第5話
キーンコーンカーンコーン……。
放課後になる鐘の音が響き渡り、生徒たちは各々のしたい事をする時間となる。勉学に励む者、部活動で身体を動かす者、アルバイトに勤しむ者、帰路に着く者と様々である。
そんな様々な者たちが居る中で、誰も居なくなった教室で難しい顔をしている女子生徒の姿があった。机の上で紙を広げて、唸るような声を漏らしている。
「……むむぅ……」
「……」
難しい顔をしながら
「はぁ……由良さん?」
「は、はい。な、何ですか」
「そんな警戒しないで欲しいのだけど、分からないなら分からないで良いと思いますよ。分からない問題は飛ばして、分かる問題から解いた方が効率的ですよ?」
「むぅ……それは分かってるんですけど……」
由良茜は難しい表情を浮かべたまま、何か言い辛そうに頬を指先で掻く。あはは、と
「分かってるけど、何ですか?まさかとは思いますが、分かる問題自体が無いっていう事はありませんよね?」
「ギク……」
「はぁ、やはりですか。……あなたが追試を終えなければ、私も帰るのが遅くなるのですけど」
「それはごめんなさい。でも、どうして先生じゃなくて柊さんが監督役を?」
「先生方は緊急の会議が入ってしまったとかで、追試監督まで手が回せないらしいですよ。そこで偶然通り掛った私に白羽の矢が立った、という事になりますね。ただの生徒に監督役を頼むのもどうかと思うのだけど……」
「あ、あの~、柊さん」
「はい、何でしょう?」
「分からない問題を教えて貰えたり、……しませんか?」
「しません。自力で頑張って下さい」
「そ、そんなぁ~」
そう言いながら机に突っ伏す由良茜。そんな彼女の様子を眺めながら、口角を上げて手元で広げていた本のページを
「(丁度良い。帰りが遅れるのは不服ですが、あの人の役に立てるという事で手を打ちましょう。……
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