6話 行動原理に何かが反していたのかも知れない。


『サマルカンド・鉱物資源企業団公社ビル』


ハミルは、東地区で装甲車からあがる黒い煙を、ビル最上階の総裁室から眺めた。

そして、総裁室に連行されたアレム神父と公社総裁に向かって


「民衆とは愚かだとは思いませんか?

素人集団がどれだけ威勢を挙げようと、プロの集団である我々に、どれほどの打撃が与えられるかの計算すら出来ない。

見ていてください。鉱物資源企業団公社総裁。

公社が手塩をかけて育てた民兵組織の終焉を・・・」


サマルカンド上空には、空軍基地から派遣された警戒機が、飛来していた。


・・のだが、木製のピノキオ姿の総裁は、「違うな」と小さく呟くと、その長い鼻が気に入らないのか、違う鼻に付け替えた。


ハミルとアレム神父は、「この状況で今することか?」と驚きの表情で総裁を見つめた。


>もしかするとこれが総裁の器の大きさなのか?

ハミルの思考回路にそんな文字が流れたが、それを確かめる術はなかった。



『サマルカンド郊外・地下鉄遺跡』


青い視野レンズの参謀は、

「我々アローン兵は反乱分子の鎮圧に当たる際、通じた者に危害を加えない様に、彼らの識別信号を記憶しておりました。その識別信号情報には首都近辺の民兵も多く含まれていました。サマルカンドの民兵の中にも、内務省に通じた者が多数いるはずです。もし、我らが民兵と合流した場合、ソフィー様自身が、内務省に通じた者に消される可能性が在ります」


「まあ、ここにもすぐ裏切る奴が、2機ほどいるがね」


デューカはとコーリーと銀次を見た。


「どうとでも思え。時代遅れのアンドロイドめ」

自称・最先端の銀次は言った。


「間違った方向へ進んだお前には同情するよ」

「いやいやいや、同情する流れじゃないでしょう?!?

なぜ俺がアホノデューカに同情される?」

「うん、俺はもうアホで良いわ。アホカちゃんとでも呼びたまえ」

「アホカちゃん」

「哀れな進化ってあるんだな」

「それで、なぜまだ同情の目で見る、それじゃまるで俺がもっとアホみたいじゃないか!」

「・・・」


ソフィーは、他の3機に聞こえない様に、暗号直通回線で参謀に話しかけた。

その様子を、コーリーがチラッと見たが、ソフィーは気にせず回線を繋げた。


「・・・サマルカンドの民兵内に、内務省に通じた者が居る、と言う事は、私の部隊内のアンドロイドの中にもいたと言う事?」

「・・・はい。その者は、私自身、目視で確認しましたので、顔と所属と名前が解ります」


参謀は、その者の識別信号と顔と所属と名前を示そうとした。


「待って!」

「?」

「見たくない・・・・その情報は。

それを今すぐあなたとアローン兵の記憶の中から消して。

それは、私とデューカ以外いなくなってしまったから以上、必要ないでしょう」

「・・・」

参謀の思考回路は一時機能を止めた。

参謀の行動原理に何かが反していたのかも知れない。

「消して」

ソフィーが再び命じると、参謀は応じた。

「了解しました」


その言葉の後、参謀は自ら記憶から、その情報を消去した。


「ちょっと待って、まさかデューカが裏切っているって事は?」

「申し訳ありません。既にその情報は完全に消去し終えました。」


ソフィーは銀次と言い合うデューカをふと見た。

そして親友を疑った自分を悔いた。



つづく



いつも読んで頂き、ありがとうございます。

毎週、土曜日更新です O(≧∇≦)O イエイ!!

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