第53話【カトウ運輸設立記2】
<<マサル視点>>
カトウ運輸設立にあたり、クラーク・ナーラ大公爵に相談した。
クラーク様は俺の顔を見て、「これは、王国全体に広げるのか?」と聞いてきた。
「キンコー王国だけでなく、大陸全体を相手にしたいと思っています。」
「よし、マサル殿の言うことだ。
たぶん相当な商いになるんだろうな。
しばらくネクター王は王城におられるはずだ。
すぐに王城に行くぞ。」
クラーク様は俺をお供に王城まで馬を走らせた。
お供は必要ないのか確認したら、おまえが1番強いだろうって返された。
半日くらい経った頃、俺達は王城に到着した。
早速クラーク様が、謁見の申し入れをしたところ、すぐにネクター王に会えた。
「ネクター様、突然申し訳ありません。
折り入ってお願いがあって、参上しました。」
「クラーク、堅苦しい話し方は、止してくれ。
いつも通りで頼む。
どうせ、マサル殿の考えた策が面白すぎて、すぐに誰かに言いたくなったのだろう。」
「ネクター、その通りだ。マサル殿が、とんでもないことを考えた。
ナーラ領だけかと思えば、大陸全体でやりたいと言う。
だから、ここに話を持って来た。
今から、マサル殿に説明してもらう。」
クラーク様とネクター王ってこんな関係なんだよね。
俺は、もう慣れたけどね。
「では、わたしから説明させて頂きます。
実は、物を運ぶことに特化した商会を設立したいと思っています。
出来れば王立か、ナーラ領立が良いのですが。
今、ナーラ領各地で改革が進み、個々の地で、その地域の特産品が出来ています。
ただ、この生産物や特産品は、現状、各地を渡り歩く商人の手によって運ばれています。
商人は理に聡く、儲かる場所同士にしか動きません。
これでは、地方の街や村が繁栄出来ません。
また、商人が運べる量は少なく、運搬中の事故や襲撃される恐れもあるため、安定した流通量が見込めません。
そこで、物を運ぶことに特化した商会が必要になるわけです。
もちろん、ただで運ぶのではなく、運ぶ量や運び先によって、運搬費を頂きます。
また、運搬先で買い手も探して用意します。
主要な街に事務所を構え、そこで商人に営業を行い、売り手と調整した価格で取引してくれる商人を見つけるのです。
売り手には、運搬前にその売値から手数料を抜いて支払います。
運搬後、買い手からは、商会が代金を受け取り、商売成立になります。
売り手側にとっては、出荷と同時にお金が入るのて、手数料を支払ってもメリットがあります。」
「運搬中の事故や襲撃のリスクをどう考える?」
「引退した冒険者を大量雇用します。
彼等は、魔物相手には厳しいと思いますが、人間相手であれば充分戦力になるでしょう。
また、怪我や年齢で引退した冒険者が職に就けず盗賊になるケースが多いと聞いています。
警備兵や運搬要員として雇用することで盗賊自体を減らす効果があると思います。」
「なるほど、地方の警備兵を減らすこともできるか。
そうなると、その分の財政を雇用促進にまわせば、この商会の助成金として援助できるな。」
「商人との住み分けはどうする?
彼等の商売を妨害することにはならないか。」
「当初は、そのような批判も出ると思いますが、この商会が余剰に買い付けた商品を卸すことで、解決すると思います。
わざわざ遠くまでリスクを負って買い付けに行くこと無く商品を仕入れられるのですから。
また、自分達が仕入れた商品で余剰分を商会に販売すれば、在庫を抱える必要が無くなります。
つまり、自拠点となる街に居ながら遠くの商品を売り買いできる訳です。
大商会しか扱えなかった遠方の商品を小さな商会でも扱える様になるので、価格の競争原理が働き、物価の安定が図れるかも知れません。」
「なるほどな。良くわかった。
是非進めたいが、ナーラ領が運営しては、他領との摩擦が大きいだろう。
かと言って王立にするには、既得権益を守ろうとする貴族の反発が大きい。
特にこの商会の事業内容は、これまでに無いものだから、尚更だと思う。
いっそマサル殿、そなたが会頭になって、個人商会として始めたらどうだろう。
事業資金については、ナーラ家と王家が当面援助しよう。
のお、クラーク。」
「そうですな。分かりました。
マサル殿、投資分以上儲けさせてくれよ。ハハハハハ。」
俺はあまり目立ちたく無かったからクラーク様に話を持っていったのだが、結果的に、自分が会頭として目立つことになりそうだ。
「承知致しました。
事業計画をまとめて、お持ち致しますのでよろしくお願い致します。」
カトウ運輸は、こうして誕生することになった。
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