18話 胸が締め付けられる想い

ソフィーは12000機のアローン兵を想像した。


特殊機械兵、通称・アローン兵、最も危険で非情な任務に真っ先に投入される機械の兵隊。その処理速度の速さは、銀河系でもトップクラスだ。


その処理装置を勝手に取り出そうとすると処理装置ごと爆発炎上する程の、セキュリィティーの高さだ。


1000年前、太陽系外から襲来した侵略者を、太陽系圏外との境界線ヘリオポーズで掃討したのは、アローン兵たちだった。


恐怖の対象であり、英雄でもある。

素人の集団に過ぎなかった、反乱軍とは訳が違う。


サムエルの戦闘知識にしたって、サバイバルオタクのレベルを超えてはいなかった。


「ソフィー様、今後のご命令を」


参謀は問いかけた。


ソフィーは像の様に微動だにしない、100機のアローン兵を見渡した。

それは最強の物だけが持つ独特の威圧感に満ちていた。


ソフィーは、アローン兵の思考回路を通して自分自身を見つめた。

その最強が、他者であり自分でもある状態に、ソフィーの思考は歓喜した。


「私は、この星に降り立った、人類に会いたい。

何故だか解らないけど、あの者たちの事を考えるだけで、胸が締め付けられるように、苦しくなる。この想いは、私と伴に戦った仲間達も同じ気持ちだったはず」


参謀は、彼が参謀兵で有る事を示す青い視野レンズで、ソフィーを見つめたまま沈黙していた。


『胸が締め付けられるように、苦しくなる』を理解しようとしているらしい。


人としての記憶を引き継いでいるアンドロイドたちは、

『胸が締め付けられる想い』を、感じることが出来た。


5000年前のアンドロイドの開発者は、人類無き後もこの『胸を締め付けられる想い』を感触として、残しておきたかったのかも知れない。


人の記憶を引き継がない機械の参謀は、

『胸が締め付けられるようで』を理解する処理を止めた。

現時点での理解は不可能と判断したらしい。


『胸を締め付けられる想い』

それを理解出来る者と、出来ない者の差・・・


ソフィーはその先を考えるのを止めた。


地下鉄の遺跡に風が吹いた。ともて気持ちがいい風だった。

アンドロイドになっても、風を感じられる機能にソフィーは感謝した。



つづく


いつも読んで頂き、ありがとうございます。O(≧∇≦)O イエイ!!

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