第131話 【イリヤはお姫様失格?】

<<イリヤの担任スペル先生視点>>

入学式から1ヶ月経ちました。

最初はホームシックで寂しがっていた子達も、学校に慣れたみたいで、元気良く走り回っています。


いつもより、早く落ち着いたのは、ランス君とイリヤちゃんのおかげでしょう。


特にランス君は、誰とでも仲良くなっちゃうんです。


学校に入学してから1週間も経たないうちに、1年生全員と友達になっちゃいました。


イリヤちゃんは、女の子のほとんどと友達みたいです。


男の子達はイリヤちゃんとも仲良くなりたいみたいで、休み時間のイリヤちゃんの周りは、クラスメイトでいっぱいですね。


そりゃあんな可愛い顔で笑顔を向けられたら、大人だって惹かれちゃいますよ。


最近は、特別学級で一緒の上級生達も、混じっています。


彼等は、我が校でも優秀な生徒達なので、他の1年生にも良い模範になるから、わたしにとってはありがたいことです。


そうそう、最近1年生の間で騎士団ゴッコというのが流行っています。


騎士団と魔物軍団に分かれて遊びます。


魔物に拐われたお姫様を騎士団が救い出すようですね。


大きなマス目に10人づつが入って、自分のいるマス目の周りに2人以上入られると退場になってしまい、最後に2人以上残っている方が勝ちみたいですね。


最初から動ける騎士団の方が有利に見えます。


1年生でこんなに難しい遊びが出来るなんて驚きです。


正義の味方が勝つなんて、情操教育にも良いじゃないですか。


喧嘩にならないように気をつけて見守りましょうかね。


うん?


正義の味方騎士団が…… 魔物に押されていますね。


そんな設定ですか、どこで逆転するのでしょう。


えっ、そのまま騎士団の負け?


騎士団の面々、悔しがっていますよ。


魔物軍団は、大喜びです。


次が始まるようです。


今度は僅差で騎士団が勝ちました。


よく見ると、騎士団、魔物軍団共にお姫様、いや軍師がいます。


どうも作戦を考えて伝えているようです。


リアンちゃんとターニャちゃんがそれぞれの軍師みたいです。


2人は、イリヤちゃんと話しています。


どうやら、アドバイスをもらっているようです。


次の戦いが始まりました。


なかなか決着がつきません。


お互い規則正しく相手を牽制しながら動いているため、決定打が出ないようです。


おや、騎士団側で1人焦れて違う動きをしてしまいました。


あっという間に形勢が決まりました。

魔物軍団の勝ちです。


いやあ、手に汗をかいてしまいました。


面白い勝負でした。


イリヤちゃんに話し掛けます。


「このゲームは、イリヤちゃんが考えたの?」


「元々はお兄ちゃんが考えました。


わたしがこんな風にしたらってアドバイスしているところを聞いた研究室の先生達が面白がっちゃって。


こんなゲームになっちゃいました。


せっかくだから、リアンちゃん達に話したら、面白いって言って皆んなで始めたんです。


リアンちゃんとターニャちゃんは呑み込みが早くて、今お姫様役で、双方の指揮をしています。」


ランス君の発案で研究者先生が肉付けしたからこんなに難しいゲームなんだ。


でもこのゲームを理解して1年生だけで戦わせるだけの指導が出来るなんて、やっぱりイリヤちゃんだわね。


「イリヤちゃんはお姫様にならないの?」


「初めはわたしがお姫様だったんだけど、わたしの指揮する方が必ず勝つから、お姫様をやめたんです。」


それもそうだわね。


それよりもイリヤちゃん目当てで教室に来ている特別学級の上級生達も加わり出したんだけど。


あれ、1年生も負けてないわね。


これは全校で流行りそうな予感がするわ。








スペル先生の予想通り、このゲームは瞬く間に全校生徒に広まり、昼休みにはクラス対抗戦が行われることになりました。


また、レスリー君や騎士様の子供達から親に伝えられ、騎士団長が見学に来て、今では規模を大きくして、騎士団の正式訓練に取り込まれています。


多くの優秀な軍師様が生まれると良いですね。

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