4話 愛おしい者との記憶は、消されたくない
鍾乳洞の中は、膝まで地下水が流れていた。
有機生命体に取って、欠かせない水も、アンドロイドに取っては、機械に異常をきたす湿気の元に過ぎなかったが、心の奥底では、水は、やはり潤いそのものだった。
デューカの背後から、装甲騎兵の鍾乳洞内を駆ける足音が近づいてきた。
その攻撃的な音に、否定しがたい感情が沸き起こってきた。
死への恐怖?
消え去ることに対する恐怖か?
何故、消え去ることに恐怖する?
ただ消えるだけだろ?
データが消えるだけだろ?
そもそも生きてると言えるのか?
俺って、誰?
その理解しがたい感情から、必死で遠ざかろうとするかのように、前を走る味方と思われる機械の足音を追った。
背後では、装甲騎兵の機銃の銃声が響き渡っていた。
足元で弾丸が乳白色の柱と水面を、弾き飛ばした。
慌てたデューカは足を滑らせ、予想以上に激しく流れる水とともに、闇に隠された絶壁の下へと落ちていった。
・・・愛おしい者との記憶は、消されたくない・・・
その本能なのか、頭部の記憶装置を守ろうと右往左往するが、それも空しく、地底湖らしき闇へ落ちていった。
地底湖に沈み始めたデューカは、自らの身体の防水機能について考えようとしたが、
「えーと・・・防水ってなんだっけ・・・」
著しく低下した思考回路は、考える事すら許してくらなかった。
その思考回路が停止寸前に、デューカの混濁した意識に、声が聞こえた。
・・・意図的に消されたんだよ、我々の記憶は・・・
>我々?
つづく
いつも読んで頂き、ありがとうございます。O(≧∇≦)O イエイ!!
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