第27話
「……ったく、わーったよ!下手な事をしねぇって約束すっから、大将には黙っててくれねぇか」
「跪いて懇願するならば、黙っておいてあげましょう」
「ぐぎぎ……テ、テメェ……」
納得のいかない表情を浮かべる杏嘉だったが、やがて諦めた様子で息を吐いた。
「はぁ……大将の重荷にはなりたくねぇしな。ウチはしばらく手を引けば良いのか?」
「いいえ、その必要は無いと思いますよ」
「はぁっ?……じゃあウチに何をしろって言うのさ」
頬杖をしつつ、杏嘉はハヤテへと視線を向けた。視線が外された事により、刹那もハヤテへと視線を向ける。『これで話しやすくなったでしょう?』と言わんばかりの視線を向けられた事を把握したハヤテは、溜息混じりに全員と顔を合わせながら口を開いた。
「――俺たちがこれからやらなければならない事は二つっスね。一つは、黒騎士の動向を探る事と黒騎士についての情報収集。もう一つは、この町の警備強化っス。一つ目に関しては、無茶な事をしないようにすれば何をしても構わないっス。そしてもう一つの方は、複数人で行って欲しい所っスね」
「複数人、でござるか。それだとかえって目立つのではないでござるか?」
「目立つ行動は勿論控えて欲しいっスね。警備強化と言っても、視野をもう少し広くして欲しいって事だけっス」
幽楽町は決して広くない。だがしかし、それでも焔だけで町で暮らす人間を守護するのは難しい。そう判断したハヤテは、幹部たちを経由して組全体で町の警備強化を出来ないかと考えた。
視野を広げて警備が強化出来れば、町全体を含めて暮らす人々を守護する事が出来る。だが、出来る代わりにデメリットが生じる。
「しかしハヤテ殿、警備強化すればワシたちが目立っては駄目であろう?これ以上目立つ事をしてしまっては、ワシらの存在が
「警備は最低限。二人一組でチームを組ませるっスから、町を散歩するという体裁を作った上で歩き回れるっス。けど警備は、人間の姿になれる者たちが中心となって行うのを前提にする。これが最低限のルールっスね」
「なるほどのう。では、それを基盤にこれからの事を考えるとするかのう」
「じゃあ、今回はここまでっスね。また召集を掛けたら、その時は宜しくっスよ」
ハヤテがそう言うと、各々頷いて会議は終わった。全員が姿を消すまで残っていたハヤテは、中央で揺れる蝋燭の灯を眺め続ける。残っている事を分かっていた刹那は、襖を閉める直前に告げていた。
「では――私もそろそろ動きますよ」
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