19話 摩天楼の下で・・・

都心の摩天楼にいるかのように、高層ビルの様な樹木が立ち並び森を形成していた。


中には、1000メートルに達するものや、幹周が、球場型のドームを超える樹木もあった。


その威容は巨樹たちが、この惑星の主役であることを、誇示しているかのようだった。


5000年前、まだ人類が地上に溢れていたころは、100メートルを超える樹木は、見かけることはなかった。その成長は、気候変動の結果なのだろう。


その森林の摩天楼の下で、サムエルたちは探索をした。


森林の中は、所々に爆発の残り火がちらちらと燃えていた。

サムエルは、仲間の20機と伴に、仕掛けられたトラップを捜索した。


トラップの周りには、粉々に砕けた機体が、あちこちに散乱していた。


それは不法投棄されたスクラップの様だった。

コーリーから渡されたトラップの威力がどの程度かは、聞いてはいたが、実際の戦場で見た訳ではなかった。


目の前には、確かに陸軍のアンドロイドの機体が、破壊されていた。


「しかし・・・何かが変だ」


サムエルの呟きに、

「考え過ぎだよ。ものすごい戦果だぜ、これは!」

と、浮かれたアンドロイドたちは、絶賛した。


「もう少し、奥まで行ってみよう。」


サムエルは自ら先頭に立ち、静まり返った森林を進んだ。

所々に、機械の破片が、カタカタと音を立てていた。



『反乱軍鎮圧部隊本部』


「1528時、反乱分子の一部が、塹壕から出て、現在森林を捜索中」


反乱鎮圧部隊連隊長カーン少佐は、最前線から戻った斥候から、報告を受けた。


「甘いな・・・素人め!戦いはこれからだ!」


カーン少佐は言った。


作戦会議用のテーブルには、地図が置かれていたが、地図は明らかに何者かによって書き換えられていた。誰かがどこかで地図情報を、書き換えたのだ。


陸軍のどこかの部署か?

情報部の失策か?


お蔭で、策を練り直さなければならなかった。


議長に


「地図が偽物で作戦は失敗しました。エヘッ」


なんて言い訳は出来ない。


しかし、反乱分子の無能のお蔭で、成果を出す寸前にまで、たどり着けた。


これで、一応作戦は成功したと言える。

指揮官としての評価が下がらずに済む。


そして、あの独裁者に、罵られずに済む!


にやけたい!こんな時は思いっきり、にやけたい!

しかし、今は反乱軍鎮圧作戦中。


部下の手前、にやけることなんて出来ない。


それを誤魔化すために、カーン少佐は指揮官らしく顔をしかめた。

その渋い表情は、軍規を引き締め、カーン少佐にカリスマ性を持たせる結果になっている事は、誰も知らない。


空からは、雨が降ってきた。

その雨は、戦闘の熱気をかき消すかの様な冷たい雨だった。


「奴らが出て来た方角を探れ!

場所が特定され次第、攻勢をかける!」


カーンは、塹壕から出て来た愚かな反乱分子の姿を思い浮かべ、再び顔をしかめた。




つづく




いつも読んで頂き、ありがとうございます。O(≧∇≦)O イエイ!!

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