第80話
餓鬼を弓で蹴散らした烏丸を追い、剛鬼の隣から駆けて行った狂鬼。その小柄な背中が遠ざかっていくのを眺め、剛鬼は腕を組みながら一歩も動かずに口を開いた。
「――そろそろ出て来たらどうだ?」
そう周囲に問い掛けた瞬間、砂利を踏む音が耳に入り複数の相手が現れた。それは鬼組の組員であり、烏丸と共に待機していた妖怪たちであった。
腕を組みながら剛鬼は視線を張り巡らせ、品定めのような眼差しで敵を見つめた。やがてニヤリと笑みを浮かべると、剛鬼は一歩も動かないまま両手を広げてこう言った。
「……なるほど。大体分かった。……相手をしてやるから来るが良い」
『――っ!』
明らかな挑発するような態度と感じた妖怪たちは、触発されたように一斉に駆け出した。狙いを定め、全員が剛鬼の首を落とそうと命を狙って迫る。だがしかし、妖怪たちは知らなかった。
黒騎士という存在の強大さを、黒騎士たちの詳しい情報を、そして……剛鬼という黒騎士には、どんな武器も意味が無いと……知らなかったのである。
『――――!』
「どうした?それで終わりか?」
妖怪たちは目を見開いて動揺を隠せなかった。何故なら、妖怪たちの持っていた武器を全て身体で受け止め、その全てを何もせずに防ぎ切っているのだ。
妖怪たちは動揺を隠せぬまま後退をしようとした時、剛鬼は後退しようとした妖怪の一人の頭を鷲掴んで言った。
「逃がす訳が無いだろう?我はまだ健在だ。どれ、まずは小手調べを始めようではないか。なぁ?妖怪共よ」
『――――!!』
断末魔のような声にならない悲鳴と共に溢れる赤い雨は、その場に居た誰もがその目に刻んでいた。たとえ妖怪であっても、片手で頭蓋を握り潰す事など簡単な事ではない。
だがしかし、剛鬼はいとも簡単に、まるで空き缶を潰す手間と錯覚するように鷲掴みにした妖怪の頭蓋を握り潰したのである。動揺した妖怪たちは再度攻めた瞬間、戦闘は完全に開始された。
「どうしたどうしたぁ!その程度か貴様らは!」
腕力のみで迫る妖怪たちと戦う剛鬼は、そんな事を叫びながら武器を砕き、肉を砕き、骨をも砕き続けて戦った。倒れていきながらも、攻めていく妖怪の中を通り抜け、剛鬼へと攻める一撃が彼らの間から迫った。
「ムッ――!!」
迫り来る数多の妖怪が攻める中で、その微かな殺気を捉えた剛鬼はその一撃を腕で防ごうとした。だがしかし、その瞬間に剛鬼は目を見開く事になる。その豪腕な腕でさえも、彼の前では効果の無い事である事を。
「ほぉ、拙者の居合いを防いだでござるか。その身体、見事な
「(
「拙者はただの――侍もどきでござるよ」
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