4話 潤いに満ちた記憶たち

『惑星・ハデス』


チタン・ホウ素・ケイ素・亜鉛等等のセラミック鉱山を有する惑星ハデスでは、

流刑罪を言い渡され記憶を奪われたアンドロイドたちが、何時終わるとも解らない鉱山労働に従事していた。


掘り尽くされた鉱山を見渡す丘に建てられた、鉱山管理局の一角にある記憶図書館で、受刑者から奪った記憶を、管理する記憶図書館の司書アンは、最も古い記憶の整理をしていた。


いずれ受刑者に返す予定の(返された事は一度も無い)記憶は、マイクロフィルムに記録されていた。


「4800年前・・・」


この時代の記憶となると、まだ人類だった頃の鮮明で潤いに満ちた記憶を、読み取ることが出来た。


人類の鮮明な記憶は、アンドロイド・アンの心に、潤いをもたらした。

アンに取ってそれは誰にも言っていない、密かな快感となっていた。


マイクロフィルムのラベルには『受刑者ナンバー555』と記されていた。


既に、アンドロイドとしてもこの世に存在しないナンバーの受刑者だ。


マイクロフィルムの中に仕舞われた記憶の記録の中で、『受刑者ナンバー555』は妻を持ち二人の子どもがいた。


『受刑者ナンバー555』は、記憶の中で子ども達の、宇宙船での旅立ちを見送った後に逮捕され、流刑惑星ハデスに送られてきた。


罪状は臨時政府に対する反乱罪。4800年前に最も多い罪状だ。




つづく




いつも読んで頂き、ありがとうございます。

毎週、土曜日更新です O(≧∇≦)O イエイ!!

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