第38話 祈りの間でのステータス鑑定

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 読者様の支援にお応えし、定期更新日ではありませんが臨時アップいたします。



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 神殿にはベースダンジョンの入り口と、冒険者ギルド、『生成の間』、『転送の間』。そして、祭壇が設置された『祈りの間』がある。

 冒険者が自らのステータスを確認するには、この祈りの間で鑑定してもらう必要がある。


 一回の鑑定料は五千ガルドとかなり割高だ。

 しかし敵を知っていても、己を知らなければ常勝は危うい。


 魔物を倒すため、生き延びるためには、鑑定料は必要な出費である。


 鑑定の間を訪れたエリスは、早速神官に五千ガルドを支払い、祭壇の前に立った。

 祭壇には、太陽の光を取り込むステンドグラスが設置されている。

 ここに神の像はないが、神がいると思わせるほどの荘厳な雰囲気が漂っている。


 そんな祭壇に、石造りの台座が設置されている。

 その台座に神官から渡される紙を置き、エリスはその両端に両手を置いた。


 すると、微かな光とともに、無地だった紙に文字が浮かび上がった。

 これで、ステータスの鑑定が終了だ。


 光が収まったあと、エリスは紙を手に取って、とてとて足早に台座から離れた。

 そして恐る恐る、紙に書かれた文字を確認する。


○エリス(13)

○レベル10

○スキル

・基礎

 ├体力Lv1

 └魔力Lv4

・技術

 └魔術Lv4

・魔術

 <ヒールLv3>─<ハイヒールLv1>

 <スタミナチャージLv2>

・特技

 【根気】


「――ッ!」


 書かれたステータスは、以前とは比べものにならないほど上昇していた。

 ユートとパーティを組む前に鑑定したエリスは、レベル5だった。

 それが僅かなあいだに、10まで上がってしまったのだ。


 これに、エリスは驚いた。

 ユートとパーティを組んでから、レベルアップしているような、体が軽くなる感覚を何度も覚えた。

 だからエリスは『きっとレベルが上がっているに違いない』とは思っていたのだが、まさか5つもレベルアップしていたとは思わなかった。


 回復術師のレベル上げは、クロノスで活動する冒険者の中で、最も難易度が高いと言われている。

 というのも、パーティを組んでも、レベルアップの恩恵を滅多に受けられないためだ。


 また、魔物の討伐で経験値を獲得するための攻撃手段が一切ない。


 Cランク冒険者であるエリスのレベルが5だったのも、そのためだ。


 それでもエリスは、まだレベルが上がっている方だった。

 常にヒールを使い続けたことで、鍛錬経験が入ったためだ。


 回復術師の中にも、魔力が空っぽになるまでヒールを行う者はいる。

 だがエリスには【根気】がある。


【根気】は魔力が空っぽになっても、体力を消費して魔力を放つことが出来る特技だ。

 これは体力が空っぽになった場合、魔力を消費して体力を補完する特技でもあるため、近接職にとっても有用な特技である。


【根気】のおかげで、エリスは一般的な回復術師の倍はヒールを行えた。

 そのためエリスはこれまででも、並の回復術師よりもレベルが高かった。


 エリスのレベルアップ速度は、回復術師としてはハイペースだった。

 にも拘わらず、たった数日のうちにさらにレベル10まで上がってしまった。


 突然の大幅なレベルアップに、エリスは興奮して頭が僅かにクラクラした。


 変化は、レベルアップだけではなかった。

 ヒールのレベルが上がって、ハイヒールが芽生えた。

 ヒールを使い続けたことで、スキル覚醒が発生したのだ。


「これで、もっともっと、ユートさんをサポート出来る、です!」


 以前組んでいたパーティでエリスは、自らの回復力が低いために、仲間を回復させられずに失ってしまった。


 あのような出来事は、二度と繰り返したくない。

 そんなエリスにとって、ハイヒールの出現は願ってもないことだった。


 ステータスの上昇に興奮したエリスの下に、とぼとぼとした足取りでユートが戻って来た。

 彼もまた、今回ステータスの診断を行ったのだが、どうも様子がおかしい。


「ユートさん、ステータスはどう、です?」

「……全然ダメだった」

「ダメ?」

「うん。ほら」


 そう言って、ユートがエリスにステータスが書かれた紙を見せた。


          ○


○ユート(18)

○レベル1

○スキル

 ――


「――えっ!?」


 ユートが自らのステータスを見せると、エリスが目を見開いた。

 信じられないものを見るかのような表情である。


 実際、優斗もこれが自分のステータスだと言われても、まったく信じられなかった。


 現在の優斗は、レベル1かつスキルなしの戦闘力ではない。

 レベル1・スキルなしでは、魔物を千体以上倒すことも、ミスリルゴーレムを倒すことも決して出来ないのだ。


 また、優斗はスキルボードを使用したことで、何度も身体能力の上昇を実感している。


 スキルボードと完全に一致するか、あるいは多少の誤差は覚悟していた。

 だがまさか、全く違うとは考えもしなかった。


(もしかして、最初から僕のステータスは、間違って診断されてた? ……いや)


 それはないな、と優斗はすぐに自らの考えを否定した。


 スキルボードを初めて手にしたとき、優斗はレベル1だった。

 また能力も、その当時は間違いなくレベル1に相応しいものだった。


 神殿での鑑定が、最初から誤りだったわけではない。


(となると、スキルボードのせいかな)


 考えられる可能性で最も高いのは、スキルボードである。

 スキルボードで上昇させたステータスやスキルは、神殿の鑑定に反映されないのだ。


 優斗がスキルボードと鑑定の違いを分析していると、突然エリスが肩を怒らせた。


「この鑑定は、間違ってる、です!!」

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