第23話 ラブコメの神様がいるのだとしたら問いたい……花火大会って無条件で好感度あがるんじゃないの?と
花火大会当日、俺は駅に向かう前にもう一度小南から送られてきたLINEを見返す。
球磨谷駅南口降りてすぐのコンビニ前が偶然を装い落ち合う場所。到着したら俺から小南に連絡し、声をかけてもらい合流する。
到着から合流が早すぎる気もするが、まあそれはまだいいか。それよりも不安なのはその先だ。
花火大会は十九時から開始、最初の内は六人で固まって見物する。その後、小南が任意のタイミングで男女のペアを三組作りたいと提案し、俺を含めた協力者が賛同する。不安なのはペア決めに用いる〝道具〟、それから〝方法〟だ。これがどうも匂わせるのだ、作為的だと。
一応、軽く指摘はしたが『絶対に成功させるから任せておいて!』と小南の出所不明の自信によって突っ
根拠のない自信は不手際を招きやすくなるというのに……。
しかし代案があるわけでもない、考える時間も残されていない。結局、小南を頼りにするしかない。
……まあ、あいつなら勢いで押し通せるか、多分。
悲観的になる思考を振り払うようにして立ち上がり、スマホをしまう。
そろそろ行かなきゃだな。
俺は財布など必要最低限の物だけを持ち、家を出て駅を目指した。道すがら、ペア決め後のことをシミュレーションしながら。
――――――。
「おーい! こっちだ鋼理!」
普段は見慣れない浴衣姿の人が多く見受けられたせいで、今日来るメンツも俺以外は浴衣なのではと思いもしたが、改札を抜けた先で私服姿の練馬と吉田を見つけ俺は内心ほっとする。
男だけでの花火大会という
俺は会場に向かうであろう人の流れから抜け出し、練馬達の元へ向かう。
「悪い、待ったか?」
「全然、俺と辰真も着いたばかりだ。それにしても…………」
俺の顔を見てニヤニヤしている練馬。なにか言いたそうにしているのは明らか。
「まさか、俺の服装がダサいとか思ってるんじゃないだろうな? もしそうだとしたら練馬に
「いや服装に関してじゃねーよ? てかもうちょっとファッション楽しまない?」
あ、違うのね…………マネキン先輩、やはりあなたは正しかった。
偉大なるマネキン先輩の導きが間違っていなかったことを改めて実感した俺は、となればニヤニヤしていた理由は別にあると練馬に訊ねる。
「服についてじゃないなら何故に笑ってた?」
「いやさ、鋼理ってこういうイベント事は『彼女がいない奴は
感じからして冗談交じりだろうが、それでも俺は練馬の言に胸中がざわつく。
落ち着け俺。練馬からしたら俺が変わったように見えるのは当然だろ。それを悟られたと結びつけるのは行き過ぎた不安だ。ここは冷静に、冷静にだ。
早まる鼓動を静めるよう息を吐き、怪しまれずに切り抜けられるよう頭の中で言葉を整理する。
「……花火好きなんだよ、俺。だから彼女がいるとかいないとか関係ない。練馬達を誘ったのも花火の良さをもっと知ってもらいたかっただけで、断られたら俺一人で見物するつもりだったしな」
「そんな花火好きだったの⁉ つか、一人で花火大会に行くって寂しすぎじゃね」
「勘違いをするなよ練馬。俺は間近で花火を見ることを楽しむのであって、誰と共に過ごすかには重きを置いてない。だいたい一人は寂しいって単なる自意識過剰だろ。皆で食べようが一人で食べようが上手い飯は上手いし、皆で見ようが一人で見ようが花火は綺麗だ。寂しいと思ってる奴が飯を不味くし花火を汚しているだけ。誰かと一緒を優先事項にする奴等と一緒にしないでくれ」
「ごめんやっぱ訂正、何一つ変わってないわ、お前」
呆れた様子で話を打ち切った練馬。
俺は同じく〝知る者〟である吉田に目配せする。
「花川の
言葉にやや棘があったが……まあいい。ナイスだ吉田。
「まだ時間はあるし、そうするか。練馬もそれでいいか?」
「おう」
これから小南と会うのを知る由もない練馬から簡単に同意を得られた。
……さて、小南に伝えてやるか。
吉田を先導に南口へと向かう中、俺は練馬の目を盗み、時刻確認で取り出していたスマホを弄り小南にLINEを送った。
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ここまでお読みくださり感謝です。深谷花です。
この回で練馬が口にしてた〝せんす祭り〟についてですがどこかのタイミングで『男だらけの夏祭り』的なタイトルで投稿しようと思います。
本編にはあまり関係のない、珍しくふざけ散らかした話になると思われますので「本編書けよ! 俺はあのあまあまを欲しているんだ!」という方がもしいらっしゃいましたら気軽に言ってください。
すみません訂正がありました。珍しくではなく、ほとんどふざけ散らかしておりました。あと、あまあまでもなんでもありませんね、これ…………では。
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