第89話

「カハッ……」


 ソラタに首を刺された若者は手をダランと下がる。


「お、おい嘘だろ?!」


 友人の無残な姿を足が竦む男にもソラタは容赦なく近付きハサミを突き刺す。


「オマエノ、ユビモ、ホシイ」

「え……?」


 自分が刺されている事が信じられない様な表情で、ソラタを見た後に助けを求める様にオカ達が隠れている草むらに視線を向けた。


「ホカニモ、ダレカ、イルノカ?」


 若者の視線に気が付いたソラタがオカ達が隠れている場所に目を向ける。



(ヤバイ!)


「皆んな、逃げるわよ!」


 ソラタに気づかれない様に静かに行動して、逃げ始めるオカ達だったが、若者の一人がかなり動揺しているのか、なかなか足を動かせていない。


「ア、アタシ知っているよ……こういうのは夢だって……」

「ば、馬鹿! 早く逃げるよ!」


 友人の死際を見て女の子は足が震えているが、もう一人の女の子に手を引っ張られて足を動かした。


「いやいや、本当にパラノーマルさん達の言っている事が事実だとはね……」


 カンジはソラタ達を見て、いつものニヤニヤ顔が引きつった表情になっていた。


「こ、これは……」


 カメラマンはこんな状況だと言うのに、レンズを殺された若者に対してシャッターを切っていた。


「カメラマンさん、ここはとりあえず逃げといた方が良さそうだぜ?」


 カンジは肩に手を置いて逃げる様に施す。


「そ、そうですね……」


 そして、オカ達は一旦マサオさん家から離れる事にした様だ。


「キノセイカ……?」


 ソラタは殺した二人の指を持っている大きなハサミで切断して家に入っていく。




「はぁはぁ……ふぅ……まさか二人もいきなり殺されるなんて」


 オカ達はマサオさん家から大分離れた場所まで移動して一息つく様だ。


「あ、アイツら死んじゃった……」


 友人二人が死んだ事に何も考えられないのか、座り込んでしまう。


「だ、大丈夫だよ。これは夢なんだから、アタシ知っている……目が覚めたらいつも通りなの」


(友達が、あんな殺され方されたらしょうがないよな……)


 皆が一旦落ち着くまで一同は森の中で身体を休める。


「な、なぁパラノーマルさんよ。あれが言ってたやつらか……?」

「そうね。男の子達を大きなハサミで刺したのがソラタよ」

「け、警察を呼ぶべきなんじゃ無いか?」

「スマホを見てみなさい」


 プルに言われてカンジは自身のスマホをポケットから取り出す。


「圏外……」

「ここを出るまでは外部との連絡は諦めた方がいいわね」


 プルに言われて言葉が出てこないカンジは地面に座り込む。


「はは、まいった……スクープを探しては居たけど、まさかこんな事になるなんて……」


(あの、怪しい男も結構参っているな……)


 だが、カメラマンだけは平気そうに写真をバシバシ撮っている様だ。


「ちょっと、やめてよ!!」

「アタシ知っているよ! そういう盗撮っていうんだよ!」


 若者が悲しんでいる様子をカメラに収めたかったのか、何枚も撮っている内にバレて注意されている。


「い、いや俺は盗撮なんてしてないですよ」


 すると、ヒューズが近付いて行きカメラマンの肩を叩く。


「貴方にその気が無かったとしても、本人達は、そう感じません。ここで仲間割れしている暇は無いので、申し訳無いがあちらに移動して貰っても?」

「あ、あぁ……」


(流石、ヒューズさんだな)


 ダルマもオカと同じ事を思っているのか、我が者顔で肯いている。


「プルさん、でしたっけ?」


 カンジがプルに話し掛ける。


「これからどうするつもりで?」

「もう一度、あの家に向かうわ」

「大丈夫なのか……?」


 最初にあった時の余裕な雰囲気は無くなっていた。


「まぁ、もうアイツらには気付かれたんじゃねぇーか?」

「パーク君の言う通り、アケミとソラタには誰かが来たことはバレているわね」


 プル達の話し合いにオカ達全員が集まる。


「まず、もう一度あの家に行くわよ?」


 プルの言葉に、身体が竦む若者二人。


「貴方達はここに残っても良いわよ?」


 流石に、二人をあの家に連れて行くのは憚れたのか、プルは優しい声色で呟く。


「あ、アタシ行く!」

「え……?」


 友人の言葉に信じられない様な表情をする。


「アタシ知っている! こういう気持ちを復讐心っていうんだよ!」

「あはは……アンタは馬鹿なのか勇猛なのか分からないわね……」


 それを見ていたプルが問い掛ける。


「本当に良いのかしら? ここから先は命の危険があるのは、さっきの様子を見て百も承知だと思うけど?」


 ついて来ない為になのか、プルは二人に対して語気を強くする。


「だ、大丈夫! アタシはそこそこのレベルがある!」

「私も、この子だけ行かせるのは不安なんでついて行きます!」


 二人の表情を見て、プルは重厚に頷く。


「分かったわ。なら一緒に話を聞いて頂戴?」

「「はい!」」


 二人は移動して話し合いの輪に入る。


「へへ、お前ら勇気あるな。俺はパークよろしくな!」

「私はメグって言うの!」

「私は、ミズキと言います」


 簡単に自己紹介をしてオカ達はこれからどうするかの話し合いを始めた……

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