18話 罠と熱狂とイケてるデューカくん


「泡か」


地下塹壕で歓喜に沸く仲間に囲まれながら、サムエルは呟いた。


宇宙は、出来ては弾ける泡に過ぎないらしい。

仕掛けられたトラップの爆発も、その泡の欠片に過ぎないのかも知れない。


森林に仕掛けたトラップが爆発するたび、南側塹壕では歓喜の声が上がっていた。


仲間のアンドロイドたちが熱狂する中、サムエルは、思考回路から湧き上がる歓喜を押さえつつ、目の前に広がる森林の中で起こる、爆発の閃光を、見つめていた。


「陸軍の連中め、俺が仕掛けたトラップに、上手い事引っ掛かりやがった。

素人が作ったトラップの、その素人さが逆にプロの兵士のマニュアルに無かった分成果を挙げたって事か?」


そう言うサムエルの目は自信に満ちていた。


目の前で繰り広げられている、森林の爆発の数は徐々に増えていった。


「爆発の規模から考えて、2、3個連隊の動きは封じたはず・・・と言う事は、

この混乱に乗じて押せば、この戦い勝てるかも・・・」


トラップによる爆発は30分程続いた後、静けさが訪れた。


東側塹壕、西側塹壕から聞こえていた銃声も、止んだ。


サムエルは塹壕にいる仲間と目を合わせた。


「まさか陸軍か壊滅した?それとも撤退したか?」


無口なアインは頷いだ。サムエルは無線を取り


「ソフィー、戦況は?」


しかし、無線に出たのはデューカだった。


「はぁ?戦況?まだ解んねーよ!

とりあえずソフィーとは、いい感じでやってるよ!」


冗談だと解っていても、サムエルはムカッとした。

さらにその冗談に、冗談で返せない自分にもムカッとした。


「デューカ死ね!」


「残念!イケてるデューカくんは、5000年前に死んでます!」


サムエルは、無線をきると、思考回路を落ち着かせて、静まり返った森林を見つめた。


「敵情を偵察してこよう」


サムエルの発案に、無口なアインが珍しく


「ソフィーに連絡をした方が・・・・」


「必要ない。トラップの戦果を見たらすぐに帰還する」


塹壕にいた勝利に酔ったアンドロイド達が、


「俺も行くぜ!」


「奴らの残骸は大好物だ!」


「陸軍ちょろいな!ちょろ過ぎて発狂しそうだぜ!」


と言ってくれた。サムエルの頬から笑顔がこぼれた。


サムエルは塹壕に待機していた数の半数の20機と伴に、

塹壕を抜け静まり返った森林に向かった。


無口なアインはその後姿を、心配そうに見つめた。




つづく



いつも読んで頂き、ありがとうございます。O(≧∇≦)O イエイ!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る