第23話 ミリーの部隊

翌日 

隠れ家から数キロ離れた草原

赤木

クラン大佐の命令で複数のチームに分かれ、それぞれ過激派達の他のアジトを探す。

クラン大佐達第二部隊、バラターの冒険者グループ、佐々木兵長の冒険者グループ、そして俺達でそれぞれの方向に向かって過激派達のアジトを探す。

朝早くに出発し、今は数キロ離れた草原地帯を歩いている。

八月の真夏日、暑いが涼しい風のおかげでカバー出来ていた。

皆の戦闘服は半袖だ。暑いし、涼しい風を肌で感じる面積が大きくなるからな。

だが、涼しい風があっても暑いものは暑い。

皆時々水分をとりながら歩いている。

「暑ぃ。マジで暑くねぇか?」

「この世界の夏は暑く長いぞ。まだ八月じゃねぇか」

「マスター、暑いです」

「俺も暑いけど、我慢だ」

汗が止まらねえ。マジで暑い。

だがそれでも仕事があるんだ。

我慢して、仕事をこなそう。

歩いて一時間、何度か建物を見つけたが、全てハズレで、暑さに耐えながら歩いていると、小さな廃れた酒場を見つけた。

窓ガラスが無く、年季が入っていた。

「調べよう」

「了解」

調べようと酒場に近づく。

セレナは少し離れた場所で待機し、他の五人で酒場の中に入る。

すると、

「上にいる人、出て来なさい!」

セレナが突然叫んだ。

「どうした!」

「プリスキン、ボブスキー。セレナの所に」

プリスキンとボブスキーを向かわせる。

何故そうするか?理由は一つ。

「カウンターに隠れている奴、出て来い」

たくさんの酒が置かれているはずの棚の近くのカウンターに気配を感じた。

「出て来なさい!」

五月が持っているステアーAUGをカウンターに構える。

過激派のゲリラか?どちらにしても捕まえて、情報を聞き出そう。

と思っていると、

「大丈夫だ!赤木、五月!銃を下ろせ!」

外で警戒していたプリスキンが俺達に言った。

「敵じゃないのか?」

「そうだ!だから銃を下ろせ!」

何だか分からないが、とりあえずプリスキンの指示に従い、銃を下げた。

ボブスキーが中に入って来た。

「銃を下ろさせた理由は?」

「上に王国の部隊がいたんだ。事情を話したらすぐ理解してくれたよ」

「どこの部隊だ?」

「今から降りて、俺達に会うらしい」

セレナとボブスキーも酒場に入って来た。

「来たか。部隊のメンバーはどんな奴らだ?」

「その前に出て来なさい、隠れている人」

五月に言われて仕方がないと思ったのか、観念してカウンターから出て来た。

米軍正式のマルチカム迷彩服にデザート迷彩のアーマーを着込んだ男が現れた。

顔は目出し帽とサングラスで隠し、軍帽をかぶっている。

左腕にはウェアデルコンピューターを付けている。

手には正式採用されなかったXM8 5.56ミリアサルトライフル。

色はデザート。

ドットサイトにマズルブレーキを装着している。

腰にはP226自動拳銃。

「…………」

顔を隠しているから表情は分からないが、俺達を警戒しているようだ。

「おいおい。そんなに警戒するなよ。俺達は冒険者だぞ」

「…………」

なんか喋ってくれよ。気まずいじゃねぇか。

「ジョニー。安心して。彼らは敵じゃないわ」

店内の裏口から二人の男女が現れた。

青髪でグリーンアイの少女と黒髪の少年。

歳は俺とセレナと同じぐらいだった。

青髪の少女は都市型迷彩のTシャツにショートパンツ、45ACP弾のイヤリングを付けている。

服の上に緑のアーマーを着込んでいる。

手にはソップモッドM4。

ライフルには四倍スコープにフォアグリップ、コンベンセイターを装着している。

腰には見たことが無い彼女専用の拳銃が収まっている。

黒髪の少年は白のYシャツに黒のズボン。

Yシャツの上には黒のコンバットアーマーを着込んでいた。

手にはHK416Dアサルトライフル。

ホロサイトにレーザー、特殊ストックを装着している。

腰には同じHK社のUSP.45。

「隊長、こいつらは?」

「例の転生者がいる冒険者グループよ」

「そうですか!これは失礼を!」

ジョニーと呼ばれた兵士が俺達に謝罪する。

「いや、俺達は別に気にしていないから」

「そう。ありがとうね」

「それで、名前と所属は?」

「そうね。紹介が遅れたわね。私はミリー=スカーレット。元魔法遊撃団で今はフリーの冒険者をやっているわ」

スカーレットだって?

「もしかして、ゼロの娘か?」

「お父さんを呼び捨てとは、聞いた通りね」

「ボスの娘ですか!」

プリスキンとボブスキーが敬礼する。

「良いよ。別に敬礼は要らないわ。直りなさい」

二人は敬礼を解いた。

「僕はケン=シーメンス。僕も元魔法遊撃団です。よろしく」

「お前はもしかしてレギーの息子か?」

「はい。そうです」

こっちはレギーの息子か。

父親とは違って大人しそうだな。

「で、こっちの兵士は?」

「ああ。彼はジョニー。うちの新入りよ。中等銃士学院を次席卒業した見習いよ」

「よろしく」

俺はジョニーと握手を交わした。

「道理で動きが新米っぽいと思った」

「ふふふ。ジョニー、頑張れ」

「ハァ……」

苦労してそうな新入りだな。

「三人だけ?」

「ええ。そうよ。軍からの依頼で私達も調査に乗り出したの。数週間前から調査しているから、情報があるわ」

皆で酒場のテーブルの一つに集まる。

ミリーは机にその情報の紙を出す。

「神聖教の過激派は、主に殺害派のメンバーで構成されているわ。まず一番下に民間人などで構成されたゲリラ部隊、その上が過激派達の要となる私兵部隊よ」

「私兵部隊?」

「別名ブラックソルジャー。過激派達の戦闘員よ。一番下の戦闘用のバイクヘルメットの戦闘員、その上のコンバットヘルメットの戦闘員、ガスマスクの戦闘員、そして一番上の防弾装備の戦闘員で構成されているわ」

「そいつらが黒幕と繫がっているって事か?」

「ええ。実際ゲリラはブラックソルジャーの犬よ。使い捨てのゲリラだから、実際そんなに仕事をしていないわ」

「つまり、昨日俺達を襲ったのは……」

「それはブラックソルジャーとは別の部隊のハンター。強盗を主な任務としているゲリラ以上ブラックソルジャー以下の盗賊です」

レギーの息子、ケンが答えた。

「盗賊にしては武装が良かったが。ラプアマグナムの狙撃銃を持っていたぞ」

「銃は世界的に出回っているのよ。即席の武器商人が簡単に売れる程にね」

「これじゃあ、殺害派の神聖教そのものが敵じゃないか」

こんなに深い階級で構成されているとは、しかもハンターに私兵部隊。

根が深いな。

「ええ。彼らの戦闘員とハンターは軍と戦うだけの訓練を受けているわ。素人ではないわよ」

「用心しておこう」

特に根が深い私兵部隊。

軍事訓練を受けているから動きが良いはずだ。

「それで、私達はどうすれば……」

「ここから東に少し歩いた所に軍病院の廃墟があるわ。戦争時に負傷兵を治す為に大きく造られたわ」

「しかし、神聖教の武装蜂起で軍病院は破棄、最近まで神聖教の過激派がアジトとして使っていた事が分かったんだ」

「それで私達はそこに向かおうしていたけど、人手が増えたのは良いわね。一緒に来てもらえる?クランお兄ちゃんには言っとくから」

「どうしますか、マスター?」

「面白い。ついて行く」

「助かるわ。ではその方向で」







11:23

酒場から歩いて四十分、ボスの娘のミリー達と行動していると、言っていた軍病院を発見した。

病院の周りは塀で囲まれ、病院はとても大きく、八階建ての二つの棟に分かれている建物だった。

開きっぱの門をくぐり、病院の広い中庭を歩く、人気は無いが、最近まで誰かいた形跡があった。

過激派達のアジトだったに違いない。

そんな中庭を抜け、病院のエントランスホールに入る。

少し長い廊下を抜けると吹き抜けのロビーが広がっていた。

やはり人気がない。過激派もこの軍病院を放棄したようだ。

「あー、皆聞いて」

先導していたミリーが後ろを振り向いて話した。

「思ったよりここの病院、結構大きいや。そこでツーマンペアで手分けして探索しよっか。ボブスキーとプリスキン、私とケン、セレナと五月、赤木とジョニーでそれぞれ軍病院の中を探索するわよ」

「隊長、こいつと……ですか?」

ジョニーが少し不満そうな声でミリーに異議を唱えた。

「変えてもらえませんか?」

「ム、リ。我慢して」

「しかし……」

「うだうだ言わないの。ちゃんと命令に従って」

「……はあ、了解しました」

仕方なさそうにジョニーは抗議を諦めた。

「それじゃあ行動開始~!」

ミリーの景気の良い号令で、軍病院の中の探索を始めた。





軍病院 七階

俺とジョニーは病院の七階から探索し、病室を一つ一つ調べている。

しかしこれといった形跡は見つからなかった。

「ジョニー、そっちはどうだ?」

「……こっちも見つからない」

まだ不満そうだな。

しょうがない。少し話すか。

「ジョニー」

「何だ?」

「探索しながらで良い。少し話そう」

「…………」

「ジョニー、出身はセベラル王国か?」

「ああ」

「中等銃士学院を卒業してミリーのチームに入ったんだよな?」

「ああ。そうだ」

「次席で卒業か。優秀な学院生だったんだな」

「そうだ。約千人の銃士学院生で次席を取ったんだ。苦労はしたけど、親に自慢が出来た」

「ほう。そうか」

「それで卒業した後、隊長にスカウトされて今に至る」

「何でミリーは首席をスカウトしなかったんだ?」

「それは知らない。隊長も言ってくれなかった」

「ミリーの部隊に入ってどのぐらいだ?」

「二カ月だ」

「どうだ?あの二人を見て」

「正直、凄いと思った。魔人を討伐した英雄と共に出来るなんて夢みたいだと思った。俺の憧れの隊長と副隊長だ」

そういえば、魔人を討伐して国から英雄扱いされたっけ。

そりゃあ王国出身のジョニーが憧れる訳だ。

「ところであんた、出身は?もしかして日本か?」

「よく分かったな」

「どこだ?」

「新宿だ」

「東京か!それは凄い」

「そうか?」

「隊長達が言っていた、アキハバラという都市がある町だろ?」

「アキハバラって、秋葉の事か?」

「そうだ!あそこはどんなところだ?教えてくれ!」

「あそこは…………」

俺は病院の七階と八階を探索しながら秋葉原の魅力をジョニーに伝えた。

ジョニーは嬉しそうに、真剣に俺の話を聞いてくれた。

ギスギスした雰囲気は消えたみたいだ。

良かった。仲間とのコミュニケーションは大切だな。やっぱり。

「いい話を聞けた。また後で秋葉原について教えてくれ」

「ああ。っと屋上か」

気がつくともう屋上の階段を上り、屋上への扉に着いていた。

「開けるぞ」

屋上の扉を開け、外に出る。

そこにはちょっとした大きさの木箱があちこち置かれていた。

木箱の中身を調べると、中は空だったが、武器が入っていたようだ。

「これは……報告しよう」

俺は無線でミリーに報告する。

『やっぱり、こっちも奴らのアジトの情報があったわ。場所は王国の北にあるヘイル帝国だったわ』

「ヘイル帝国?」

『ちょっとうちの国とトラブった帝国よ。そこの神聖教の信者は全員殺害派よ』

「なるほど、怪しい」

『そこの神聖教のアジトがあるって事は……また何か企んでいるわね。まったく、帝国はいろいろと問題を起こすねえ』

「他も同じか?」

『ええ。情報収集は充分よ。離脱して、クランお兄ちゃんの所に向かいましょう。今から無線を……』

『皆!聞いて!』

どうした?

セレナからの無線が入った。

『病院の複数の場所から魔力を検知!これは……』

すると、屋上の扉の近くに黒い球体が現れた。

「へ?何だ?」

「ジョニー、隠れろ」

近くの木箱に隠れる。

一体何だあれは?ブラックホールみたいな球体だが。

『空間魔法よ。誰かが別の場所からこっちにゲートを繋げたわよ』

「誰が?」

『多分……あいつらよ』

すると、空間魔法のブラックホールから十人の藍色の戦闘服を着て、防弾フェイスバイザーをかぶった戦闘員が現れた。

ちゃんと丁寧にアーマーを着込んでいる。

手には様々なタイプのMP5サブマシンガン。

「あいつらは?」

『ブラックソルジャーの手下よ。戦闘服には数個の付与がされているわ。って私達の所に来たわね。一階にいるけど、ロビーを押さえられたわ』

『こちらプリスキン。五階にいるが、ヘルメットのブラックソルジャーが現れた。交戦の許可を』

『マスター!ブラックホールから人が何人も出て来ました!』

『赤木君。五月と一緒に交戦するよ』

セレナ達の所にもブラックソルジャー達が現れたのか。

「ミリー、戦っても良いよな?」

『ええ。各員、ブラックソルジャーとの交戦を許可する。一階のロビーで合流しよう』

『了解!』

「ラジャー。交戦する」

持っているM4A1のグリップをを握る。

「おいおい。まさか」

「どうだ?一緒に突破しようぜ」

「……ああ。後で秋葉原の話をする為にな」

ジョニーは持っているXM8を握る。

「あいつら、それぞれ展開して探しているな」

防弾フェイスバイザーの戦闘員達は左右に広がり、MP5サブマシンガンを構えながら近づいている。

「どうするつもりだ?」

「決まってるさ」

木箱にM4A1を置き、一番前の戦闘員に向ける。

「皆殺しだ!」

引き金を引き、フルオートでM4A1を撃った。

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