第9話 邸宅襲撃

4044 7 14 20:55

セベラル王国 北町 貴族街

王国軍精鋭部隊第九部隊

「作戦開始まであと五分」

「皆さん……聞いてください。確認です。今回の任務は……捕獲派のゲリラのいる邸宅を襲撃し、ゲリラの制圧及び……情報収集です。ゲリラの排除は……許可されています」

『ベータ了解』

『チャーリー了解』

『デルタ了解』

第九部隊隊長のジョーカーが作戦の確認を無線で行い、隊員達に伝えた。

邸宅にいるゲリラは捕獲派の民間人で、ゼロの報告によると、捕獲派の貴族達に情報を送っていたという。

だが事態は急変。殺害派のゲリラが貴族街近くで警官二名を殺害、その後この邸宅近くに潜伏したのだった。

殺害派のゲリラは第二部隊が担当する事になり、第九部隊は予定通り捕獲派のゲリラを担当する。

各部隊三名に分け、第九部隊の隊長のいるアルファとデルタは邸宅の門でトラックに乗り、作戦開始時刻まで待機。

ブラボーとチャーリーは反対側の道路で待機。こちらも作戦開始時刻に行動開始。

挟み撃ちで邸宅を制圧するのだ。

「アルファ2、3。準備」

アルファの三人が銃のセーフティを解除し、コッキングを引いた。

第九部隊の服は黒の戦闘服で、防弾チョッキも黒。

防弾チョッキにはアサルトライフルのマガジン八個入ったマガジンポーチ。

右腰には各自拳銃を、左腰には拳銃のマガジンが入ったポーチを付けている。

アルファ1のジョーカーは持っているアサルトライフル、HK社のHK416C短縮アサルトライフルの排出部を少しだけ開け、弾が入っているかチェックする。

今回の作戦はなるべく隠密な作戦の為、全員銃にサプレッサーを付けている。

問題は無かった。

「隊長。作戦開始まであと二分」

「了解。全員……覆面を」

アルファ2、アルファ3は目出し帽を被り、ナイトビジョン付きヘルメットを付ける。

ジョーカーは多機能の赤レンズのガスマスクを被り、防弾ヘルメットを被る。

準備を完了させ、作戦開始時刻まで待つ。

そして、

『3、2、1、作戦開始』

ジョーカーが合図し、乗っていたトラックの後から出る。

ザーザーと雨が激しく降っている。

雷も時折鳴っている。

隠密作戦には最適な天気だ。

デルタもトラックから出て、アルファと合流し、邸宅の門に隠れた。

門は柵状で、情報通り鍵がかかっている。

「隊長」

ジョーカーは左腕のプロテクターからナイフを出し、

『バーナーナイフ』

魔力でナイフを高温度まで上昇させ、熱々のナイフで鍵ごと切り落とした。

『行くぞ』

マスクモードに入ったジョーカーがナイフを冷やしてしまい、部下に指示して、邸宅庭に侵入した。

邸宅はリビングは電気が消えているが、二階からは何部屋か点いている。

アルファとデルタは予定通り、邸宅西側の二階から侵入するため、そこまで警戒しながら進んだ。

『こちらブラボー。配置に付いた』

『こちらチャーリー。配置に付いた』

ブラボーとチャーリーが裏口に配置出来たようだ。

『予定通りチャーリーは一階の制圧を、ブラボーはチャーリーと共に制圧後、一階はチャーリーに任せ、二階に上がれ』

『了解、隊長』

指示を聞いたブラボーとチャーリーはピッキングですぐにドアのロックを解除し、チャーリー2が先導に、慎重にライフルを構えながらドアを開ける。

一階のリビングは電気が消え、人気が無かった。

ブラボーとチャーリーはナイトビジョンに切り替え、リビングを制圧する。

特にリビングだけで他のドアは無く、すぐに一階のリビングを制圧した。

「こちらチャーリー、リビングを制圧」

「ブラボー、二階に上がります」

『了解。おい。脚立を』

一階を制圧した事を聞いたジョーカーはデルタ3に折りたたみ式脚立を用意させ、二階の窓に掛けさせる。

『私が見に行く。援護を』

他の隊員は邸宅の窓を警戒し、ジョーカーはアサルトライフルをスリングで肩に掛け、腰のP226を抜き、右手に拳銃を持ちながら脚立を登った。

ジョーカーは二階の窓に着き、中を見る。

二階の廊下には誰もいなく、代わりに二階から登って来たブラボーに会った。

ブラボー3が窓の鍵を開け、デルタは外の警戒をし、残りのアルファ2、アルファ3がジョーカーと共に中に入った。

ブラボーが先導し、アルファはその後ろに並ぶ。

並んだ事を確認したブラボー2が先導のブラボー1の肩を叩き、前に進む。

左に一つ、前に二つドアがあり、右手に階段があった。

まずは左の部屋の制圧だ。

ブラボー1がドアの右側に立ち、ブラボー2が左側に立つ。

その間、他の隊員は警戒。

ブラボー1がドアノブを回し、慎重に中に入る。

子供部屋のようだが、誰もいなかった。

『クリア』

部屋から出て、また列になり、今度は前方のの左のドアに立つ。

すると、ドアから声が聞こえた。

「いいか?我ら神聖教は神を信じ、神の為に戦うのだ。決して転生者や神の使い、聖女の為では無い」

五十代の男性の声。

「そもそも我らの教法を変えたのは大司教だ!大司教が彼らを崇め始め、遂にはほとんどの信者が大司教の方に付いてしまったのだ!長年続く神聖教の意義が変わってしまう!」

二十代の若者の男性の声。

「だが、彼らを殺すには勿体ない。捕まえて、我らに尽くすよう洗脳させ、神聖教のシンボルとして彼らを利用しよう」

三十代の女性の声。

中に三人いるようだ。

それも神聖教のゲリラが。

「中に三人」

『チェックしろ』

ブラボー2がドアノブをゆっくりひねり、ゆっくりドアを少しだけ開ける。

少し先の机に囲うように三人の男女が話し合っていた。

机の上にはAK二丁。

二十代の男性の手には既にAKが握られていた。

ブラボー1はアサルトライフルの銃口を三十代の男性の頭に合わせ、構えながら突入し、男性の頭を撃ち抜いた。

「マイク!この!」

二十代の男性が机のAKを持とうとするが、腕を撃ち抜かれ、最後に足を撃たれ、倒れた。

「みんな!イヤー!!」

三十代の女性は悲鳴をあげながらAKを持ち、ブラボー1を撃とうとした。

だがカバーに入ったブラボー2に六発セミオートで撃たれ、命を落とした。

他にドアは見当たらない。

「制圧した。二人KIA。一人生きている」

『情報を割らせろ。私達は他を制圧する』

「了解」

『こちらデルタ。倉庫で電源設備を確認』

『全員ナイトビジョンの用意。デルタ、電源を落とせ』

『了解』

数秒後、辺りは闇に包まれた。

『ナイトビジョン装備』

隊員全員がナイトビジョンを付けたり、切り替えたりした。

『聞き出せたか?』

「一言も喋りません」

『気絶させろ』

ブラボー1が銃床で男性の頭を叩き、気絶させる。

『アルファが先導する。ブラボーは二階確保後、二階で待機。チャーリー、地下室が無いか探せ。ブラボーはチャーリーが地下室を発見次第、合流し、調べろ』

「ブラボー、了解」

『チャーリー、了解』

『アルファ行くぞ。ブラボーは付いて来い』

ジョーカーが先導し、もう一個の部屋を調べる。

左右に一人ずつドアの横に立ち、アルファ3はアルファ2のサポートをするため、後ろに立っている。

ジョーカーがドアを開けようとした時、

「くらえ!」

ドアに大きな穴が空けられた。

ショットガン持ちが一人いるようだ。

『フラッシュバン』

アルファ2がフラッシュバンを持ち、ピンを抜き、レバーを外して、空けられた穴からフラッシュバンを投げた。

数秒後、ドアから眩しい閃光と轟音が起きた。

ジョーカーはドアを蹴破り、銃を構えて中に入る。

アルファ2とアルファ3も続く。

正面でフラッシュバンにやられたM37イサカ

ショットガン持ちの四十代後半の男性を射殺し、クローゼットから現れたAK持ちの男性を撃ち殺した。

ジョーカーは周囲を見渡す。

少し前に進むと、右にドアがあった。

ジョーカーはドアへと進み、ドアを蹴破った。

「動くな!この女の頭を吹き飛ばすぞ!」

「ウィル!止めて!」

中に二十代女性を人質にしている同じ二十代男性を見つけた。

男性の右手にはソートオフショットガンが握られ、女性の頭に向けていた。

すぐさまライフルを向ける。

『女を離せ』

「お前が銃を下ろせ!」

「ウィル!あなたが殺されちゃう!」

「うるせぇ!これしか方法はねぇよ!」

『最後の警告だ。女を離せ』

「断る!」

ジョーカーが銃を構えたまま右に移動し、騒ぎを聞いていたアルファ2がドアからアサルトライフルを構え、男の頭を吹き飛ばした。

「ウィル!そんな……」

人質の女性は死んだ男性に嘆いた後、

「よくもウィルを!」

男が持っていたソートオフショットガンを持ち、ジョーカー達に構えた。

だがジョーカー達は冷静にセミオートで女性を射殺した。

『クリア』

部屋を出て、三階が上がる。

慎重にライフルを構えながら、上に警戒しながら進む。

三階に到着し、階段近くのドアに配置する。

すると、銃声と共にドアからたくさんの銃弾が飛んできた。

ジョーカーはすぐにドアの右側に退避し、ドアに数発撃ち込む。

銃声が止み、アルファ2がドアを開ける。

トイレでUZIを手にした男性が座り込み、血を流して死んでいた。

「クリア」

確認後、二つ目のドアに向かう。

突然、二つ目のドアが開いた。

「死ねええ!」

飛び出した男がAKを連射し、ジョーカーは伏せたが、アルファ2が撃たれ、アルファ3がもたれかかったアルファ2に押され、後ろに倒れる。

ジョーカーは伏せた後、AKを連射する男をセミオート数発で射殺した。

すぐに立ち上がり、ジョーカーは後ろの仲間を確認する。

アルファ3は生きているが、アルファ2は上半身に弾を受け、絶命していた。

すると、アルファ2から黒い粒子が出て傷ついた銃創を治し、また撃たれたアーマーも服も修復された。

それを確認したジョーカーはアルファ2を蹴る。

『起きろ。任務は終わっていないぞ』

復活したアルファ2と巻き込まれたアルファ3が立ち上がり、また列になり、クリアリングを再開した。

第九部隊の隊員全員はこの世界に召喚された際、「デッドアライブ」という特殊能力を得た。

「デッドアライブ」は自身が深い傷を負った、又は死んだ時に発動し、体の傷だけではなく、身に付けている物も修復する能力である。

一見聞けばチートみたいな能力だが、傷の修復中は動けないという欠点がある。

しかも軽症の傷の場合は、能力は発動しない。

修復中は死んだように動かなくなって倒れ、一時的に仮死状態になる。

第九部隊はそれを利用し、時々修復中の味方を盾にする事がある。

修復中は撃たれても粒子が攻撃を防ぐのである。

飛び出した男が出て来た部屋を制圧し、もう一つの部屋は誰もいなかったので、アルファは最後の階を登る。

階段を登ると、前は壁になっていて、右にドアがあった。

アルファはそのドアに左右に配置する。

アルファ2がドアを開けようとするが、ドアノブが回らない。

タックルしてもビクともしない。

「開きません」

『任せろ』

ジョーカーが左腕のナイフを出し、バーナーナイフでドアの隙間からロックしている部分を焼き切る。

屋根裏は電気が点いているようだ。

アルファ2がドアを蹴破り、アルファが積み上げられている箱の壁沿いを進み、右に抜けると、赤ん坊を抱いている二十代女性とG29小型拳銃を構えている十代の少女がいた。

ジョーカーとアルファ3はアルファ2の左右に立ち、銃を構える。

「動くな」

「お願いこの子を撃たないで」

二十代女性が抱えている赤ん坊を撃たないでくれと懇願する。

『銃を捨てろ』

ジョーカーは少女に武器を捨てるよう警告する。

だが少女はG29小型拳銃をアルファに向けたまま後ろに下がり、奥の机に向かっていた。

『動くな』

ジョーカーがもう一度警告するが、少女は無視して後ろに下がる。

『最後のチャンスだ。止まって銃を捨てろ』

「メリー!彼らに従いなさい!殺されるわ!」

「黙ってお母さん!こいつらは神聖教の敵の手先!ここを爆破して、奴らを殺す!」

アルファは少女の話で後ろの机に爆弾の起爆スイッチがあることに気づき、セミオート数発で少女の銃を持っている腕と足に撃ち込む。

少女は後ろの机にもたれ、撃たれても離さなかったG29小型拳銃を構え、アルファ3に連射し、机の上の起爆スイッチと思われる装置を取ろうとする。

アルファ3はなされるがまま撃たれ、残りのアルファ2とジョーカーがアサルトライフルをセミオートで連射し、トドメを刺した。

女性が泣き叫び、赤ん坊も驚いて泣いてしまった。

「クリア」

『クリア』

全ての部屋を制圧し、銃を下げた。

数秒後、撃たれたアルファ3が復活し、立ち上がった。

「ようやくお目覚めか?」

「黙れ、アルファ2」

『二人はそこの女を見てろ。私は机と少女を調べる』

「了解」

「了解」

ジョーカーはガスマスクを外し、顔の横に付ける。

まずは少女を調べる。

金髪の少女で、ジョーカーとアルファ2によって撃たれ、腹に何発も撃たれた跡があった。

少女をグロックを取り、机に置く。

机の起爆スイッチを見た。

起爆スイッチは線で繫がり、机下の箱の大量の爆弾に繫がっていた。

「やっぱり……起爆スイッチが目的でしたか……」

ジョーカーは死んだ少女をしばらく見て、その後、二人の元に向かった。

「情報は……どうですか?」

「泣いていて吐き出せません。頃合を見て探ってみます」

「了解……です」

「隊長」

少女の死体を確認していたアルファ3が声をかける。

「どうしましたか?」

「少女の服のポケットから紙が……何かのメモのようです」

アルファ3から折りたたまれたメモを受け取る。

ジョーカーはメモを広げる。

「これは……誰かからの……作戦命令書ですね……この家の人は……監視員として……この家に潜伏していたようです……依頼した人から……報酬を貰って……生活していたようですね……」

「この家の奴らは神聖教の連中です。保護派と殺害派で分裂していたのは知っていましたが、捕獲派にも分裂していたとは……」

「この家の制圧は終わりです。速やかに……撤退しましょう」

そうアルファ3と話した時、積み上げられていた箱の手前の箱が開いた。

「娘の敵!」

五十代の男性がAKを構え、アルファ2を撃とうとした。

「!」

アルファ2がアサルトライフルで撃とうとする前にジョーカーが右腰のP226を抜き、男性を拳銃の速射で射殺した。

「が……」

男性はアルファを睨めつけながら倒れていった。

ジョーカーの顔は真顔だった。

「……」

ジョーカーは静かに拳銃をしまう。

「アルファ2、女性を連行してください。撤退……します」

こうして邸宅襲撃は味方の犠牲ゼロで終わり、ゲリラを制圧し、情報を手に入れたのだった。







「フゥ~……」

ジョーカーは一人ため息をついた。

邸宅には警察が入り、現場処理をやっていた。

任務を終えた第九部隊は邸宅近くの空き家で休んでいた。

第六部隊が気を利かせたから、有り難く休憩させてもらったのだ。

中は机四つの椅子六つで、作戦に参加した第九部隊の十二人は椅子に座り、休息をとっていた。

ジョーカーも椅子に座り、警官に渡された瓶の中の水を飲んでいた。

「…………」

ジョーカーは犠牲になった住民の事を思い出していた。

彼らは監視員として潜伏し、捕獲派に情報を流していた神聖教の信者の家族だった。

ほとんどが逃げるのではなく、戦う意思を持ち、第九部隊を攻撃したのだ。

信仰というのは恐ろしい。

神の為に子供も老人も銃を取り、戦うのだから。

「…………」

「ここで休んでいたか」

第六部隊の隊長、テットがここに入って来た。

「テットさん」

「ガスマスクを外すと、おどおどするな、お前は」

「す……すみません」

「いや、怒っていない。怒っていないから、俯くなよ」

「は、はい」

ジョーカーの普段はおどおどしている女性で、人見知りで内気な性格である。

任務以外では大人しい女性だが、ガスマスクを付け、戦闘服を着ると別人のようになる。

一種の多重人格障害で、戦闘服に変わった時に別の人格が現れるのだ。

「それで……何か分かりましたか?」

「まあな。邸宅の捜査中に二階の部屋にコレがあった」

テットは手に持っていた紙束を机に置く。

「別の捕獲派に送るつもりだった何かの報告書みたいだ。あともう一個あったみたいだが、それは既に送られたようだ」

ジョーカーが報告書の束を一つ一つ調べる。

「これは……捕獲派の兵隊の……作戦命令書みたいです…………なるほど……」

「何が書かれていた?」

「捕獲派の兵隊の一つ、グリーンソルジャー……通称GS師団の命令書です。どうやら……先に送られた命令書の……その後の指示が書かれています。内容は……赤木さんとセレナさんを捕まえた後、すぐに神聖教の教会に送るための指示です」

「あの転生者の二人か……という事はあの二人はGS師団に狙われているのか」

「そう……みたいです……どうしますか?」

「とりあえずもう少し洗ってみる。何か分かったら報告するよ」

「分かり……ました。お願いします」

テットが話を終え、外に出る。

(隊長、可愛い)

第九部隊の隊員達は話していたジョーカーを見て、素直にそう思った。

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