第26話

 「ワシらが集められたという事は、前々から話に出ていた者たちが動くという事かのう?」


 全員座った事を確認し、ハヤテの気迫が無くなった時を見計らった綾は口を開いた。そんな綾の問い掛けを聞いたハヤテは、腕を組みながら答えた。


 「それはあくまで可能性の話っスね。でも、確かに動くと思った方が賢明っス」

 「ならば、今回はどういう集まりなのでござるか?拙者たちが集められるという事はそれ相応の事が生じたか、これから起きるという事でござろうか」

 

 ハヤテの言葉に反応したのは、綾ではなく村正だった。顎に触れつつ問い掛ける村正の言葉に対し、ハヤテではなく刹那が応えた。


 「……村正の読みは大体合ってますね。現段階では大した事は起きて居ませんが、これから起きる可能性を踏まえて話をしようというのが今回の議題です」

 「刹那の言う通り、これから起きる可能性を踏まえた議題だ。だがその議題は明確につ、分かっている事が一つあるっスよ」


 片手を少し挙げながら、ハヤテはそう言った。その言葉の続きが分かっているかのようにして、綾は目を細めて代わりに告げるように言う。


 「――の存在、という事かのう」

 『っ!?』


 綾がそう言った瞬間、その場に居た全員が反応を見せた。その反応を見たハヤテは、目を細めて全員に聞かせるように言った。


 「その通りっス。俺らの宿敵である黒騎士が動いたっス。いや動いたというより、探りを入れて来たと言った方が早いっスね」

 「先日の餓鬼騒動。その際にハヤテに調べさせた所、どうやら微かな反応があったそうなんですよ。焔様の命により行動していたハヤテが反応を見つけましたが、すぐに気配を立つ形で反応を消しました。それ以降、同じ反応を見せる様子は無いとの事……で、合ってますよね?ハヤテ」

 「合ってるっスけど、俺の台詞を全部取らないで欲しいっス。まぁ、細かい事はまだ分かってないっスから、どうすれば良いかっていうのが話し合いたい本題っスね」


 ハヤテは呆れた表情を浮かべながら言った。黒騎士という単語を聞いた瞬間、その場に居る全員は眉を顰めた反応を示していた。だがしかし、その中で最も反応が色濃かったのは串を舐め終わった杏嘉である。


 「黒騎士が動き始めてるかもしれねぇってんなら、その為に備えた方が良いか?」

 「それは時期尚早ではないでしょうか?杏嘉。貴女だって、やる事が残っているのではなくて?」

 「ウチの仕事は戦闘訓練だけだ。全然忙しくねぇし、ウチが黒騎士について調べても構わねぇぜ?」

 「それは駄目よ。許可出来ないですね」


 刹那は間髪入れず、杏嘉の言葉を否定した。否定された事が気に喰わなかったのか、杏嘉は刹那へいぶかしげな視線を向ける。村正と綾は、何も言わずにその場を見届ける。


 「刹那……テメェはウチの決めた事に文句があるってのか?」

 「ありますね。私を含め、それは焔様が許すとは思えませんよ」

 「テメェ、大将の名前を出すのは卑怯じゃねぇか。ウチは組の事を思って」

 「それが文句の理由ですよ。貴女に任せてしまっては、黒騎士を見つけては勝負を挑もうとするのは確実です。違いますか?」

 「うぐっ……」

 「図星、のようですね」


 刹那がそう言った瞬間、図星の反応を見せる杏嘉。そんな彼女たちの様子を眺めていた他の者たちは、互いに顔を見合わせて肩を竦める。この後、刹那と杏嘉が睨み合いが終わるまで数分を費やした。

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