第13話 ジョーカー

「すみ……ません。遅れてしまい……ました」

その黒髪の女性は不安げに店員のおっさんに言った。

「いや、時間通りだ。銃は出来ている。見るか?」

「はい……お願いします。……ところで……その人は……?」

「初めてここに来たお客さんだ。お前の頼んだ拳銃を見たいらしい」

「……なるほど。分かりました……」

黒髪の女性は俺を見た後、店員に言った。

「ちょっと待ってろ。持ってくる」

店員は店の裏のドアを開け、中に入っていった。

残された俺と黒髪の女性はしばらく沈黙し、それに耐えられなかった俺が話し掛けた。

「なあ」

「はい……?」

「俺は三日月赤木だ。あんたは?」

「……ジョーカー……ですよ、転生者さん」

「俺を知っているって事は軍人か?」

「いえ……特殊部隊の……隊長です……」

「特殊部隊か!エリートだな」

「まあ……そんなところです……」

黒髪の女性は少し照れくさい顔をした。

「しかも部隊の隊長か。そんな見た目だとそうとは思えないな」

「よく……言われます……私を知っている人は……そうとは言いませんが……」

「知っている人?」

「ボス……と言えば……分かりますか?」

「もしかして、ゼロ直属の部隊か?」

「ボスを呼び捨てにするのは……少ないですよ」

「俺は対等がモットーだ。上下関係なんてクソ喰らえだ」

「ふふふ……その考え方……嫌いではありませんよ……」

ジョーカーという名前の女性が微笑むと、裏口から長方形のケースを持って来た。

「待たせたな。持ってきたぞ」

「見せてください」

おっさんが拳銃が並べられているショーケースの上にケースを置き、ケースのロックを外し、ケースを開ける。

ジョーカーがその拳銃を取る。

「457マグナム弾を使う大型自動拳銃だ。かなり重いが大丈夫か?」

軽々と拳銃を持ち、マガジンを抜き、マガジンを見るジョーカー。

どんな筋肉しているんだ?見た目華奢な体だけど。

「大丈夫です……装填数は……?」

「十発。アタッチメントにドットサイト、マズルにブレーキとサプレッサーが付けられる。これはオマケしとくよ」

「ありがとう……ございます」

ジョーカーはマガジンを装填し、スライドを引き、前に構える。

セーフティフラッグを指で動かす。

「良いですね……頼んで良かったです」

「それは嬉しいよ」

「あ、約束のお金です」

ジョーカーが店員にお金を支払う。

「毎度あり!ありがとよ」

「いえ……」

「それにしても、そんなの、特殊部隊で使うか?」

特殊部隊は基本室内などの接近戦が主だが、火力が高く、反動が大きい拳銃はあまり役に立たないと思うが……

「これは……私のサブです。いざっていう時の……」

「待ってくれ。特殊部隊だって?お嬢さん、お名前は?」

店員が特殊部隊って単語に反応し、ジョーカーに尋ねる。

その時、入り口から黒の戦闘服を着た白髪の少女と同じく黒の戦闘服を着て、目出し帽に防弾ヘルメットを付けた男三人が入店し、俺達の方に来た。

「隊長。そろそろ訓練ですよ」

「あ……分かりました。では……向かいましょう」

拳銃をケースにしまい、立ち去ろうとする。

「ジョーカー。お前……何者だ?」

「は!?ジョーカー!?」

「……王国精鋭部隊第九部隊隊長、ジョーカー……またいつかお会いしましょう……赤木さん」

そう言い、現れた四人と共に店内を出た。

「第九部隊?アミリアと似たようなもんか」

「第九部隊か……それはまたレアな客がきたもんだ」

店員が驚いた顔をしながら呟く。

「王国精鋭部隊で最も王族が信頼する最強の特殊部隊だ。魔法も駆使していて、どんな任務も必ず成功させる。その部隊の隊長の拳銃を造った訳か……」

「誰も素顔を知らなかったのか?」

「当然だ。普段はガスマスクに防弾ヘルメットだ。女っていう噂は聞いていたが、美人なのは予想していなかった」

……あれが特殊部隊のリーダーか。

能ある鷹は爪を隠すってやつか。相当な実力者だとは思わなかった。

ゼロの部隊はあんなのがころころいるのか?

恐ろしいぜ。







シェアハウス 自室

家に戻り、夕食を食って、風呂に入って、自分の部屋のベッドで寝転がっていた。

特にやることも考えていない。明日は別のクエストを受けるつもりだ。

そこでじゃんじゃん金を稼ぎ、Dランクに昇格させるつもりだ。

Dに上がれば、徐々に難易度の高いクエストを受ける事が出来る。

そうすればその分、報酬も増える。

楽しみだ。

すると、ドアがノックされた。

ドアに近づき、ドアを開けると、セレナが立っていた。

「セレナか。どうした?」

「赤木君。今度またデートしない?」

「あの時のやり直しか?」

「そう。どうかな?」

「そうだな……冒険者ランクが上がってひと段落したら、デートするか」

「分かった。そうしよ。それと……」

「何だ?」

「熊と戦ったって……ホント?」

「ボブスキーから聞いたのか?」

「というか、あっちから教えてくれた」

あいつ……

「本当なの?」

「ああ」

「よく熊と戦ったね。怖くなかった」

「最初は怖かったが、後から冷静さを取り戻したよ」

「何で?」

「さあな。それは俺にも分からん」

「……」

「ま、これから知っていくつもりだ」

「そう」

あ。そうだ。

「セレナ」

「何?」

「もし、何かあってもお前を守る。あの時の約束通りにな」

「……!」

「だから……お前も俺を守ってくれよ」

セレナは顔を赤くしてしっかり肯定してくれた。

「うん……分かったよ」

「顔が赤いぞ。明日に響かないようにしろよ、おやすみ」

「おやすみ」

そしてドアを閉めた。

よし、俺もあいつに頼ってばかりじゃなく、俺自身も強くしよう。

そう決意し、ベッドで就寝した。







4044 7 23 1:47

北町 貴族街

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「クソ。いやに警察が巡回しているな」

前回赤木とセレナの強奪に失敗し、追われる身となった男は、生き残った私兵と貴族街のセーフハウスで隠れていた。

建物の三階から、警察車両が通るのを何回も見かける。

警戒態勢になっているのだ。

もしかして、バレたのか?

男はそう思った。

この貴族街に警察車両が多く通る筈がない。

きっとゼロが指示して、ここを警戒するよう言ったのだろう。

男はそう予想した。

「クソ。さすがに警戒されたか。このままだと本部に行けないな」

実はもう一人、ソファーに座っている男がいる。

筋肉質の男で、ワイルドヘアにサングラスを掛けた男に雇われた傭兵である。

傭兵は無口でうろちょろしている男に付き合っていた。

その傭兵が口を開く。

「The capture operation failed and I was chosed.What do you want to do?(捕獲作戦が失敗し、追われる身となったな。これからどうする気だ?)」

「お前の言いたい事は分かる。待っていろ。もうすぐ本部から連絡が……」

すると、傭兵の携帯の着信が鳴り、傭兵が出る。

「Hello.………yeah……Roger that.」

傭兵が電話を切る。

「本部からか?なんて?」

傭兵が立ち上がり、右腰のホルスターから拳銃を抜き、スライドを引いて、男の肩を撃ち抜いた。

「ぐお!……お前……何を、」

男の頭を撃ち抜き、男は倒れた。

傭兵はすぐに部屋を出て、セーフハウスから去った。







翌日 8:52

セベラル王国軍基地

ゼロ

朝出勤すると、北町の貴族街で、射殺された男の遺体を発見したと報告を受けた。

肩に一発、頭に一発弾を喰らい、倒れているのを銃声を聞いた警官が発見したらしい。

撃った犯人は既にいなかったらしい。

男は赤木達の襲撃の首謀者の疑いがかけられている男だった。

北町にいることは分かっていたからマークしていたが、殺されるとはな。

証拠隠滅か……口封じか。

どちらにせよ、情報を持っていた男は死んだ。

一からやり直しだ。

そう思っていたが、捜査隊隊長のテットが面白い情報を俺に伝えた。

「ボス。北町の監視カメラに不審な男が映っていた。死亡時刻の数分後の映像で、明らか傭兵の男が現場近くの監視カメラに映っていた」

「その男は?」

「追跡したが、途中で見失った。これから近くの住民から聞き込みをするつもりだ」

「分かった。何かあれば知らせろ」

「了解」

テットは司令官室を去り、ゼロは事務作業を始めた。







4044 7 23 14:21

セベラル王国 東町

赤木

今日はセレナとデートしている。

え?なぜデートしているって?

決まっているだろ、ランクアップしたからだよ。

まさか二日目でランクアップするとは思わなかったけどな。

昨日のすばしっこい狼五匹か?それともハイエナか?又はライオンか?

まあ、それでランクアップしたけどな。

今は東町のファッション店で、セレナが服を見ている。

可愛らしい服を見ているが、それが何なのかよく分からない。

「赤木君!これ、可愛いかな?」

「うん。良いじゃねえか?」

時々俺に似合っているか見せて来るが、似合っているが、それ、何なの?

「やった!じゃあこれにしよ!」

しかも俺が良いって言った服にするのか。

セレナは上機嫌でその服を買い、俺達はとある噴水に一緒に座った。

「結局それにしたのか」

「だって、赤木が良いって言ったんだもん!選ぶに決まっているじゃん!」

そうか。嬉しいなら良かった。

それにしても、セレナの笑顔は本当に可愛いな。癒やされるぜ。

セレナの笑顔を眺め、前を見ていると、

「ん?」

この国の女子高校生らしい少女を尾行している顔がもうやっている男を見つけた。

ストーカーか?あ、声掛けた。

ストーカー男が少女に声を掛けていた。

嫌そうな顔しているなあ。あの少女。

男は……気にしていないどころか喜んでいる。変態か。

なんだかやばそうだな。

「どうしたの、赤木君?」

「ストーカーに困っている少女を助ける。一緒にやるか?」

「まあ、放ってはおけないからね」

二人でそのストーカーの男と困っている少女に接近した。

「ちょっといいですか?」

「あ?」

男が俺達を邪魔者を見る目で顔を向けた。

「何やらこの少女が困っているようだったから、声を掛けたんだ」

「た、助けてください!この人、私を連れて行こうとしたんです!断ったら、殺すぞと脅されて……」

「最低な奴だな、お前」

「うるせー。それより、どうするつもりだ?」

「とりあえず警察にポイ捨てする」

「あ?何だやる気か?」

男がナイフを出す。

「ひっ!」

少女がナイフを見て怯える。

「セレナ、その子を頼む」

「分かった」

少女をセレナに任せ、ストーカー男の前に立つ。

「お前正気か?ナイフを持っているんだぞ」

「かかってきな。そっちからやらせてやる」

ストーカー男を挑発。

「舐めんなよ!」

男がナイフを俺の腹に刺そうとする。

遅い!

蹴りで男の金的を攻撃し、悶えた男に回し蹴りで吹き飛ばした。

「おおおおおおお…………」

まだ股間のダメージが残っていやがる。

男に近づき、ナイフを奪って、はい制圧。

さて、警察にポイ捨てするか。

「その必要は……ありませんよ」

人混みからジョーカーが現れる。

しかも黒の戦闘服を着たジョーカーだった。

「その男は私が……届けます。この人は財務省の……人間ですので………」

「分かったよ。手間が省けて助かる」

「赤木君、この人は?」

「ジョーカーだ。前に武器屋で会った奴だよ」

「では……」

男を抱えた後、ジョーカーと男が地面に溶けるように消えた。

「これは……」

「影魔法よ。使える人が限られる魔法だけど、使える人がいるとは思わなかった」

「なんか魔法が使える部隊にいるって聞いたけど、本当みたいだな」

すると、女子高校生がお礼を言ってきた。

「助けてくださり、本当にありがとうございます!」

「気にするな。また困ったことがあったら呼べ。助けてやるよ」

「ありがとうございます!この恩は忘れません!」

深く頭を下げ、俺の手を握ってきた。

「学校で困っている奴がいたら、南町のシェアハウスの俺に会えと伝えろ、いいな?」

「分かりました!」

「赤木君、どうしてそこまで……」

「俺も……救いたいのさ。正義のヒーローみたいじゃないけどな」

前にいた世界でも同じ事をしてきた。

今回も同じだ。

困っている奴がいたら、助ける。

夜桜先生の好きな言葉だ。

俺もそれを引き継ごう。

尊敬する先生の為に……

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