第88話
「――九尾・爆崩塵」
小さな声が耳に届いた瞬間だった。オレの身体は小さな爆発に包まれた。
その爆発に包まれてる中、オレは過去であの人と交わした事を思い出した。
「何でそんなに強いんだ!どうしたら、あんたみたいに強くなれるっ?」
「……何だよ突然」
まだ黒騎士見習いとして修行の毎日を送っていたオレは、目の前で三日月を眺める白髪のあの人に問い掛けた。急な問いに驚いたその人は、少し悩んだと思ったら小さく笑みを浮かべてオレの頭を鞘で小突いた。
「……?」
「知りたきゃオレに一撃入れられるようになるんだな。蒼鬼、手合わせしてやれ」
「なっ、オレは兄ちゃんに相手して欲しいのに!」
「悪いな。オレは用事があるんだ。蒼鬼、頼むぞ」
『……うむ』
「えー!?兄ちゃんが黒騎士の中で一番強いんじゃないのかよ!」
『無茶を言ってやるな。兄者も忙しい身なのだ。我儘を言うんじゃない』
納得のいっていないオレを宥めるように蒼鬼はそう言うが、やはりあの人が相手ではないとやる気が起きなかった。黒騎士の中で一番強く、誰にもその椅子を譲らなかった存在。
ここ数百年間、誰もあの人に勝てなかったという事実がそれを証明している。まさに最強という称号に相応しい存在だという事を……。
……――認めてもらいたい。あの人に、焔鬼兄ちゃんに……それまでオレは……
「負ける訳にはいかない」
「「――っ!?」」
爆煙を薙ぎ払い、噛み付いていた狐火ごと吹き飛ばした。周囲の物全てを押し退けて、オレは黒騎士が扱う能力の中でも切り札と呼ばれるそれを解放した。
「距離を取るのじゃ、杏嘉!」
「わーってるよ!!」
「……この気配、少々予定外じゃのう」
「あぁ、黒騎士が強いってのは聞いていたけど……この妖力は尋常じゃねぇぞ」
何やらゴチャゴチャとオレの様子を見て言っているが、そんな事は気にしない。既に賽は投げられたのだ。全てをぶっ潰し、薙ぎ払い、蹂躙し尽すのがオレの役目だ。
「纏い――
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