第二夜「救う者、救われた者」

第11話

 『ヌオオオオッッ――!!!』


 魂まで焼け尽くされていく感覚というのは、一体誰が想像出来るのだろうか。魔女裁判で焼かれた魔女たちならば、その感覚は理解出来るのだろうか。いや、そんな事を考えている暇は無いか。


 「ハヤテ……」

 

 オレがそう呼ぶと、近くの電柱の上にでも居たのだろう。空かさずオレの目の前に姿を現した。


 「はいっス」

 「奴らの反応はあったか?」

 「無かったっスね。今回も収穫無しっスねぇ」

 「……そうか。いや、収穫が無いのなら別にそれで良い。戦わないで済むなら、それに越した事は無いからな」

 「それもそうっスね。ところでアニキ」

 「何だ?」


 刀を鞘に納めた時、ハヤテは首を傾げながら声を掛ける。改まった様子ではないのだが、それでも何が言いたいのかは理解出来てしまった。


 「彼女、どうするつもりっスか?記憶を消すんスか?それとも仲間に引き込むつもりっスか?」

 「記憶を消す、で良いだろう。仲間に引き入れても、戦力になる訳が無いんだからな」

 「それもそうっスね」


 完全に目の前から餓鬼が消えたのを確認し、オレは帰路に着こうとする。その後ろで何も言わずに着いて来るハヤテは、完全に消失した餓鬼の痕を見つめていた。


 「ハヤテ、気になる事でもあったか?」

 「……いや、なんでもないっス」

 「ならさっさと帰るぞ。ここに長居する理由は無いだろ」

 「了解っス」


 途切れた会話の中で、ハヤテが何を考えて何を思っているのかは分からない。他者が他者の事を完全に理解し、把握する事はどの人間であっても不可能な話だ。もしハヤテが餓鬼を倒す事に疑問を感じ、オレに敵意を向けたその時は……


 ――容赦なく叩き潰す。


 そう思いながら、オレはハヤテと共に帰路に着いた。暗闇の中を照らす月夜の下で、影に溶け込むようにして姿を消すのであった。

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