第20話
オカ達がテントに戻って来るともう一つの班も既に戻って来ており、しかも山菜など食べ物を取って来たらしい。
「すごーい」
カリンは素直な感想を口に出す。
「あはは、ありがとうカリンちゃん。いっぱい採って来たからドンドン食べてね?」
ヒューズはカリンの言葉が嬉しかったのか笑顔だ。
それを見ていた姫がすかさずヒューズに抱き着き、ヒューズに見えない様にカリンを睨む。
「あ、ありがとうございます」
姫の雰囲気にビビってしまいカリンは早々とオカ達の元へと向かった。
「おー、カリンどこ行ってたんだー?」
「ちょっとヒューズさん達の班の所に」
「向こうどうだった?」
「山菜とか沢山採ってたよー」
その言葉を聞いてカリン以外の三人は自分達の成果物を見る……。
「俺達、何も取れなかったな」
「そうね」
「全然取れなかった……」
オカ、プル、フィブは落ち込んでいる様だ。
それから、その日も同じテント内で寝る事になった。
そして辺りも暗くなり始めたのでテント内に入ろうとする時の事だった……。
「も、もう、い、いやだ!!!!!」
ダルマが発狂する様だ叫ぶ。
「な、なんなんだよ! 誰だよ!?」
ダルマは周りの人間から距離を取り自身の背面に誰もいない状況を作り出し、叫ぶ。
「お、お前らの誰かなんだろ!?」
ダルマの叫びに共鳴し合う様に、次は姫が叫ぶ。
「わ、私も殺されるんだわ……」
「姫ちゃん、大丈夫だよ」
「イヤーー。ヒューズさん二人で逃げましょう!」
姫までもが発狂する。
「ふ、二人とも落ち着いて下さい」
正男が二人を落ち着かせる様に声を掛ける。
「う、うるせっよ! じ、じじぃが!」
「そうよ! そいつの言う通りうっさいのよ! あんたがこんな会を開くのが悪いのよ」
どうやら、ダルマも姫もこの状況を正男の責任にしているらしい。
「アンタがこんな会開いたんだがらどうにかしなさいよ!!」
「そ、そうだ! ひ、姫の言う通りどうにかしろ!」
「アンタもキモいんだよ!」
「え、えぇ!?」
もうメチャクチャである。
「アンタ、ここにきてからずっと私の事見てたでしょ!? ほんとッッにキモい!」
「そ、そんな……」
(姫、それは酷すぎる!!)
「姫ちゃん、言い過ぎだよ」
「で、でもヒューズさん、アイツ私を舐め回す様に見てて、私耐えられない……」
「そ、そんな事してない!」
ダルマは顔に冷や汗をダラダラ垂らしながら否定するが、少なからず否定出来ない事をしている自覚があるのか、周りの反応をチラチラ伺いながら、徐々に後ろに下がる。
その間、正男は何一つ反応せず無表情で、この出来事を観察している。
「オカ……、逃げる準備した方がいいかも……」
フィブはオカ達にしか聞こえない声で呟く。
「「「?」」」
フィブ以外の三人は何の事か分からず頭にハテナを乗せて首を傾げている。
だが、フィブだけは焦っているのか顔を歪ませて、正男の方を見ていた。
「フィブ、正男さんがどうかした?」
「……」
フィブは答えない。その間にも姫とダルマの言い争いはヒートアップしていく。
「お、お前だって、そのイケメンばっか見ているだろ!」
「あぁー、やっぱり私の事をずっと見てたのね、この変態!」
「な、な?」
変態と言われ、ダルマは言葉が出てこないらしい。
「姫ちゃん、やめなよ」
「だって、アイツキモいんですもん!」
ダルマの肩が震えている。恐らく好きな姫にボロクソ言われた事がショックなのだろう。
その姿を少し離れてキングが見ていた。
ここに来て、皆んなの心はバラバラ所か不和が生まれている。
しかし、この状況で唯一笑っている男が居た。
正男だ……。
「ふふふ……」
「ど、どうしたんですか正男さん?」
先程まで無表情で事の成り行きを見ていた正男だったが、姫とダルマが争っている辺りから口元が徐々にニヤついていき、今では堪えようともせず笑っている。
オカは不気味に思いながらも、質問を投げかける。
「もうちょっと楽しもうと思ったが我慢出来そうにねぇーな」
正男の口調を聞いた者達はいきなりの豹変ぶりに驚き全員が正男を見た。
「ど、どう言う事でしょうか?」
ヒューズの一言に正男はニヤリと笑いポケットからある物を取り出した……。
「ハサミ?」
姫が呟いた瞬間、フィブはオカの腕を取り全力で茂みの方に逃げ出した。
「ちょ、ちょっとフィブ!?」
「オカ、ま、待ってどこ行くの!?」
「……」
オカを追いかけカリンとプルも走り出す。
それを見ていた正男の表情はより一層笑みが溢れていた。
「ふははは、逃げろ逃げろ」
正男の雰囲気が変わって、他の者は動けないでいる。
「ま、正男さん一体貴方に何が……?」
ヒューズ自身も目の前で起こっている状況に頭がついて来ないらしい。
「さっき俺と話し合って結果が出たろ?」
「結果……?」
「三人を殺した犯人は都市伝説のマサオさんだって」
正男は本当に楽しそうに笑っている。
「俺が、そのマサオさんだよ。あはははは」
正男……いや、マサオさんの笑い声が辺りに鳴り響く。
「うぅわーーー!! お前がクイーンとジャックを!」
すると、キングがマサオさんに向かって走り出す。手には太い木の棒を持っており、それをマサオさんの頭に目掛けて振りかぶった。
鈍く、重い音が鳴る。
「うぅ……なんだよ……これ……」
何故か木の棒で殴られたマサオさんは無傷で逆にキングが血を流しながら倒れこむ。よく見るとマサオさんの持っていたハサミがキングの喉に突き刺さっていた……。
「ひひぃ!?」
その光景を見たダルマは尻餅を突き、それでも離れたいのか地面に尻を擦りながらも後ろに下がり続ける。
「マ、マサオさん! 貴方は今何をしたか分かっているんですか!?」
「あははは、悪かったな、刺す箇所を間違えたな」
すると、キングに突き刺さっていたハサミを抜き、再び次は口にハサミを突き刺した。
「ヒューズ、これでいいか?」
焦点の定まっていない目をヒューズに向け笑いかけるマサオさんに、流石に不味いと思ったのかヒューズは姫とダルマを引っ張り逃げ出す。
「あははは、そうだ! 逃げろ!」
マサオさんは、キングの口に何度も何度もハサミを突き刺し続けていた……。
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