第37話 更に問題発生

 色々あったが再開された会談は、御子であるミリアの伴侶として相応しいか?を、家族含めた権力者達が見極めるという事だったのだが

 まぁ、あんなもん見せた後に相応しくないとかは言えんよなぁ

 なので次の議題に移るのだが、次の言葉は誓約に関わるかもしれないらしく、ヴァルケノズさんが代表して質問をした


「ランシェス王国からセフィッド神聖国に鞍替えする気は、やっぱり無いかな?」


 答えは当然NOである

 流石に前日も同じことを聞かれて断ったのに、また同じ質問をされてちょっとイラッとしたが(枢機卿達を納得させる為だから、付き合ってくれ)と目線で訴えてきたので、仕方なく付き合う

 更に質問が色々と来るも全て無駄!って感じで無言を貫いた

 そもそもの話、俺は既にランシェス王国から爵位を貰っている


「鞍替えする事は裏切りと同義だ」


 最後に答えを出すと流石に諦めた

 次にミリアの家族からの質問だが、気の早い内容で「式はいつ頃?」だの「婚約発表はいつ頃?」等の話だ

 爆裂じぃさんもさっきのを見ては文句も無いらしい

 寧ろ積極的に婚約を確定させようとしているのだから現金なものである


 ミリアには兄もいて、聖騎士団の3番隊副聖騎士長を務めているそうだ

 年は20歳で、ミリアとは7つ離れており、重度のシスコンであるが、俺の事は認めてるっぽく


「妹を悲しませる事だけは、くれぐれもしないでくれ!」


 先程からこればっかりなのである

 とりあえず婚約については満場一致で賛成

 残りの話は後日進める事となった


 次は「依頼をしたいのですが」と、一人の枢機卿が発言した

 依頼は教会本部からの指名依頼で冒険者ギルドを通してあった


「ランク上げの足しにして下さい」


 と言われ、断るのは難しかった

 尚、依頼内容は複数あり


 聖騎士団との合同訓練

 帰国の際になるが教皇猊下及び複数名の枢機卿の護衛依頼


 と、この二つはまだ良いのだが、残り二つが問題だった


 ワイバーンの討伐依頼

 聖騎士団との合同野外訓練


 この依頼の何が問題なのか?

 それは、現在進行中でランシェス王家の護衛任務を行ってる最中だからだ

 神都内や帰国の際に元々の依頼を阻害しない依頼ならば請け負えるが、神都外だと阻害する可能性があるので話が変わってくる


 実は一応だが、神都内に滞在中はオリジナルの探査魔法を常時展開している

 誰かに何かあっても直ぐに動けるようにするためだ

 前世で例えるならGPS機能を魔法で再現してるみたいなものかな

 ただ問題もあって、発動者が起点となる場所から離れすぎると解除されてしまう

 起点は神都の中心部にし、全域を網羅している

 だから、神都内での依頼なら問題は無い


 まぁぶっちゃけると、許可が必要にはなるが、ワイバーンの討伐依頼自体もそこまで問題では無い

 問題としたのは個人の判断で今回は受けられない為だ

 しかし、改めて話を聞くと、かなりの問題依頼ぽかった

 その理由は、もう一つの合同野外訓練だ

 依頼は別にしてあったが「ワイバーン討伐に聖騎士を連れて行って合同実地訓練してくれ!」が本音であった

 更に御子のミリアも参加するそうで、思わず片手で顔を隠し、天を仰いでしまった


 ワイバーンは最低でも単体でBランク相当の魔物だ

 群れを率いている個体ならば、Aランクに指定されかねない強さがあり、油断できない

 しかし何故、ワイバーンの討伐依頼が?と不思議に思ったのでその辺りを聞いてみる


 ワイバーンは基本山脈を縄張りとし、巣を作って群れでいる

 だが、セフィッド神聖国内には山はあれど、山脈と言われるような場所は無い

 聞けば、神都より東へ2日の山にワイバーンの群れが巣を作ったと報告があり、近隣の村が既に被害にあっているそうだ

 冒険者ギルドに依頼を出したのだが、非常に強い個体が群れの長であるらしく、依頼はことごとく失敗

 現在は引き受け手がいないらしい


 困っていたところに、渡りに船で俺が来たから頼もう!という風になったそうだ

『ついでに、合同実地訓練もしてしまえ!』的な流れになったそうだが、最後の流れはどう考えてもおかしい

 思いっきりジト目で睨むと話をしていた枢機卿の一人が青褪める

 一つため息をつき、依頼に関して一つの答えを出す


「今すぐには返答しかねる。後日、回答する」


 これでひとまずは、この議題を終了させた

(俺って確か夏季休暇で来てたよな?)と思いつつ、次の議題へ


 次はミリアの事だ

 婚約した以上は一緒にいるべきなのだが、御子としての立場もあるので、どうするべきか?

 これに関しては揉めることなく終わる

 先に決めたように、ランシェス王国の高度高等学院に留学させ、宿泊先は王城

 留学中は国賓待遇として滞在する事で満場一致の賛成となった


 細かいものはあるが、一応は大まかな話も終わり、会談を終了して屋敷への帰路に着く

 屋敷への帰路に着きながら(2、3日は観光したいな)と思いながら屋敷に着くと、そこにはギルドからの使者が来ていた


 ・・・・・何となく嫌な予感がした

 そして、それは正解で


「緊急招集に応じて下さい!」


 と告げて、使者は去って行った

 屋敷に入ってメイドに


「ギルドからの緊急招集が来たので、帰りが遅くなると皆に伝えといて下さい」


 と言伝を頼み、俺は踵を返してギルドへと向かう


「(これは・・明日も観光は無理っぽいな)」


 そう思いながらギルドへと向かい、夕食代わりに途中の屋台で肉の串焼きを2本買い、食べながら歩を進め、食べ終わって少し経った頃にギルドへと着いた


 ギルドへ入ると、サブマスが既に待っていた

 案内されて2階の会議室へ通される

 会議室の中には、神都内全ての冒険者パーティーのリーダー達が集まっていた

 パーティーメンバー達は、ギルド内の最も広い場所で説明されているそうだ

 リアーヌとヴィオレッタはそちらにいるっぽいな

 どうやら俺が最後の様で、ほどなくしてギルマスが来て説明を始める


「皆、良く集まってくれた。知っていると思うが、現在東の山にワイバーンが住み着いた。先程、監視していた者より連絡が入り、ワイバーンの群れが神都に向かってきている。群れを統率するワイバーンだが、色が灰色だったそうだ」


 色を聞いて全員が驚愕するがそれも仕方ない

 魔物には属性を表す色を持つ個体がいる

 主に属性を表す(一部違うのもいる)のだが、白・黒・灰色は先祖返りと呼ばれたりもする

 そう呼ばれる所以は、圧倒的な戦闘力にある


 先に述べた3色は、竜であれば神の光のようなブレスを吐く

 過去にも同じ記載があり

〝竜は元々が神の使徒の一つで世界に子孫を残した〟

 と言われている

 だが俺は、真実を知っているので違うと言える

 とは言っても、全てが違う訳ではなく、半分程は正解だが


 相違点は神の使徒ではなく、神竜が元々いた竜達と繁殖しただけ

 更に言えば、単に遅い発情期で、地上に好みの竜がいたからつがいになり、子を為しただけである

 子が巣立つ頃には、伴侶と共に神界へと隠居している


 何故知っているのか?

 それは神界での特訓時に知識として叩き込まれたからな!

 だが、その力は先祖返りで、若干衰えているとはいえ脅威だ

 但し、普通の人ならば・・な

 俺なら楽勝なのだが、疑問点が一つある



〝何故、ワイバーンに先祖返りが起こったのか?〟



 ワイバーンは翼竜とも言われているが、正確には竜系統の別種族で、先祖返りを起こす因子など無い

 もっと正確に言うとワイバーンは竜ではない

 神竜の眷属に入っていないからな

 だから子を為すことはありえない

 ワイバーンは竜系統に属するトカゲなのだ

 では、竜の因子が全く無いのか?と言われると肯定出来ない

 肉や骨は、竜と遜色ないのだから

 非常に説明が難しいのが、ワイバーンなのだ!


 続いてギルマスから出た言葉に、俺は思考の海から引っ張り上げられる


「更に南の龍島からも、ツインヘッドドラゴンが神都に向け飛び立ったと言う情報が入った。ツインヘッドドラゴンを筆頭に30~40ほどの数だ」


 そう聞くと、誰もが言葉を失う


「現在こちらが掴んだ情報を、教会本部にも通達してある。今回は教会騎士と共同して事態の収拾にあたるが・・質問はあるか?」


 誰も手を上げようとはしない

 なので(仕方ないか・・)と思いつつ、俺は質問をする


「いくつか質問が。まず、ワイバーンの群れの数は?ツインヘッドドラゴンの色は?教会騎士はどのように配置される?到達予測時間は?」


 一気に質問をする俺

 全く悲壮感が出てない俺に全員が呆然としている

 数秒後、我に返ったギルマスが質問に答える


「ワイバーンの群れは数が約200。ツインヘッドドラゴンの色は黄色だ。教会騎士についてはこれから打ち合わせに入る。ワイバーンの到達予測時間は、明日の朝頃から昼にかけて。ツインヘッドドラゴンは、そこから半日から1日遅れだと思われる」


 情報が一つ抜けてはいるが、些細な範疇だな

 俺は席を立ち、ギルマスに告げる


「ワイバーンは俺一人で受け持つ。教会騎士と冒険者達は、ツインヘッドドラゴンが予想より早く来た場合に備え、そちらの足止めをお願いしたい。後、見通しが良く、広範囲魔法を使っても問題ない場所の選定を。教会本部には俺から伝える」


 それだけ告げると会議室を後にし、教会本部へ向かおうとするが、そこで待ったが入る

 今の言葉が気に入らない冒険者達だ

 俺はすこ~し、ほんのちょびっとイラッとしていたので




 OHANASIをしてイライラを解消した




 OHANASIした冒険者は歴は長いがCランク

 相手の強さもわからないアホである

 当然、俺を知ってる冒険者もいる訳で、思いっきり天を仰いでいた

 それだけ見て俺は、今度こそギルド会議室を後にし、教会本部へ向かう

 向かう途中に考えたことは


「(俺、夏季休暇は休めねぇんじゃね?)」


 ・・・・1日で良いから休み下さい!と祈りつつ、教会本部へと歩いて行く














 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 グラフィエルが出て行った後、ギルドの会議室では沈黙が流れていた

 先程フルボッコにされた冒険者達だが〖口は悪いが、かなり面倒見の良い冒険者〗である

 実力が伴わずCランクではあるが、経験豊富であった

 それを見たランシェス王国護衛冒険者は苦笑いしていた

 俺を知らない冒険者達は、若干青褪めている

 そんな中、ギルマスがため息をつきながら声を出す


「怪我した奴はさっさと回復して戻ってこい。ワイバーンに関しては、彼なら問題ないのだろう。都に入れる訳にはいかないのだから。我々は南を担当するぞ。時間はあまりないが、パーティーとよく話し合っておいてくれ」


 それだけ言って、ギルマスは会議室を後にする

 残りの冒険者達も仲間の所に行き始める

 ウォルド達ランシェス王国護衛組も全員が合流し、王妃様方に指示を仰ぐべく、報告をしに、一旦屋敷へと戻る事にした


 一方、ギルマスは部屋で一人


「やり過ぎなんだよ。はぁ・・・・・」


 ため息をこぼしつつ、1人愚痴っていた



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~










 ギルマスがため息をついていた頃、俺は教会本部へと着いていた

 既にギルドからの情報は届いているらしく、教会内は慌てふためいている

 そこに見た事のあるシスターがいたので呼び止め


「ヴァルケノズさんを呼んで欲しいんですが」


 と言うが、俺の実力も秘密も知らないので軽くあしらわれてしまう


「(さて、どうしようか?)」


 そう考えた時、俺が蘇生した枢機卿が通りかかった

 そして俺を見付けて、ヴァルケノズさんへと取り次いでくれた


 今回は応接室ではなく、会議室へと案内される

 そこにはヴァルケノズさんをはじめ、枢機卿全員に幾人もの騎士達がいた

 俺は空いてる席へと案内され、座ると会議が再開される


 聞いていて10分位経つが全く進まない

 理由は、騎士達で意見がバラバラなのだ

 ただ、誰がどんな人間か知らない俺は傍観者になっていた

 そして、ヴァルケノズさんがただの言い争いを一度止め


「ラフィ君。先に君の用件を聞こうと思うんだが」


 こちらの話を先に聞くと言って貰えたので


「はぁ・・。ようやくですか。後5分は早く止めれましたよね?この無駄な5分が勿体無い。こちらの用件は、東のワイバーン殲滅後、南も受け持ちますので、念の為の頼み事ですね。頼みたいのは、到達予定時刻より前に南側の竜が現れたら、足止めをお願いしたいんですよ。冒険者ギルドにも同じように伝えてます。文句があった人達はOHANASIして、今はベッドの上ですかね」


 と、思いっきり舐めた態度を出しました


 騎士達が「何だ!その態度は!」とか「ここはガキの遊び場じゃない!」とか「貴様の指図に従う気は無い!」等々、罵詈雑言と拒否を示したので黙らせた

 濃密な殺気を出して今そこにある死をしっかりと認識させる

 それを浴びた騎士達は気絶こそしないが、全員が顔を蒼白くさせ、額からは汗が流れ落ち、ごくりと唾を飲み込む

 枢機卿達も同じ状態だが、ヴァルケノズさんはフッと笑い


「ラフィ君。それくらいで勘弁して貰えないかな?もうすぐ御子も来るし、その殺気では御子が怯えてしまうんだが。後、動いて貰えるなら君の言う通り動こう。ただ、勝算は・・・・あるんだろうねぇ」


 そう言うと深くため息をつくヴァルケノズさん

 話も進まないし、とりあえず殺気は消した

 皆一様に安堵の顏になる

 少し落ち着きを取り戻した後、一人の騎士がヴァルケノズさんに訊ねる


「教皇様。彼は一体、何者なのですか?先程の殺気は尋常ではありません」


「彼が御子の婚約者で、かの有名な【蹂躙者】ですよ。聞いたことあるでしょう?ランシェス王国のスタンピードの話を」


「彼があの有名な!それならばあの殺気も・・・・」


 と、何故か納得してしまった

 他の騎士達も皆同様だ

 いや!それよりも、蹂躙者って何!?恥ずかしいんですけど!

 何か釈然としないが、ヴァルケノズさんが騎士達を紹介する


「彼らは13ある聖騎士団の団長だよ。右にいるのが第0聖騎士団団長で近衛聖騎士筆頭だ。左にいるのが聖騎士総師団長だ。時間がある時に詳しく話すけど第0聖騎士団は教会本部の守りになる」


「なら念の為に、ランシェス王族を教会本部へと避難「もう使者を向かわせてる」」


 こちらの意見を言う前に返されてしまった

 なので気を取り直して


「見晴らしが良くて、広範囲大規模魔法を使用しても問題ない場所はあります?」


 聞くと、ここから1日程離れた場所にあった

 ただ、ワイバーンの侵攻速度的に間に合わなそうだったので、別の方法でる事を告げる

 それを告げたら、聖騎士達は戦々恐々としていた


 教会聖騎士は第3~第5の3騎士団と第0騎士団を教会本部の守りに置き、残りは全軍南へ展開させる事となった

 御子であるミリアだが、今回は本部にて負傷者の治療に従事する

 今回と使った理由は、必要に応じれば後方ではあるが、従軍する場合もあるからだ

 なので今回はという言葉が適用される


 会議も終わり、俺は直ぐに東へ向かおうとするが、そこへランシェス王族とミリアが姿を現した


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