第119話【パターソンの1日】
<<カトウ公爵家メイド ミリヤ視点>>
メイドのミリヤです。
ランス様とイリヤ様の家庭教師として当家に寄宿されているパターソン先生の身の回りのお世話をさせて頂くことになりました。
初めてお会いした時、パターソン様とお呼びしたら、様はやめて下さいと言われたので、先生と呼ばせて頂いております。
「先生、お食事の準備が整いました。
先生、起きて下さい。先生!」
「ミリヤさん、わかりました、わかりましたよ。今起きましたからすぐに支度して、食堂に参ります。」
パターソン先生の朝は遅いです。
旦那様達は、6時前には起床され、朝食後は執務や運動をされておられますが、先生は夜型の生活が染み付いているのでしょう、起こしに行かないと起きてくれません。
今は朝8時ですが、これでもだいぶ早くなったのです。
わたしが、食堂で支度をしていると先生が眠そうな目を擦りながら、食堂に入って来ました。
「先生、いつものでよろしいですか?」
「ああ、お願いします。」
毎日同じメニューなので聞く必要も無さそうですが、一応聞きます。
「このご飯と海藻の味噌汁、そして卵焼き。
この組み合わせは、最高ですね。
全く飽きません。」
先生は、当家に来て初めて食べたこのメニューが大のお気に入りです。
このメニューが、食べられるのは、当家かカトウ運輸の食堂くらいじゃ無いでしょうか。
一応、食材自体は、高級ではありますが流通しています。
ただ、これだけの食材を集めて、上手く料理できる料理人がいるのは、あまり聞いたことがありません。
現在、王城のシェフが何人か当家に研修に来ているので、王家でもそろそろ可能かもしれませんが。
先生は、あっという間に食事を平らげ満足そうです。
食事の後は、9時からランス様達の勉強が始まります。
教室に割り当てられた部屋には、まだ幼いおふたりが疲れずに勉強できるよう様々な工夫がされています。
この辺りは、旦那様の得意分野といったところでしょうか。
授業は、午前中だけです。
これ以上は疲れますものね。
2歳になったら魔法が解禁になるようなので、午後も授業が入るかもしれません。
わたしは、授業の間に先生の部屋の掃除と、洗濯をしておきます。
午前の授業が終わると食事になります。
昼食は、ランス様達と一緒に摂られます。
午前中の授業での話しでしょうか、ランス様やイリヤ様から先生にさまざまな質問がされています。
先生は、ひとつひとつ丁寧に説明しておられます。
わたしなんか、質問の内容すら理解出来ません。
時たま困った顔をされる先生を見て、ランス様達の異常な聡明さを思い知らされるのです。
午後からは、明日の授業の準備をされておられます。
時には図書館に行って、夕食までに戻って来られないこともしばしばあります。
そんな時には、お夜食代わりに焼きおにぎりを作って差し上げます。
醤油味と味噌味を2つづつです。
大変喜んで下さいますので、やりがいを感じます。
わたしの仕事は以上ですが、先生はまだ明日の授業の準備に余念がありません。
たぶんもう少し掛かるのでしょう。
パターソン先生の長い夜は始まったばかりですから。
<<パターソン視点>>
あの幼児達の頭はどうなっているのだろうか。
わたしが教えたことを砂が水を吸うように吸収していき、自分達なりの解釈で質問してくる。
その回答に苦慮することもしばしばだ。
まだ2歳にも満たない幼児だというのに。
わたしも腐ってもアカデミー首席卒業者だ。
先生と名乗る以上、無様なことは出来ない。
授業が終わってからは、翌日の準備に取り掛かる。
一応夕食までには戻る予定で図書館に行くのだが、熱中し過ぎて帰るのが遅くなることがある。
特に、地理用の写真を撮りに行く時なんかは、帰宅が深夜になってしまうから、気を遣ってしまう。
寄宿の身でもあり、わざわざ食事を用意してもらうのも気が引ける。
今晩も夕食抜きかと落ち込んでるいると、ノックの音がする。
「先生、お夜食をお持ちしましたよ。」
ミリヤさんの声だ。
ミリヤさんが作ってくれる焼きおにぎりは美味しい。
特にこんな時はミリヤさんが女神様に見えてくるほど、ありがたい。
さあ、この焼きおにぎりを食べてもうひと頑張りするぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます