第75話

「とりあえず、村まで向かうか……」


 いつも通り草木をかき分けながらオカは進んでいく。

 暫く歩くと、村が見え開けた場所に到着した。


「おーい、来たぞー」

「はいはーい! よく来たねオカ」


 そこには、誰も居ない筈なのに何故か女の子の声が聞こえる。


「てか、ハルカの姿って見えないのか?」

「ふふ、気になるの?」


 なんだか、少し嬉しそうなハルカである。


「いや、あんまり」


 女の子心が分かっていないオカは即答する。


「むー。オカはママに殺されれば良いと思う!」

「な、なんだよ急に……」


 いきなり怒り出したハルカに動揺しつつも、オカは気になる事を質問する。


「実は、アケミとソラタが全然見付からないんだが、どうすればいいと思う?」


 懇願する様な声色でハルカに聞くオカに対して徐々に機嫌を直すハルカであった。


「ふふ、オカ達ちゃんと探しているのー?」

「もちろんだ」

「えー、どうせオカの事だからサボっているんでしょー?」

「それは心外だ! フィブはメチャクチャサボっているが、俺はそうでも無い!」

「サボっている事は否定しないんだ……」


 オカの言葉に呆れたのか、ハルカは質問に答える事にしたらしい。


「基本は今オカ達がやっている方法で探すしか無いと思う」

「ひたすら動画や出会い系サイト見て探すのか?」

「うん。でも、兄のソラタに関しては少しアドバイス出来るかも」

「お!? 教えてくれ!」


 あまり期待していなかったオカだが、案外簡単にヒントを見付けられそうで心が躍っている様だ。


「兄の出現する動画は、あまり人気の無い動画だよ」

「人気が無いって言うのは再生数とか?」

「そうだよ。再生数だったりコメントだったり総合して低い子の動画にしか出没しないね」


 オカは、しかめ面をする。どうやら、オカとパークは動画を人気順で探していた為、ここ数日の労力は完全に無駄に終わったようだ。


「でも、検索の仕方だけでも判明して良かった」

「ふふ。私、結構役に立つでしょ?」

「あぁ! それじゃアケミの方は?」

「ママは全然分からないの……」

「出会い系に出没するのは間違い無いのか?」

「うん。それは間違い無いね。ただ、兄みたいにどういう条件で出現するかは不明」


(そうなると、ヒューズさん達には引き続き探し続けて貰うしか無いな)


 話していると時間があっという間に過ぎるのか、それとも夢の中の為感覚が違うのか、村の周囲から霧が発生する。


「お? もう起きる時間かよー」

「早いねよねー」


 二人は駄々を捏ねるように呟き、次第に霧に飲まれてオカは目を覚ます。


「もう、朝か……」


 重い身体をベットから引きずり出す様にして出てからノソノソとリビングに向かう。


(今日も、犠牲者は出たのかな……?)


 テレビを付ける。


「速報です。昨日三日連続で犠牲者が二人出ました。殺され方も同じで同一人物と見て間違えないとの見解です。これで合計八人の被害者が出ており、近隣では外出を控える様にと要請している模様です」


(おいおい、アケミもソラタも活発に動き過ぎじゃねぇーか?!)


 ハイペースで犠牲者が出ている事にオカは冷や汗を垂らす。


「それでは、本日も評論家と専門家の方にお越し頂いております」


 進行役の紹介と共に映る三人の影。


(……ん?!)


 その三人は昨日オカがテレビで見た三人と全く同じであった。


(なんで、またプルさんが出ているんだよ!?)


 昨日のテレビでプルは突拍子の無い事を言って出演者達を呆れさせたにも関わらず何故か澄ました顔で登場し席に着いていた。


「皆さん、本日もよろしくお願いします」


 進行役の言葉に三人は頭を下げる。


「それでは本日も各専門家の方々から色々と話を聞いていきたいと思います」


 進行役が事件について話を進めようと来た時に、一人の男が手を上げた。

 その男は昨日プルを小馬鹿にした評論家である。


「はい、どうされましたか?」

「質問なんだが、何故この人が今日もいるのかね?」

「この人とは?」

「昨日、胡散臭い事をペラペラ話していた者だよ」

「先生、それは私の事ですか?」


 多少自覚があるのか、プルは評論家に話し掛ける。


「君以外に誰がいる!」


 どうやら、昨日の放送時にプルに辛辣なコメントをした際に小馬鹿にされた事を根に持っている様だ。


「私も、何故再び呼ばれたのかは存じ上げていません」


 プルの言葉に評論家は生放送だと言うのに、進行役に対して問いただす。


「何故なんだ!?」


 すると、進行役が何やらテレビスタッフにカンペを渡されていた。そのカンペを見ながらツラツラと理由を述べていく。


「えーっと、昨日ゲストで出て来たパラノーマルのプルさんですが、視聴者さんから大変好評のお電話が何件も届きまして、是非次も出して欲しいとの要望が多かったので再びお呼びした次第です」


 カンペを読み終わった進行役は評論家に対して、そういう理由ですよ? という表情を向ける。


「それに、美人だし……」


 進行役がボソリと誰にも聞こえない程度の声で呟く。


「こ、これはとても深刻な事件なのに、こんな訳も分からん奴を出演して良いのか?!」

「えぇっと、警察の発表では未だに証拠が何一つ見付けられない状況となっていますので、違う観点からの意見も取り入れる試みです」


 流石に、これ以上は世間的に不味いと思ったのか評論家は押し黙り席に座り直す。


「それでは、皆さんに今回の事件についてどう思うか再び聞いてみたいと思います」


(これ見てから、仕事行くか……)

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