幕間 冒険者予備校生の双子冒険者
これは王城に再度呼び出されるまでの話
成人の儀を終えて、数日が過ぎた頃、何となく冒険者ギルドへと足を運んだ。
クランは順調に成長し、問題無く業務をこなしている。
立ち上げた以降は、ほとんど丸投げで何もしてない。
いや、何もしてないわけでは無いが、陣頭に立って何かをしていたわけでは無いし、初期の頃以外は、業務をほとんどしていないんだよね。
……あ、やっぱ何もしてねぇわ。
自分でに自分で言い訳して、軽く凹む俺。
落ち込んでいても仕方ないので、気分を変えて冒険者ギルドへ向かう。
クラン未所属の者もいる冒険者達は沢山いるので、今日もギルド内は賑やかであった。
時折「蹂躙者だ」「え、あれが?」「おまっ! 言い方!」「結構可愛いじゃない」「確か貴族だっけ?」「侯爵家の当主様だよ!」「玉の輿、玉の輿~」などと聞こえてくる。
声のした方へ振り向くと、サッと目を逸らす冒険者達。
俺、なんかしたかね?
周りを気にしても仕方ないと、頭の中を切り替え、依頼ボードの方へと歩いて行く。
……特にめぼしい依頼は無い。
最近、冒険者家業をしていなかったので、何かないかなぁと見に来たのだが、俺のランクに見合うものが無い。
他の冒険者の稼ぎの関係もあるので、あまり低ランクの依頼も受けれない。
となると、B以上の依頼になるのだが、何も残っていない。
平和なのは良いけど、仕事が無いのは勘弁して欲しい。
(さて、どうしようか?)
途方に暮れていると、一人の男性が声を掛けてきた。
「よう、暇なら少し手伝ってくれないか?」
「ギルマス? 何か、面白い仕事でもあるのか?」
「お前さんは、もう少し貴族的な言葉をだな」
「今の俺は、冒険者だから。冒険者の時くらい、好きに喋りたいから、見逃してくれ」
「はぁ……。まぁ、良いか。で、仕事なんだが」
と言う訳で、俺とギルマスはその仕事場に向かいながら話をすることにした。
『詳しい話は、現地に向かいながらするから』
と言われて一緒に歩いているが、いざという時に断る口実を防がれたともいう。
それに気付いたのは、道半ばほど過ぎた時だった。
皆が言う通り、俺ってどっか抜けてんのな。
「仕事内容だが、冒険者予備校での試験と臨時講師だな」
「試験? 俺、受けてないけど?」
「お前さんは……まぁ、あれがあったしなぁ」
「あれねぇ……。納得出来るような、出来ないような」
あれとは、3年前のスタンピードの事だ。
今思えば、あれが貴族になる全ての始まりだったと、遠い目になる。
何かを察したギルマスが、温かい目でこちらを見ている。
ちょっとキモいので、やめてもらいたい。
「まぁ、それは置いといてだ。予備校は少し変わってな。今は試験をして、適性ランクを決めることにしてるんだ」
「それよりも、いつから予備校になったんで?」
少し前までは、養成所だったはずだ。
細かい事だが、聞いておくことにする。
「前から名称変更の話は出てたんだ。で、同盟とかの時に、養成所だと無理に育ている感がある――と出てな。色々と大変ではあったが、いくつか変更したり、増やしたりした後に、予備校に変えたってわけだ。代わりに、冒険者になれない者も出たりするが、少数だな。おかげで質は上がったが、人員は減ったな」
ギルマスの背中から哀愁みたいなものが漂っている。
……俺のせいじゃないよな?
聞くと藪蛇になりそうなので、スルーしておこう。
再び歩きながら、雑談を交えつつ、仕事の話をしていく。
「今回は、講師よりも試験官の方だな。講師はそれなりに足りているが、試験官の方に少し問題がな」
「何の問題が?」
「……試験官は、現役冒険者に依頼と言う形で受けてもらっている。そのうちに義務へとするつもりだが、同業者が増えるのに良い顔をする奴は少ないだろう? 特にC辺りは……な」
「そう言う事か。貴族も冒険者も、足の引っ張り合いは同じか」
適性ランクよりも、敢えて低い評価を付けると。
経験を加味してならばありだが、その場合だと1ランク下で付けるべきだろうな。
後は、職員としても採用枠を造れば良くね? とも思う。
下手に口出しをして、巻き込まれるのは御免なので、黙るけど。
適当に話をしながら歩き、冒険者予備校に着く。
ギルマスと共に責任者へと挨拶をしに行くのだが――。
「おお! グラフィエル君が試験官に! これで、今年の試験は安泰だ!」
号泣しながら、両手を掴まれ、ブンブンされる。
嬉しいのはわかったから、手を離して欲しい。
力一杯握りしめてくるので、結構痛かった。
責任者改め校長は、恥ずかしそうに頭を掻きながら本題に移る。
何でも、授業で成績優秀者が揃って低ランク卒業と言うのが続いているらしい。
原因はさっき言ってた同業者の妨害。
あまりに露骨な判断には、総合的な成績を加味して、適正な判断を下しているのか? と、言われると怪しいそうだ。
「その総合的な部分ですが、何を基準にしてるんです?」
「筆記、実習、状況判断能力だな。後は、冒険者の試験官には必ず2名の副試験官が付く。彼らの意見も判断材料なんだが……」
「実際に相手をした、冒険者の言葉を全否定できないと?」
「あくまでも、客観的に見てだからな。露骨に否定すると、今後の試験官の事もあるし」
「いっそ、Bランク以上にしてしまえば良いのでは?」
「B以上は、別の試験官をして貰わないといかん。お前さんも受けたあれだ」
「依頼として出すのなら、問題無いと思うけど」
「予備校の試験官の依頼料なんて、雀の涙だぞ。1日拘束されて銀貨1枚だと、ギリギリ暇なCが受けてくれるくらいだ」
人員不足とお金の問題。
これはどうにもならんな。
一応、解決方法が無いわけではないが、採用されると目の敵にされそうなので却下。
どうにもならないようなら、条件付きで提案かな。
次に講師の話だが、これは必要なくなったそうだ。
予想以上に授業が進んでいるので、試験官だけで良いと言われた。
試験は二日後、冒険者ギルドの試験会場で行われる。
「当日の朝に、ギルドへと来てもらえれば良いので」
校長は、逃がさん! といった雰囲気を出しながらも、来られないと困るんです! と低姿勢で対応してきた。
ちゃんと行くから、低姿勢は止めて欲しい。
試験官の当日、うちのクランから野次馬見学で数名の冒険者と我が家の家臣になった元冒険者に加え、新人に洗礼を与えようと色んな冒険者が見学に来ていた。
当然だが、婚約者は勢揃いである。
何故か、お弁当持参で行楽に見えるが。
見学組は置いといて、冒険者の卵達に視線を移す。
今回の試験内容は二つ。
一つは、個人の戦闘能力や状況把握などの試験。
もう一つは、パーティーとしての総合能力試験。
以前から、予備校ではパーティーを組んで行動する者が多い。
それは卒業後も一定期間組んで行動している。
俺? 俺は、在籍期間が短かったし、ウォルド達と組んでいたからな。
断じて! ボッチではない!
……声を掛けらなかったのは事実だけどさ。
試験は、個人能力の方から開始される。
個人の試験が終了後は、パーティーリーダーがくじを引き、小さい数字から順にパーティーの試験が開始される。
何故、この方法が取られるのかと言えば、疲弊しても相手は関係ない! と言う、教育理念から来ているためだそうだ。
運の悪い者は、個人試験終了後に連戦する可能性があるので、少し可哀想だと思うが、ペース配分も大事と教える為らしいので仕方ない。
軽く準備運動して、受験者を待つ。
武器は木剣で、極力攻撃はしない様にと言われた。
了承して、試験が開始される。
「よろしくお願いします!」
「両者、間合いを。……試験開始!」
校長の声で、試験が開始される。
個人試験も終盤を迎え、残り数名になった。
はっきり言えば、Fランクが妥当と思える者が多い。
技量はあるが、状況判断が苦手な者。
力押しで来る者。
状況判断は良いが、技量も力も無い者。
理由は様々であるが、総合的に見れば失格である。
但し、個人ではだが。
これがパーティーを組んだ場合、化ける可能性がある。
今年から実装されたパーティーランク。
今までは、個人のランクで依頼制限をかけていたが、試験運用と言う事もあり、今回の冒険者から少し制度を変えた。
以前はパーティー内の個人ランクの総数によって受けられたが、今回からはパーティーにもランクを付け、受注範囲を広げるそうだ。
デメリットとしては、新しくパーティーを組んだ場合、再度試験を受けなければならない。
予備校卒業時のパーティーは無料だが、卒業後にパーティーの人員増減があれば、その都度試験を受けなければならない。
個人の試験に関しては無料だが、パーティー試験は一回につき銀貨1枚の手数料がかかる。
これが吉と出るか、凶と出るかは不明だが、変化は良い事だと思う。
そんな中、個人試験も残り数名となった。
「次! 前へ!」
「はい! よろしくお願いします!」
次の相手は13歳位の少女であった。
他の者と違い、そこそこ出来る感じであったので、ギアを一つ上げる。
「開始!」
校長の合図と共に、一気に距離を詰めてくる。
早さは中々だが……。
(直線的すぎる。距離を詰めるのは良いが、フェイントも考えて踏み込まないのは減点だな)
そう考えて、少しだけ身体を逸らし、反撃しようとして驚く。
片足で勢いを止め、横に回り込んでからの横薙ぎ。
剣の軌道に合わせて受け止めるが、中々に重い一撃だ。
しかし、力は俺の方が上なので、強引に弾く。
それも計算の内だったのか、弾かれた力を利用してからの一回転して横薙ぎ。
これは受け止めず、後方へと退避。
(やるな……。だが、その方法は諸刃の剣だぞ)
再度距離を詰め、同じ方法で攻撃を仕掛けてくる。
但し今度は、フェイントを入れて上段からの打ち下ろし。
しかし、これは受け止めず、身体を半身にして回避――したところに、軌道を変えての横薙ぎ。
こちらは受け止め、力任せに弾く。
同じ状況になったので、先程と同じ方法で追撃の一回転横薙ぎを仕掛けてくるが――。
「二度も同じ手は通じない。やるなら、奥の手を持て」
それだけ告げて、相手の剣を跳ね上げる。
剣先を向けて、試験終了の合図とした。
「あ、ありがとう……ございました」
息切れして、礼をする少女。
個人ランクならDでも良いが……。
(経験部分を引いて、Eスタートが妥当かな?)
そして、次の試験者に目を移すが……あれ? 目の錯覚か?
次の試験者は先程の少女と瓜二つ。
少女にも見えるが、よく見たら少年だった。
美少年……どこぞの淑女が鼻血出して喜びそうだな。
そんなことを思いつつ、試験が開始された。
「い、いきます!」
少年は自身を鼓舞するかのように叫ぶと、魔法を放つ。
火、風、雷と中々に攻撃寄りの魔法なのだが――。
(威力は初級。しかし、制御は良いか)
同じ魔法、同じ威力で相殺しながら、相手をしていく。
魔力量も中々に多い様だ。
しかし、驚いたのはここからだった。
初級魔法では不可能に近い、複合魔法を撃ち出したのだ。
相変わらず威力は低いが、その制御には目を見張るものがある。
ただ、土と雷の複合魔法は撃ってこなかった。
あれは、魔力制御が難しいからなぁ……地味に魔力も多めに使うし、相性も決して良くは無いからな。
数分後、魔力の枯渇によって試験は終了。
この少年もEランクが妥当と考えた。
パーティー試験に移る前に、軽く小休止が入る。
実際の冒険者的には駄目なのだが、魔力回復薬が全員に配られた。
但し、俺には無い模様。
「え? 必要なのか?」
これがギルマスの言葉だった。
必要ないけどさ、そこは平等にするべきじゃね?
後でギルマスを締めようと、秘かに誓うのだった。
ミリア達が作った弁当を食べ、試験が再開される。
最初の相手は……二人?
見れば、先程の少年少女だった。
二人の顔は、少しげんなりしていた。
まぁ、個人戦がほぼ最終組で、パーティー戦が最初になれば、そんな気持ちになるわな。
だが、実際の現場ではそうも言ってられない。
心を鬼にして試験を続けることにした。
「これより、パーティー試験を開始する! 両者前へ!」
「あの、試験官の方はお一人なんですか?」
少女が試験官が一人な事に不満? を持ったようだ。
それに対する返答は、ギルマスが行った。
「彼は、あの【蹂躙者】だ。胸を借りるつもりで挑めば良い」
「試験官の人が、あの有名な……」
少年は、自分達とあまり歳の変わらない自分に驚いたようだ。
ギルマスの答えもあってなのかは知らないが、少女の目がギラギラとしている。
うん……ギルマスは後で絶対に締めよう。
そのギルマスは、身震いしていた。
そして、試験が開始されて、早速驚く。
少年の風魔法を背に受けて、今までの比でない速さで距離を詰める少女。
だが、攻撃方法は先程と同じなので避けようとすると、足が土魔法で固定されていた。
仕方なく、少女の剣を受け止める方向に切り替えると、先程と同じように、片足で軌道を変え、その後ろには火魔法。
(上手いな。しかも、さっきは見せなかった同時制御。状況判断能力は、群を抜いている可能性があるか)
と考えながらも、木剣に魔力を流して火魔法を切り消す。
次に足の土魔法を同じ魔力量で相殺するのだが――。
(少女は何故攻撃してこなかった? 絶好の機会だっただろうに)
そう考えた直後、地面の中から剣が飛び出す。
上半身を逸らし剣を回避するが、そこから更なる追撃。
剣から風の刃が襲ってくる。
「ちっ!」
舌打ち一つして、同じ魔法で相殺。
その後、距離を取るために後方へと飛ぶ。
剣が突き出してきた地面から、少女が姿を現す。
「今のが躱されるなんて……。流石、二つ名は伊達じゃないわね」
「おねぇちゃん、試験官に失礼だよ」
「え? 君ら姉弟なの?」
驚きの新事実であった。
二人は双子で姉がマイラ・シャスト。
弟がヘムト・シャスト。
前衛の姉に後衛の弟。
パーティーが二人なのも納得できる。
ただ、この時点で減点対象でもあった。
(協調性に難ありかな? 俺でも、臨時パーティーをそれなりの人数で組めるのに)
自分で考えて、少し悲しくなった。
俺に、正規パーティーはいない。
つまりはソロでボッチ。
……いや、俺の場合はついて来れる冒険者がいなかっただけだ! ボッチじゃない!
自分で自分に言い訳をして、心に更なるダメージを追加した。
ぴえん。
仕切り直し……ではなく、受験者の二人が降参した。
この程度で降参?
少し、疑問に思う。
ギルマスや校長も同じようだ。
そこで話を聞く事にした。
「さて、何故、降参したかだが」
「やるだけ無駄だから」
「君はそう言って、潔く魔物に殺されるのかい?」
校長が諭すように少女に質問するが、その答えに全員が唖然とする。
「魔物の場合は撤退戦があるじゃない。でも、これは試験。負けても死にはしないし、最大効率の攻撃が躱された以上、倒すのは不可能。それに、同じ攻撃は効きそうにないし、わざわざ温存していた技能も出したのに、手加減どころか手抜きされてるんだから、これ以上の試験は無意味ってわけ」
あの状況下で、良く客観的に分析できるものだ。
ギルマスも校長も、開いた口が塞がっていない。
しかし、懸念もある。
心が折れやすいのでは? と言う懸念。
ただ、パーティーランクとしては最低でもD。
二人で――と言う事を加味すれば、Cでも良いと思う。
ただ、経験が足りないので、Cにはさせんけどな。
その後の試験では、二人以上に驚く事もなく終了。
パーティーランクもEまでとなった。
で、現在、二人を連れてギルマスの部屋に来ているわけだが――。
「で、【蹂躙者】の判断は?」
「個人はE。パーティーはDですが、依頼の一部に制限かな」
「理由は?」
「経験値が圧倒的に足りない。それと、魔法の制御は素晴らしいが、攻撃力が足りない。距離の詰め方が直線的すぎる。そして、最大の懸念が二つ」
「二つ? 一つは想像がつくが」
「一つはギルマスの想像している通り、心が折れやすいのでは? と言う懸念ですが、それを後押しする懸念があります。それは、効率を重視しすぎと言う点です」
「……なるほど。確かに、それは危険だな」
俺とギルマスは納得し合ったが、二人――特に、姉マイラの方が納得できない顔をしていた。
なので、説明タイム!
「あのな、この先二人でやっていくのかは知らんけど、時には臨時で組んで、頼らないといけない時もあるんだぞ」
「どんな時よ?」
少し勝ち気で、口当たりが強いマイラ。
と言う訳で、実践します。
思いっきり、威圧をマイラにかける。
「くっ!」
「どうした? この程度は、まだ序の口だぞ」
そして、少しずつ殺気を出して行く。
顔が青褪めていくマイラ。
ほどなくして、殺気も威圧も解除する。
青褪めた顔のまま、肩で息をするマイラ。
「わかったか? 効率を優先して、気配や殺気を消した相手がどんなに危険かが。こういったのは勘にもよるが、効率ばかり追いかけてると勘を無視するようになる。この辺は経験の差だが」
「おいおい。ひよっこには厳しい意見だろ?」
「ひよっこだからですよ。今のうちに教えとけば、この先で無理をしなくなるでしょう?」
「それで潰れる奴もいるんだぞ」
「彼女なら大丈夫でしょう」
その言葉を聞いたマイラは、青褪めてた顔を、今度は赤くする。
褒められ慣れていないのかな?
しかし、二人が素晴らしい資質を持っているのは間違いない。
誰かに師事を仰げば、更に伸びるだろう。
ギルマスも同じ考えなのか、何かを考えている模様。
そこへ、弟のヘムトが声をかけてきた。
「あの……質問なのですが、良いですか?」
「答えられることなら」
「その、クランにはどうやって入るんですか?」
「クランねぇ……試験を受けるか、スカウトされるかだな。ただ、クラン自体の方向性もあるから、一概には言えないけど」
「そうですか……」
だが、弟ヘムトの声を「待っていました!」的な顔をして、ギルマスが提案をする。
その提案とは、寝耳に水であった。
「なら、お前のクランに入れてやれば良いだろう。方向性もあっているし、問題は無いと思うが?」
「問題大ありだ! 有能な新人冒険者を即クランとか、嫉妬とやっかみが凄いわ!」
思わず、素に戻って反論する。
その言葉に、残念そうな顔をする二人。
「うっ!」と罪悪感が出るが、こればかりは個人の感情を優先させるわけにはいかない。
しかし、ギルマスの一言で断れなくなる。
「なら俺が一筆書こう。ギルマスの紹介状付きなら、問題ないだろう?」
「いや、確かに問題無いが、そうなるとギルマスへの当たりが強くなるんじゃ?」
「お前が試験をして、将来有望、しかし教育が必須――と見たのだろう? なら、教育先にお前のクランを紹介しても不思議はないだろう」
「そりゃそうだろうけど……」
「もう一つ言えば、新人教育に力を入れてるクランは、お前の所しかないのが現状だな。ギルマスが判断して預けたとなれば、嫉妬もやっかみも最小限だろう」
「……はぁ、わかった。引き受ける。但し、俺は人任せで、ほとんど何もしてないからな」
「神輿は軽い方が良いからな」
こうして、新人双子冒険者は俺のクラン所属となった。
まぁ、俺のクランに居れば、難癖付ける冒険者もいないだろう。
上が【蹂躙者】だしな。
数年後、双子冒険者はたった二人だけのパーティで、パーティーランクだけSランク認定を受ける事になるのだが、それはまだ先の話。
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