新しい生活の始まり

第98話 【幸せな日々の始まり】

<<リザベート視点>>


とうとうマサルさんがプロポーズしてくれました。


「リザベート様、リザベート様、

あっ気が付かれましたか?


マサル殿が帰って来られて言葉を交わしたと思ったら、突然放心状態になられて、驚きましたよ。


大丈夫ですか?」


どうやら、大仕事を終えたばかりの救国の英雄は、わたしが意識を飛ばしている間に、みんなに揉みくちゃにされながら、どこかに連れて行かれたみたいです。


「スポックさん、ありがとうございます。大丈夫です。」


「良かったです。

さあ一緒に、マサル殿の慰労会に行きましょう。」


その夜は、このプロジェクトに関わった人達が集まって、翌朝まで宴が続いたのです。


宴が始まって1時間程経った頃、わたしはマサルさんの元に向かいました。


マサルさんは、わたしの姿を見て満面の笑みを浮かべます。


わたしが隣に行くと、大きな声でみんなに話しだしました。


「皆さま、わたくしマサルは、リザベートさんと結婚することに決めました。


これからも2人のことをよろしくお願いします。」


わたし達2人が頭を下げると、その場は拍手の嵐となりました。


「リズ、おめでとう。やっとだね。」

「リザベート様、おめでとうございます。」

「マサル殿、とうとう決断されましたな。おめでとう。」


様々な人達から祝福を受けて、わたしはただただ、喜びに包まれていました。


翌日の朝、宴が終わり、わたし達はナーラ領に向かいました。


事前に連絡しておいたので、ネクター王をはじめ、クラーク叔父様、お義父様、お義母様が待っていて下さいました。


「マサル殿、この度は本当によくやってくれた。

そちこそ本当の救国の英雄だ。


そちには公爵位を用意した。

なに、リザベートをもらうのであろう。

それであれば、公爵位は持っていないと、皆納得せぬぞ。

受けてくれるな?」


「ありがたくお受け致します。」


「遂にわたし達も親子だな。

マサル君、リザベートをよろしく頼むぞ。」

「リズちゃん、良かったわね。本当に良かった。」


お義母様が涙を浮かべながら喜んで下さるのを見て、わたしは本当にこの方達の娘で良かったと心から思うと同時に、6年前のあの日にマサルさんやお義父様、お義母様に出会えた奇跡に改めて感謝するのでした。


「お義父様、お義母様、本当にありがとうございます。


リズは、お2人の子供で幸せです。


これからは、マサルさんと一緒になりますが、これからもお2人の子供でいさせて下さい。」


「何を言ってるの。そんなの当たり前じゃない。

マサルさんも子供になって、とってもハッピーな気分よ。」



「マサル殿、ご苦労様でしたな。

よくこの星を救ってくれた。


陛下から公爵位を賜ったが、案ずる必要は無いぞ。


我等はもう身内なのだから、存分に頼ってくれ。」


クラーク叔父様も嬉しそうです。


「さて結婚式だがな、この前レインが仕切ると言っておったであろう。


2人の結婚式を1国でするのは、色々と問題があるのじゃ。


ここはひとつ、我々に任せてくれんか?」


「陛下ありがとうございます。よろしくお願い致します。」


「わかった。救国の英雄と、大陸を股に掛ける聖女の結婚式だ。

大陸中で祝うぞ。

なぁクラーク。」


「そうですな、ガードさんやレインさんも楽しみにしていますしね。」


「あのお、先程陛下から聖女って聞いたのですが?」


「あらリズちゃん、あなた聖女って呼ばれているの知らなかったの?


様々な吟遊詩人が、あなたの活動を歌にしていて、あなたのことを聖女って呼んでいるのよ。


あなたに相応しい呼び名だと思うわ。」


「そんなぁ。」


「あなたの活動は確かに大陸中に影響を与えているの。

あなたを見て、改革に向き合った人がどれだけいるか、自覚ある?


その人達にとって、あなたは聖女なのよ。」


「救国の英雄と聖女の結婚式かぁ。

兄さん、また吟遊詩人がほっとかないだろうね。」


「ヘンリー、そりゃそうだろう。また、大変な騒ぎになるぞ。」


クラーク叔父様が悪い顔をしています。


「そうだ、忘れるところだった。

マサル殿、王都に屋敷を用意しておいた。


王都の自宅として自由に使ってくだされ。


後で、担当の者に案内させよう。


元々マサル殿に提供するつもりで用意しておいた屋敷じゃ。


使用人なんかも既にいるので、すぐにでも転居できるぞ。」


ネクター王の言葉は正直嬉しかった。


一昨日の帰還から一睡もしていないのだ。


「陛下、ありがたく頂戴致します。


リズは、どうする?」


えっ、わたし!!

恥ずかしいけど、一緒に行きたい。


「リズちゃんも一緒に行って来なさいよ。


これからの準備もあるだろうし、ここにいるみんなが公認なんだから。」


お義母様、ナイスです。


「マサルさん、わたしも一緒に行きますね。」


その後すぐに、わたし達2人は案内されて、真新しい屋敷にやって来ました。


公爵家の王都屋敷に相応しい立派な建物です。


屋敷に着くと、使用人達が整列して迎えてくれました。


「みなさん、今日からこの屋敷に住むことになりました、マサルとリザベートです。

よろしくお願いします。」


マサルさんが、優雅に頭を下げたので、わたしもスカートを摘んで挨拶しました。


「旦那様、わたしはこの屋敷の家宰を申し遣っております、クリスと申します。

こちらはメイド長のアリス、そしてその向こうに並んでおりますのが、侍女とメイドとシェフ、そして庭番の者達にございます。


これから一同よろしくお願い致します。」


クリスさんとアリスさんは、兄妹だそうです。


元々他家に仕えていたクリスさんが、息子に家宰を引き継いだ後、偶々マサルさんの屋敷の話しを聞いて、応募してきたそうです。


アリスさんも、マサルさんの名声はご存知だったので、クリスさんの誘いに二つ返事で移って来られたということでした。


「わたし達の出身地の寒村も、マサル様リザベート様のお陰で、ずいぶん文化的な生活ができるようになったと、兄達も喜んでおります。


本当にありがとうございました。


これから体力が続く限り勤めさせて戴き、妹共々戴いた恩に報いたいと思いますので、よろしくお願い致します。」


その後、アリスさんに屋敷の中を案内してもらい、入浴、食事を戴きました。


「本日はお疲れでしょうから、寝室にご案内させて頂きますね。」


アリスさんに案内されたのは広いベッドのある大きな部屋でした。


「リズ、今夜はここでいいかい?」


わたしは薄く頷きました。きっと顔は真っ赤だったはずです。


「アリスさん、ありがとう。

明日の朝食は何時くらいから大丈夫かな?」


「6時にはご用意できております。


わかりました。では、8時くらいに声をかけて下さい。」


「承知致しました。

何かございましたら、その紐を引いて頂きますと、参上致しますので。


では、ごゆっくりお休み下さいませ。」


そう言ってアリスさんは出て行った。


「リズ、これからもよろしくね。」


マサルさんが優しく肩を抱いてキスをしてくれました。


こうしてわたしの初めての夜は無事に終わりました。

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