16話 デューカクン アナタトハ オシマイヨ

かなり近くで爆発音が響いていた。

塹壕の地下から、振動が伝わった。


地中貫通弾なのかも知れない。


コーリーが用意した塹壕は、迷彩が施されてるとは言え、地中貫通弾が必要な程の

地下施設ではなかった。


地中貫通弾が地中で爆発すると、爆音とともに塹壕が震えた。


「地中貫通弾を撃ち込むとは、陸軍は【巨大な地下施設がある】とか、

コーリーに偽情報を、掴まされたのか?」


真剣な目つきで言うデユーカに、ソフィーは、対空ロケット砲をデューカに向けて

「ばーん」

と言ったが、デューカは何の反応も示さなかった。


「なんか反応しろよ!」って目で、デューカを見た後、


「もしくは・・・・

私たちの知らない地下施設があるのかも、策略大好きコーリーちゃんなら、

それくらいの事は考えられる。

コーリーちゃんは、何千年も、そんな事を考え続けてきたアンドロイドよ。

不老不死なアンドロイドだし、時間は幾らでもある。

おもちゃの秘密基地を作る感覚で、この惑星の至る所に、

そういった施設があるのかも・・・」


「まさか・・・・」


「まともなアンドロイドなら、そんな事はしない。

でに、あいつ、この状況で、いつも楽しそうな顔してるじゃん」


「うん、まあ、だいたいそうだね。」


「策略が完成していくのが、楽しくてしょうがないのよ。

狂気じみている」


「やばいね・・・そんな奴の口車に乗った俺たちもやばいね」


ソフィーは、再び、

「ばーん」

と言ってみた。デューカは、


「俺たちホントやばい、マジで・・・。」


と言うだけだった。



人間時代から、デューカは、TPOの解る真面目な人間だった。

こんな非常時に、ふざける気分にはならないのだ。

機械化して、変貌する奴も多くいたが、

デューカの性格は、ほとんど変わってない。


それはそれで稀な存在だった。


だから・・・・


「ノリノワルイ デューカクン アナタトハ オシマイヨ」


ソフィーの目が、エラーを起こしたアンドロイド特有の無機質な目に変貌した。


「ソフィー?!」


ソフィーは、抱えていたロケット砲の引き金を、カチッ・・・・と引いた。


デューカの表情が、一瞬で恐怖に変わった。


その表情に、機械的なソフィーは微笑んだ。


ロケット弾が、デューカに向かって飛んでいくのが、スローモーションの様に見えた。


ロケット砲を構えるソフィーの目は、楽しげだった。


ソフィーが狂った?

電脳のエラーか?

コーリーの策略?

これが、ソフィーの本心?

俺を憎んでいたのか?

俺は愛していたのに・・・

ごめん、気づかないで、今まで楽しかったよ。ソフィー・・・


ロケット弾が飛んでくる間の、ほんの一瞬の間に、デューカの思考回路に色んな想いが流れてきた。


ロケット弾は、デューカの記憶装置がある頭部に直撃した。


その弾丸は、クッションのように柔らかかった。


「えっ?・・・って、これクッションじゃん!」


「ひゃは、それはコーリーの差し入れの、パーティ―用のおもちゃのロケット弾だよ。良く出来てるよね」


「何やってんだよ!冗談じゃねーよ!ふざけんなよ!」


「ひゃは♪」


「ひゃは♪じゃねーよ!コーリーめ!

なんでこんなもの差し入れすんじゃねーよ!」


「コーリー酷いよね。私たちが必死で戦ってるのに、こんなもの差し入れるなんて」


「お前が言うな!」


航空機に拠る爆撃は、1時間程続いた。


その間、アンドロイド達は、自らの無事を祈る事しか出来なかった。

機械だって祈るらしい。


「偽情報を元に爆撃してるとは言え、誤って直撃を受ければ、

この程度の塹壕じゃ持たないよね。みんな大丈夫かな?」


ソフィーは人間時代の優しい表情で言った。

その直後、塹壕の近くで、爆発がおき大きな地響きが伝わってきた。


ソフィーとデューカは目を見合わせた。


デューカは恐怖を隠すかの様に、苦笑いした。


そして、現実から目を背けるかの様に、商店街の大きなからくり時計を思い出した。

まだ人間だった頃の思い出だ。おもちゃの兵隊が行進する簡単なものだった。

ある日、工事中のクレーンがぶつかって、からくり時計は破壊され、おもちゃの兵隊たちは動きを止めた。


デューカは、そのおもちゃの兵隊に自分を重ねた。


上空を飛ぶ航空機が飛び去り、森に静けさが戻った。


その、ほんの僅かな静けさの後、対地攻撃ヘリの騒がしい音が、四方八方から聞こえた。


レーダーには何の機影も映ってないと言うのに・・・


レーダーがポンコツなのか、攻撃ヘリが優秀なのかは解らない。

デューカはその四方八方から聞こえる音を聞きながら、

「俺達、完全包囲されてるね。」

と呟きながら、高射砲の機銃で狙いを定め、ソフィーの攻撃命令を待った。


ソフィーは塹壕の外から聞こえるヘリの音で、ヘリとの距離を見計った。


操縦者を目視できる程の距離に、攻撃ヘリは迫っていた。


攻撃ヘリの巨大な機銃が、デューカの眉間を狙っている様に思えたデューカは

自分の体が粉々になる映像を、思い浮かべた。


「まだ?」


デューカはソフィーに催促した。


「デューカ君・・・もう少し、引き寄せて」


ソフィーは囁くように言った。


1秒と少し時間が流れた後、ソフィーは無線機を取り


「攻撃開始!」


と仲間のアンドロイドたちに命じた。




つづく


いつも読んで頂き、ありがとうございます。O(≧∇≦)O

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