13話 誰が人類を滅ぼしたの?

ニナの問いに、ソフィーが答えた。


「陸軍の動きがおかしいのは、碧依文書のせいかも知れない」

「碧依文書?」

「コーリーがアルコールソフトで、いってる時に聞いた話だから、詳しい事は解らないけど、教会の外部とは遮断されたサイトで見つかったファイルに、

惑星政府がこの星の人類を滅ぼした証拠が書かれているらしい。

それをコーリーが陸軍将校にばら撒いたらしい」


「!」

サムエルとニナは、驚いて動きを止めた。


「惑星政府が人類を滅ぼしたって!?マジで!?」

デューカは予想以上に真剣な眼差しでソフィーを見た。


「コーリーの事だから、証拠を偽造した可能性もあるけど・・・。」


「偽造ね。コーリーならやりかねないよね」


ニナは、ホッと緊張を解いた。


「でもさ・・人類滅亡って、不可解な事が多すぎるんだよな」

サムエルは、指でテーブルをとんとんと静かに叩きながら、言った。


デューカとニナの視線がサムエルに集まった。

ソフィーの視線は、何気にテーブルを叩くサムエルの指を追っていた。

それに気づいたサムエルは指は動きを止めた。

ソフィーが視線を逸らすと、サムエルの指はまた動き出した。

するとソフィーの視線は、またその指を追った。


サムエルは思った。


お前は猫か!

しかし、この指の動きを止めるべきか?

動かし続けるべきか?

相手は、ソフィーだ。この反乱の美しきリーダー。


陰影のある美しい横顔は、アンドロイドとは思えない人間味に満ちている。

それでいてミステリアスな表情を帯びている。

その表情のせいか、未だ何を考えているのか不明な所が多いリーダー。


コーリーなんかより、リーダーとしての器はある。


「こいつの為なら死んでも良い」と思わせる器だ。


そのソフィーがなぜ、俺の指を追う?お前は猫か!

アホのデューカなら、からかってやるところだが・・・

もしかしたら、何か深い考えがあって・・・

俺の指の動きから、俺の深層心理を探っているのか?

まさか・・・


「しかし、よくもあんな胡散臭いコーリーに乗せられたよね、俺たち・・・」

デューカは、人類滅亡・・・の話題を逸らした。

それにニナも話を合わせた。

「異常な興奮状態だったからな、しょうがなくない?」

「まあね・・・って言うかさ、サムエル、お前、何ぼーっとしてんだよ!」


デューカの言葉に、サムエルは指の動きを止めた。

サムエルは、チラッとソフィーの表情を覗いた。

綺麗な顔をしている・・・それ以上は何も読み取れない。


「おい!サムエル!何アホみたい顔して、俺のソフィーを凝視してんだよ!」


アホのデューカに言われたくはないが・・・それにお前のソフィーでもないし!

さらにアホのデューカはほざいた。


「勝つ見込みがないんだったら、ここから逃げる手立てを考えろよ!

サムエルお前頭いいんだろう!」


「逃げるって、どこに逃げるんだよ?今から工場長に

『僕達、発電所爆破して、政府に追われてるけど、また雇ってください。てへ♪』

って頼むのか?、もう、俺達に逃げる場所なんてないんだ。」



「サムエル君・・・そんな時に『テヘ♪』とか言っては、ダメだよ。ねえソフィー」

ニナがおどけた表情で、ソフィーに振った。


「そうね『テヘ♪』はダメだね。

そんな時は、『これを・・・工場長も好きだね。へへへ』じゃなきゃ」


「ソフィー、悪い子!」


「テヘ♪」



その言葉の後、テント内に静かな沈黙が訪れた。

5000年経った今でも、人類滅亡の話は重すぎる。


デューカは、 テント内にいるアンドロイドたちを見渡した。

アンドロイドたちは沈み込んだ表情で、じっと作戦地図を見下ろしていた。


その表情に、歴史書に描かれていた人類の様な、誇りや勇気、不屈の精神は感じられなかった。


アンドロイドと呼ばれる人型ロボット。


「俺たちは所詮、人に似せて作られた機械に過ぎない・・・」


サムエルの言葉に、デューカは


「少なくともここにいるメンバーは、この星に降り立った人類に似た生命体を見て、何かを感じたからこそ、ここにいるはずなのに・・・。

これじゃあ、今までと変わらないじゃないか?」


「アホデューカ・・・俺達は所詮機械だ。人間にはなれん。

もし最初から機械だったら、こうも人間を意識することはなかった。

人間の記憶を持たない新機種が羨ましいよ」


「人の記憶が、機械の心を苦しめるなんて、あの頃は考えもしなかった」


ソフィーは、呟くように言った。




つづく



いつも読んで頂き、ありがとうございます。O(≧∇≦)O イエイ!!

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