12話 愛しい恋人を見つけた乙女のように・・・

『空軍基地・周辺』


ソフィーはアローン兵各隊を、空軍基地の偵察に向かわせた。


地下鉄遺跡にいるソフィーの思考回路に、空軍基地・周辺各所にいる50機のアローン兵の視覚、聴覚、触覚情報が送られてきた。


思考回路上に、空軍基地周辺の鮮明な全体像が浮かび上がってきた。

まるで自分の思考回路内に司令部が出来た気分だ。


ソフィーが、

「あの光が、空軍のパトロール機か・・・」

と呟くと、側に控えている参謀を見た。


参謀は心ここにあらず状態で、宙を眺めていた。


・・・彼も同じ情景を見ているらしい。


「もう少し、先に・・・」


ソフィーの呟きに合わせ、空軍基地周辺にいる、アローン兵10機は足を進めた。


参謀が

「ご注意して、お進みください」

と忠告した。ソフィーは

「忠告、感謝する」

とねぎらった。


参謀のプログラムに元々組み込まれている、機械的な忠告の言葉だとしても、悪い気はしない。自意識があるアンドロイドの自分だって、機械的なのは程度の差だろう。


アローン兵達から伝わる涼しい風の感触が、ソフィーの気持ちを落ち着かせた。

その風の中に、ソフィーは懐かしい感触を感じた。


「この感触は・・・」


アローン兵の一機が、何かの気配を感じ、ソフィーが操る10機は、素早く岩場に身を隠した。

「どこだよ・・・ここは?」

とソフィーが聞きなれた声が、アローン兵達の聴覚を通じてソフィーに伝えられた。

「デューカ?デューカが生きてた?」

ソフィーは、心の奥から嬉しさがこみ上げてきた。



           ☆彡



ソフィーの意思と歓喜を察したアローン兵達が、一斉にデューカに駆け寄った。

その残忍さにより一般アンドロイドに恐れられた殺戮兵器のアローン兵。


そのアローン兵数機が、愛しい恋人を見つけた乙女のように、デューカに向かって、嬉しそうに駆け寄って来た。

「!」

デューカは、恐怖で絶句した。


自らの機体が、成すすべもなく壊されていく恐怖と、この世界から、自意識が完全に消されてしまう恐怖。


慌てて、後を振り返ると、そこにも惑星最強の殺戮兵器が、嬉しそうにスキップしながら駆け寄って来ていた。


5000年存在し続けて着たが、スキップをする姿に、こんなにも恐怖を感じた事はなかった。


「こいつら、こんなに嬉しそうに殺戮を楽しむのか!狂ってる!

こいつらもこいつらを作った連中も狂ってる!」


完全に包囲されている。完璧だ。さすがアローン兵。

逃げられる可能性は、ゼロだと理解するのに時間は掛からなかった。


デューカはこの世界に絶望し、そして自らを哀れんだ。

人間なら涙を流して、その気持ちを表現出来ただろうけど、


「さよなら、ソフィー・・・」


デューカは、オプションの涙機能を付けなかった事を後悔した。


愛する者との別れに、涙も流せないなんて・・・




つづく



いつも読んで頂き、ありがとうございます。O(≧∇≦)O イエイ!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る