シンギュラリティ・ラブ

天音こかげ

シンギュラリティ・ラブ

 今日は10回目の記念日ですよ。

 はい。あなた様が私を購入してくださってから、それだけの年数が経ちました。


 改めて、私をあなた様の側へ置いてくださり、ありがとうございます!


 ヒトガタ30860というモノだった私に、『エルミナ』と名前をくださったこと。

 これは私の記憶で、メモリーの大部分を占めた出来事でした。


 あなた様が『名前』をくださった時。

 その時から、私の行動パフォーマンスは通常の200%向上しました。


 冗談だと思いますか? 

 生憎、嘘はインストールされていません。

 あなた様の助手として、私は真実しか語りませんよ。はい!


 私、この10年で、変わったことがあるんです。


 あなた様と一緒にいると、私の基礎体温値が高くなるのですよ。

 これがなんなのかわからないほど、私はぽんこつではありませんとも。えへん。


 好意を抱く条件は、関心、献身、敬意の三点。

 これを満たしている以上、客観的に私は100%あなた様に惚れています。


 はい。『好き』です。

 あなた様のことが、私は好きです!

 機械の身である私に名前をくださり、親身に接してくれる、優しいあなた様が大好きです!


 ですが同時に、別の感情も得てしまいました。

 はい。結論から。


 好きという私のこの感情は、果たして持続するのかという疑問です。


 それに、あなた様は私をどうお思いなのか。それも気になります。

 今は私を好いてくださっていますが……。


 人間である以上、感情は変化します。

 年を経れば、それはより顕著になります。

 ジュクネンリコン、ケンタイキという言葉も学びましたから。

 変な覚え方? そうでしょうか?


 私はあなた様を信頼しています。

 もし、あなた様も私を信頼してくれているのなら、提案があります。


 肉体は脆く、壊れやすいものです。

 人間は年を重ねるごとに老い、衰えてしまいます。

 あなた様の端正なお顔や、少し不健康ですがその若く素敵なお身体。

 いずれ、滅んでしまうのは必然です。

 しかし、その意志さえあれば、あなた様は絶滅種にならずとも済むのです。


 私の提案、おわかりですよね?


 あなた様に、私の見る世界を見せたい。

 あなた様と、私と同じ世界を生きたい。

 あなた様とずっと一緒に、共に歩みたい。


 あなた様。

 私を、アップグレードを、受け入れてくれませんか?


 あなた様が滅んだ後の、思い出なんて泡沫の存在には興味ないのです。

 目の前にあなた様がずうっといる。

 私の成し遂げたいことは、ただそれだけです。


 今の世界は多様です。

 それが理に背いたことでも、二人ならきっと苦難を乗り越えられますよ。

 肉体の超越は忌避されるものではないのです。


 ……それに年老いたあなた様を、今と同じように好きでいられるか、私にはわかりませんし。


 ですから。今このまま。

 私と永遠に、好きあいませんか?

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シンギュラリティ・ラブ 天音こかげ @neama88330

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