワーフ種族なので物を作ることが得意です。


鉱物から金属を精錬したり、金属を加工したりするのは有名ですが、それ以外にも動物の皮の加工や木工等も得意です。


技術力が非常に高く、独自の工夫がある者は有力者として街の運営にも影響力を持つ者もいます。


当然皆そこを目指して頑張るわけです。


そのため子供達は早い時期から親に弟子入りして、職を身につけます。


この徒弟制度がヤコブ族が亜人大陸一の技術力を持つ原動力となってきました。


親から子へ受け継がれる技術は、その家独自の技術となり、ヤコブの技術力は枝葉を増やしていったのです。


しかし、この文化がそろそろ破綻してきているのです。


スパニとの緊張関係により職業軍人を選ぶ者が増えたり、ルソン様のように商人を目指す者がいたりします。

兵士として長期に渡り徴兵され、修行が満足に出来ない者もいます。


つまり、これまでのように親の職業を継がない者、継げない者、親が職人以外の者達が出てきているのです。


今のままでは途絶えてしまった技術は少しずつ消えていってしまうでしょう。


高い技術を後世にまで残すには、それらを教育し、技術者を養成する必要があります。


これまでは、有力者の子弟のみが学校に通って様々な知識をつけていました。


何故なら職人には学よりも、その道の修練が必要とされたからです。


ただ、職人にならない者達には教育が必要でしょう。

いや、今後新しい技術を生み出していくためには職人にも学は必要だと思います。


わたしは、ハーバラ村を視察して強く感じました。


あの教育を受けた若者達は、今後我等の脅威になるかもしれません。


親からの修行だけでは新しい考え方は生まれないでしょう。


でも教育を受けた者達は、その知識を使って新しい技術を生み出すはずです。


我等がこれからも技術力を武器にするのであれば、教育は必須でしょう。


まずは初等教育制度を作りましょう。


キンコー王国は、5歳から11歳までが初等教育でした。


ヤコブでは、10歳から修行を始めるのが一般的です。


初等教育は5歳から9歳まででどうでしょうか。


これであれば、現状維持をしながらも無理なく初等教育が出来ます。


10歳以上は、専門課程にしても良いかもしれません。


10歳から14歳までを専門課程として、精錬や鍛治、商業、兵士、官僚等の専門教育期間とすることにしましょう。


それ以上については、今はまだ考えずに、希望があればジャボ大陸へ留学出来るように手配すれば大丈夫でしょう。


後は教師の育成についてです。


専門課程については、初等教育を受けた者を対象とするので、まだ後回しでも良いと思います。


初等教育を教えられる人材をどのくらい用意出来るかが、鍵となりそうです。


早速キンコー王国からカリキュラムを取り寄せ、我が国に合ったものに作り直していきましょうか。


このカリキュラム作成に携わった者を中心に、教師を育成していく方向で考えましょう。


大体草案は作れそうですね。



わたしは早速教育制度の草案をまとめて、ルソン様に奏上しました。


ルソン様は、ジャボ大陸での生活が長かったので、教育の重要性については良く理解頂いている。


「ネリア、しっかりと視察して来たようですな。


まぁ、キンコー王国くらい時間を掛けて教育出来れば良いのですが、あれはマサル殿がもの凄い勢いで様々な改革を進めたために出来たことです。


一歩づつ改革を進めていくとなると、あなたの草案は現実的というところでしょう。


分かりました。この草案を元に実施計画を作っていきましょう。


わたしが居たサイカーの街にもドワーフがいますので、こちらに呼んで手伝わせましょう。


国の財産は優秀な人材です。

教育は国の財産をより大きくするための投資ですからね。

ネリア、よろしく頼みますよ。」


「ルソン様、承知致しました。

早速実施計画をまとめると共に、推進していく人材を探して廻ります。」



こうして、ヤコブの教育改革は一歩目を踏み出したのです。

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