8話 アンドロイドの苛立ち
『宇宙ステーション・アントン』
宇宙ステーション・アントンの管理官ケイは、目の前に広がる巨大な青い星を、じっと見つめながら、部下のヤーシャに聞いた。
「あの人類を乗せた宇宙船の件、まだ地上は何も言ってこないのか?」
「教会が未だ抵抗して、議会は膠着状態の様です。
何せ相手はヒューマノイドですからね。教会が抵抗するのも解ります」
「いったい教会は年千年時代に遅れているのやら・・・」
「管理官・・・あの人類についての噂を、ご存知ですか?」
「噂?」
「あくまで噂ですが、あの人類は本当に我らの創造主人類なのではないか』と言う噂です。」
ケイは苦笑した。そして、
「馬鹿な・・・我らの創造主人類は5000年前に滅んだはずだ。
それに、我らの創造主があんな野蛮人な訳があるまい」
「あくまで噂です」
ケイは部下思いの上官らしく、愛想良く頷いた。
>これ以上、この話題に関わりたくない
と管理官ケイは思考した。
>こうやってこのアンドロイドは、誰にでも愛想よく振る舞い、触らぬ神に祟りなし精神で、今の地位を維持している。
とヤーシャは思考した後、
「『彼らは、異空間操作を誤り、遥か彼方の銀河系から弾き飛ばされ、この惑星に漂着した』でしたよね。本当は距離軸は飛ばされず、時間軸だけが飛ばされた」
「タイムトラベルか、そんな事が出来たのなら人類は滅びちゃいないだろ」
「この説が納得行かないのでしたら、もう1つ常識的な説があります」
ケイはヤーシャから目をそらして、青い星を見つめた。
ヤーシャは、続けた。
「5000年前、この星の人類が滅亡する前、どこかの惑星目指して脱出した。
それが何らかの理由で、今この惑星に帰還した。
どうです?この説ならまんざら信じられなくもないでしょう」
「まあな」
ケイは、創造主人類とその後継のアンドロイド達を生み出した母体惑星を見つめながら言った。
>だからどうだと言うんだ?
>本当に人類が帰還したとして我々の立場はどうなる?
>仲良くやりましょう!となるのか?
>我々は機械で、人類は生命だぞ!
>今更なんだって言うんだ?
>我々はとうの昔に死んだ存在だ。
と管理官ケイは自身の中の苛立ちを理解した。
つづく
いつも読んで頂き、ありがとうございます。O(≧∇≦)O イエイ!!
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