第82話
肩に鎖鎌の一撃を受けた杏嘉は、自分の肩を片手で押さえながら狂鬼を見据えた。武具を鎖鎌からハンドアクスへと取り替えた狂鬼は、地面に突き立てながら杏嘉の事を見据え返した。
「……まだやるのか?」
「っ……」
「ま、別に良いけど」
奮起する杏嘉が駆け出した瞬間、狂鬼は突き立てた武具を蹴って空中で掴んだ。そのまま武具の重さに任せて、地面を抉る一撃で思い切り縦に振るった。
土が砂塵となって散り、地面からは硬い石や木々が雪崩を起こしている。その爆風のような空間の中に入ってしまった杏嘉は、両腕で視界を遮らないように前へ構える。
自分の腕と腕の間から狂鬼の姿を探す杏嘉だったが、既に杏嘉の真横へと移動していた狂鬼は呆れた口調で言いながら回し蹴りを放った。
「――何処見てんだよ」
「がはっ!?」
地面に一度身体がバウンドする寸前、杏嘉は蹴り飛ばされた直後に空中で身体を捻って受身を取った。二度、三度後方へ飛んで体勢を立て直そうとする。
「くっ……舐めやがって」
「舐めてるのはどっちだよ」
「っ……(また間合いに入られた!?)」
後方へ飛んで反撃しようとした瞬間、杏嘉の眼前にまで迫ったハンドアクスの刃先。それを紙一重に交わした直後、振り下ろしたハンドアクスを軸に遠心力の上乗せをした蹴りを繰り出された。
一撃目を外しても、二撃目を用意しているのは当たり前だ。だがしかし、杏嘉の知っている範囲以上に、狂鬼の次の攻撃へと移るテンポとリズムが速かった。その為、杏嘉は対処が追い付けないのである。
「はぁ……やる気満々の面してたと思えば、この程度でオレとやろうなんざ百年早ぇよ。あの人も目が曇ったもんだな。こんな弱い奴を味方にするなんてさ」
「なん、だとっ。――総大将を
「良い度胸、ね。それは、そっくりそのまま返してやるよ」
ハンドアクスから槍に取り替えた狂鬼は、目を細めて蹴り飛ばされていた杏嘉目掛けて投げた。投げられた槍の速度と鋭さは凄まじく、身体を捻って回避するのが精一杯だった杏嘉。
投げた槍を囮にし、狂鬼は杏嘉の間合いに再び侵入する。だが間合いに入って武具を出現させていた時、狂鬼は目を見開いて目の前に居る杏嘉を捉えていた。
「全く不愉快だ。この場面で、アタイの真の姿を見せる事になるなんてな!」
「(尻尾が九本?……コイツ、九尾の妖怪か)」
「この姿を見て思い出すが良い。お前が滅ぼした九尾の一族、アタイはその生き残りだって事をな!!」
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