4章 デユーカに迫る惑星最強殺戮兵器

1話 5000年続いてきた時間が消える

黒い装甲を纏ったアローン兵は、恐怖を発散していた。

消去される恐怖だ。


5000年続いてきた時間、永遠に続くと思われる時間が終わる恐怖。


自分の価値の消滅?

完全なる無への恐怖?


残されたアンドロイドの機体は、ただのスクラップに過ぎない。


サクラの思考回路内に、そんな言葉が流れた。


アローン兵は給水車両をチェックし終えると、鉢植えのパンジーをチェックし始めた。金属探知機は沈黙したままだった。


スピックの様な物で、土の中をツンツンとさして、中身を確認していた。

一刺しした後、まだ納得いかないのか、さらに一刺しした。


ただ丁寧にチェックをしているんだろうけど、それは珍しい物を見つけた猫の様な好奇心を感じさせた。

サクラはパンジーを傷つけないか、そわそわしながら眺めた。


一通りチェックし終えると、サクラに、宇宙船内に運ぶように指示した。

大柄なアンドロイドがサクラの手伝いをしようと、鉢植えを持って宇宙船内に入ろうとすると、

「ハミル少佐の搭乗は許可できません」

とアローン兵は機械的な声で、ハミル少佐と呼ばれる大柄なアンドロイドを制止した。


「そうだろうね」とでも言いたそうな目で、ハミルはアローン兵を見返した。


そして、手に持っていたパンジーの鉢植えをサクラに渡した。

サクラは鉢植えを受け取ると、アローン兵に誘われて円盤型の宇宙船内に入った。


宇宙船では、あの人類の美しい少女が出迎えてくれた。


少女を間近に見たサクラは、少女から発せられる生命の輝きの様なものを感じた。

遠い昔感じていた様なその生命の輝きに、サクラは胸が締め付けられた。


サクラは心の動揺を、少女の前で睨みを利かすアローン兵に、悟られない様に作業を続けた。


何度も報道で流された映像には、この少女の映像は一回も流されなかった。


・・・もし、この洗練された少女の映像が流れていたら、『野蛮人』と言う風評は流れなかったかも知れない。


サクラが鉢植えの搬入を終えて、宇宙船の外に出ると、大柄なアンドロイドハミル少佐が、

「お疲れ様。今日会った事は、口外はお控えください。あなたのためにも」

と口止めした。


「お客様のプライバシーは口外致しません」


サクラは振り返って宇宙船を見た。

宇宙船の窓に少女がいる事を期待したが、そこに少女の姿は無かった。



『首都・評議会議長室』




評議会議長の元にハミル少佐から

「例の件、順調に事は運びました。0700時に事は成就します。」

と連絡が入った。


時計は、6時50分を示していた。

「ご苦労」

議長は労をねぎらうと、回線を閉じた。

議長室の大型モニターには、人類を乗せた宇宙船が映っていた。


「今更、人類など」



つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る