2章 退化する世界の中で
1話 生の側にある快楽
大昔、アンドロイド達は惑星を覆うネットワークによって、繋がっていた。
しかし、人類滅亡から100年後を境に、ネット内テロが頻発しだした。
直接、繋がっていたアンドロイド達の思考回路は、暴走を繰り返し、ネット外のリアルな世界も大混乱をきたした。
惑星ネットワークから隔離された記憶図書館も襲撃され、多くの記憶が永遠に失われた。
政府はそれを口実に制限を徐々に広げ、今では原始的ともいえる無線機器を使って通信を行っている。
・・・と言うのが、惑星政府の公式見解だが、
噂では、特権階級のみが使用を許されている、ネットワークが存在するらしい。
そこでは、あらゆる快楽が揃っていると言う。
あらゆる快楽・・・ソフィーの思考回路にその光景が、一瞬フラッシュバックした。
ソフィーはにやけると、第一ゲートに、粉々に転がっている警備兵の記憶装置の破片を踏み潰して、第一ゲートを突破した。
政府所属の警備兵の記憶装置を破壊したとしても、政府が管理している記憶図書館で、再生可能な彼らの記憶は、一時的な記憶が失われるに過ぎない。
記憶装置の破壊。
ソフィーたち機械に取って、それは記憶と言う情報の喪失に過ぎず、人類が『死』と読んでいた概念とは違うのかも知れない。
再び思考回路上でフラッシュバックが起こりソフィーは、デューカの機銃掃射の爆音を聞きながらも、呟いた。
「あらゆる快楽・・・人だった時の快楽か?」
デューカの機銃の前方に、黒い装甲に身を包んだアローン兵の姿が見えた。我に返ったソフィーは叫んだ。
「デューカ撃つな!アローン兵は味方だ。」
デューカの機銃は止むことが無く、仕方なくソフィーはデューカを蹴飛ばして止めさせた。
「お前!俺も見方だぞ!」
「味方なら命令を聞け」
デューカの機銃の音が止まると、ホールは一斉に静まり返った。
前方にいる、黒い装甲に身を包んだアローン兵は微動だにしなかった。
「こいつらプログラムいかれちまったんじゃねえの?」
人工知能を搭載していない黒い装甲に身を包んだアローン兵の目は、何の表情も示さず、ただのレンズに過ぎなかった。
ソフィーはそのただのレンズに過ぎないアローン兵の目とは対照的な、人類に似た生命体の目の輝きを思い出した。
「生きてる・・・か」
ソフィーは生の側にある快楽を思った。
つづく((((( ( (ヽ(;^0^)/
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