第22話 普通じゃない赤木

2018 6 22 12:28

東京 大東第一小学校

赤木 小学五年生

ああ。面倒くせぇ。どうして生徒指導室にいるんだ?

思い出せ。確か……そうだ。昼休み中にクラスのガキ大将的存在の男が、クラスの女子に嫌がらせしていたから、忠告したんだ。

そしたら、そのガキ大将が俺が気に入らないとか何とか言って俺に殴ってきて、調子に乗って何度も殴るから、ムカついて黒板にガキ大将の頭を三回強くぶつけて、低音で警告して、大人しくさせたら先生が昼休みに生徒指導室に来いと言われたんだっけ。

ハァ~。面倒くさ。マジで怠い。

生徒指導室の中には俺とガキ大将がいるが、ガキ大将は俺に怯えて話しもしねえ。

ふん。威勢だけは一人前だったな。

パイプ椅子に座り、折りたたみ式の机に体を倒して生徒指導の先生が来るのを待っていた。

「おい」

俺はもう一度ガキ大将と話すが、

「ヒィ!」

ビビってそれっきり顔をこっちに向かなくなった。

おいおい昼休みの強気はどこにいったんだよ。火星まで飛んでったのか?

まったく張りのねえ奴だ。

「待たせたな」

ドアから生徒指導の先生が入って来た。

赤いジャージにスポーツ刈りの体育の先生、松茂がドアから入り、前のパイプ椅子に座って、肘を机に付いた。

「それで……赤木。お前はガキ大将のーーを黒板に三回もぶつけたんだな」

「ああ。そうだ」

「理由は?」

「クラスの女子に嫌がらせをしていたから」

「それだけか?」

「それだけ?松茂、お前は馬鹿か?何度も問題行為を繰り返している問題児だぞ。知っているだろ。こいつがどれだけ皆に迷惑をかけているのか」

「うるさい。俺に口答えするな」

チッ。マジで使えない。

「それに、むしろ黒板にぶつけてよくたんこぶだけで済んだな。赤木、加減したのか?」

「こいつに怪我でもしてみろ。過保護の馬鹿親が騒ぐ」

「…………」

相変わらずこのデブだんまりだな。

「まあ事情はクラスの皆から聞いた。悪いのはこいつなのは分かる」

松茂はだんまりのガキ大将に指を指す。

「だかな、それよりもお前の行動が少し過激だと思う」

「あ?」

「確かに成績も良く、運動神経が良いお前がクラスのガキ大将を抑えたいのは分かる。だかな、その度にトラブルを起こすのは止めてくれ。皆に迷惑だ」

「は?何言ってるんだ?」

「?」

「皆はむしろ感謝している。俺がイイコトをする度に皆が感謝しているんだ。だから、俺は止めない」

「赤木。先生の言うことを聞け」

「は?変態の言うことを聞けと?やだね」

「何だと!」

松茂は机を強く叩いた。

「あれ?どうしたんだ?何か俺、マズい事、言ったか?」

「お前……根も葉もない事を言うな!」

「この学校の女子更衣室やトイレに隠しカメラを設置されているの、知っているからな。松茂がパソコンで毎日確認している事もな」

松茂は図星なのか、汗がどんどん出てきた。

「な…………何で……」

「何で知っているか?お前の設置する位置なんかすぐに分かる。素人以上プロ以下の設置場所だがな」

この情報はクラスの女子が教えてくれた。

ある時から更衣室で見られているような気配を感じるとクラスの女子が言ったから更衣室を調べたら、見事にビンゴ。

天井の真上に小型カメラ、服を入れるロッカーの下の隙間に隠しカメラが設置されていたのを見つけた。

これを見て、女子達は恐怖を感じ、俺は落ち着くよう言った。

この情報が弾丸となる。カメラは壊さず、そのままにしろ。明日に何とかすると言ってな。

「な……」

「松茂。これは教師としてイケナイ事だなあ。俺が教育委員会にバラそうかな~?」

「な、教育委員会!?」

教育委員会と聞いて青ざめる松茂。

「俺の親父の知り合いが教育委員会の人間でよ。良く俺も同席していたんだ。困った事があったら、私に言いなさいと優しく言ってくれたよ」

「た、頼む!どうか、この事を言わないでくれ!」

深く頭を下げる松茂。

これが変態の体育教師の松茂の謝罪か。

ハッ!鼻で笑っちゃうわ。

「うんうん。気持ちは分かるぞ。あんた、年下の奥さんと高校生の娘がいるもんな。隠して欲しいと懇願する気持ちは分かる」

「じゃあ…………」

「だかな」

俺は席を立ち、松茂を見下ろす。

「俺は犯罪者を見逃す気は毛頭ない。この事は親と教育委員会、クラス中にバラす。あ、あんたの家族にもバラすから安心してくれ」

「こ……この野郎!!」

松茂が掴み掛かろうとするが、ドアが勢い良く開かれ、教頭と他の先生、クラスの女子が現れた。

「松茂先生!これは一体どういう事です!?生徒に殴り掛かろうとするなんて……」

「いや、これは……」

「黙れ!お前の話は聞きたくもない!すぐに校長室に連れて行く。そこでゆっくり話そうではないか!」

普段は優しい教頭が鬼のような顔になり、松茂を一喝していた。

教頭は松茂のジャージの襟を掴み、校長室へと運ばれた。

「待ってください!これは何かの間違いで……」

と最後まで言っていた。

松茂と教頭が消え、俺とガキ大将はすぐに解放した。

その後は先生達の前でお互いに謝罪し、反省した。

特にガキ大将はペコペコ頭を下げていたのは笑えた。

笑いを抑えるのはなかなかキツかったけど。

そしてガキ大将との問題もチャラになり、先生を呼んでくれたクラスの女子と下校した。

「サンキュー、お前ら。先生だけじゃなくて教頭まで連れて来るとはな」

「偶然、先生が呼んでくれたの。すぐに理解してくれて来てくれたの」

「そうか。松茂はこれで学校を追い出されるだろう。カメラも俺が撤去しておいたし、この事は教育委員会の株を上げられる。教育委員会は今、力を上げているからな」

「松茂、いなくなるの!?」

「多分な」

『やったー!!』

女子達が喜び合う。変態教師がいなくなるのが嬉しいのだろう。

「赤木君。約束の……」

「渋谷パフェだろ?約束通り、皆に奢るよ」

「イェ~イ!赤木君、太っ腹!」

「まあ、今は金があるからな。どうせだ、タピオカフロートも買おう」

『賛成~!』

こうして俺は女子達にパフェとタピオカフロートを奢り、皆と別れ、家に帰るのだった。


これが小学五年生の俺だ。極めた技術、なぜがスペックの良い脳、更に親のコネや脅迫用のネタ。

それらをすべて持ち合わせ、学校の人気者になったんだ。

顔は俺視点では中の下、皆は上の上と絶賛するイケメンだった。

男子からは尊敬の目で、女子からは恋愛の目で見られていた。

上級生も下級生も同じだ。

だが、俺は皆にチヤホヤされて天狗になる馬鹿では無い。

口は悪いが、先生の手伝いやクラスの掃除、ボランティア活動にも参加して、周りからの評価を良くした。

地域の住民からも俺は大人みたいな男だと噂され、よく地域の住民に話し掛けられる。

面倒だが、評価を高くする為だ。仕方がない。

そんな俺だが、死んだ親父の弟の家に住んでいる。

その家に辿り着き、玄関の鍵を開け、ドアを開ける。

「ただいま」

「お帰りなさい」

「おお。お帰り」

家の廊下に親父と母さんがいた。

親父、義理の父親の片桐康人。

三十代後半のサラリーマン。

親父の弟で、俺を引き取ってくれたしっかりとした親父だ。

もう一人は親父の妻の片桐陽菜。

同じ三十代後半の有名会社のアニメーター。

優しく笑顔が絶えない母さんで、俺が唯一頭が上がらない人だ。

よく俺が欲しいグッズを買ってくれる。

「遅かったな。何かあったのか?」

「一人の変態教師を追い出した以外は特に問題は無い」

「いや、それは大ありだろ」

「とにかくその話は後だ。上で勉強してくる」

俺は二階に上がり、自分の部屋を開け、荷物を下ろす。

そして夕食まで勉強&ゲーム進行だ。

ゲームはもちろん「ガンズオブアドベンチャー」だ。

デイリーミッションをクリアさせ、ノルマを達成する。

その後は夕食を食べて、ゲームの続きだ。

よっしゃ、頑張るぞ!







0:42

クラン大佐

「一通り話したら、寝ちまったな」

「楽しそうに話していたね」

「ああ。隣の女も一緒に寝ちまっているな」

「スヤスヤですな~」

話を聞き終わった俺達は司令部に定時連絡し、しばらく寛いでいた。

プリスキンとボブスキーは見張りの交代で部屋を後にし、冒険者達もそれぞれの部屋に戻った。

部下達も武器の点検などで今はいない。

俺とモナカとフランだけだった。

「それにしても、赤木は報告だと普通に暮らしていたんじゃあないのか?」

「高校の時に普通に戻したらしいよ。理由は分からないけど」

「すごい恵まれているねえ~。モナカちゃん、凄く羨ましいよ~」

「ああ…………」

しかし、赤木の過去を聞くと、疑問が湧く。

武術をかなり会得しているらしいが、普通はあり得ない。

せいぜい二つが限界だ。

あと、赤木の義理の親が気になる。

赤木の話を聞く限り、かなりの人脈があるみたいだ。

片桐という家族が怪しい。そんなパイプのある人がいるのか?

疑問が湧き出る程出てくる。

赤木という男が気になる。

というより、赤木という人間が。

「…………」

「どした~?何か考え事?」

「どうしたの?先輩」

考え事をしていると、モナカとフランが心配そうに声を掛けた。

「何でもない。それより、明日は分かれて行動するぞ」

「ほうほう。理由は?」

「まず過激派達の数が把握出来ていない事。大人数で固まって行動すると、また襲撃されるからだ」

「襲撃はしょうがないとしても、過激派の数も底が知れない」

「そうだ。だから明日はその方向で行くぞ」

「分かった」

「了解~」

モナカとフランに話をした後、一緒にソファーで寝ている赤木達を見る。

赤木……お前は何者だ?

普通に生活していると言っていたようだが、過去の話を聞いていると、怪しく感じる。

それに…………

お前の中にもう一人いるような気がする。

話していると、そんな感じがした。多分気のせいだろう。

…………気のせいだと良いが。

俺は心の中でそう呟いた。

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