第68話
――半妖。
それは人間と妖怪の間で誕生した子供の事を指す。言葉通り、半分に人間としての血が流れ、もう半分には妖怪としての血が流れている。
ただの妖怪と変わる点は二つ。一つは、通常の妖怪よりも妖力が高く、そして妖怪からすればこれ以上の無い標的となる。それは妖力が高く、喰らえば大量の妖力を得る事が出来るというのが大きいだろう。
そして妖怪と変わる点のもう一つは、通常の妖怪の寿命は数百年単位と云われている。勿論、伝承などに伝わってる話と齟齬があるのは当然だ。これはオレが調べてた上で、独学で導き出したオレ用の答えでしかない。
だがしかし、通常の妖怪が数百年単位だとして、半妖怪であるオレは数千年と云われているのだ。つまり、何十年何百年生きたとして、同じ境遇を味わう者など滅多に居ない。
何故なら、妖怪と交わろうとする人間など、滅多に居ないのが普通なのだから。そんな物好きはオレの両親だけ。――そう思っていたのだが、違ったらしい。
「……茜、おかわり」
「は~い♪」
オレの手から離れた茶碗は、数秒でオレの手元へと返って来た。盛りに盛られた白飯の山が、オレの手をズシリと重くさせる。それを目の前で戻している最中、両手で頬杖している茜の視線が気になった。
「~~♪」
「何だ?さっきからジロジロと」
「ううん、なんでもない~、えへへ~」
「……?」
小首を傾げるオレには、茜が何を考えているのかが分からない。どうせクダラナイ事だとは思うから、オレは引き続き盛られた白飯を平らげた。やがて食後のお茶を貰いながら、オレは現状の把握と整理をし始める。
「ねぇねぇほーくんほーくん!!」
「何だ?忙しいんだから後にしてくれないか?」
「じゃん!髪を結んでみましたぁ!!どうどう?似合うかな?」
「……あぁ、似合う似合う(こいつ、こんなテンションの奴だったか?)」
今の茜と比較していると頭痛がしてくるが、紛れもなく昔の茜だ。オレと共に行動していた頃の茜で、オレと生活していた頃の茜で間違いないだろう。
「やった♪じゃあ、ほーくん!」
「どうして腕にくっ付く?」
「デートしよ!デート!一緒に出掛けようよ!」
「……嫌だと言ったら?」
「ほーくんの嫌いな食べ物だけを食卓に並べる?」
「……はぁ、分かった。準備するから待ってろ」
「わーい!!」
「ったく……」
オレはこの時代に着ていた物を身に着け、羽織りを羽織って外へと出た。鼻歌混じりに隣を歩く茜を横目にしながら、オレは周囲の様子を再び確認し続けた。そしてオレは、この時代で遭遇してはならない相手に遭遇したのである。
『お久し振りですね、姫。そして我が同胞よ』
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