第十四夜「黒騎士・妄鬼」
第131話
――時は遡り、数百年前。
オレがまだ黒騎士統括だった頃、狂鬼が黒騎士になる前の話だ。
オレを含めた黒騎士のメンバーは「蒼鬼」「剛鬼」「妄鬼」「酔鬼」「蘭鬼」である。そして当時、狂鬼の前に入っていた蘭鬼はある会合中に目を細めて言った。
「……焔鬼様?童はあの者を黒騎士にするのは反対です」
「どうしてだ?オレは適切だと思ってたんだが……」
「焔様の意見は重々承知しておりますが、それでも納得が出来ません。何故、あのような者に固執するのですか?」
蘭鬼の言葉には、「何故?」という疑問の表情を浮かべている。その疑問を持っていたのは、どうやら蘭鬼だけではなかったようだ。蘭鬼の言葉に頷く他の黒騎士の顔が見え、オレは蘭鬼の言葉を待った。
「――焔様があの者の力を買っているのは存じておりますが、それでもまだまだ未熟な部分が御座います。ご再考を」
「……他の奴も、蘭鬼と同意見か?」
オレのその言葉を聞いた他の黒騎士たちは、何も言う事なくこの場を静寂に包み込んでいる。その静寂を破ろうかと思ったが、その前に蒼鬼が蘭鬼に告げた。
「蘭鬼よ。私が意見する立場ではないが、焔鬼の考えが分からないのではないだろう?」
「確かに狂鬼は黒騎士の素質があるのは認めます。ですが、まだまだ未熟というのは戦闘経験の方です。あれはただ、焔様に認められたいだけではありませんか!」
「それは蘭鬼、お前の妄想ではないか」
「違う、童はっ!!」
口論を始めそうになった蒼鬼と蘭鬼に対し、寝ていた酔鬼が欠伸をしながら二人に言った。気怠い様子のまま、伸びをしつつ口を開く。
「……ふわぁ、おいおい、うるせぇよぉ。こっちは任務明けで疲れてるんだからよぉ、いちいち細けぇ事で騒ぐんじゃねぇよぉ」
「お前は相変わらずだな、酔鬼」
酔鬼をキッカケに会合の本題に戻そうと試み、それを酔鬼は察したらしく欠伸をしながらもオレの言葉に応えた。
「俺はすこぶる元気だぜぇ?まぁ、任務が思いの外順調に終わったのが嬉しい誤算だなぁ」
「お前が受けていた任務は確か……」
「黒騎士に反発してるっつう奴らの討伐と殲滅だぁ。楽しかったぜぇ?一人だけ強ぇ奴が居たからなぁ」
そう話す酔鬼は、心底嬉しそうに口角を上げた。この中で好戦的なのが酔鬼という事もあり、他の黒騎士メンバーは肩を竦めつつ本題へと話題を戻す事に成功した。
「さて、今回の議題だ。……それは我らが姫君である
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