第28話 相談と婚約!?と初敗北

最上級生になって初の学校登校日に俺はもみくちゃにされていた

学校が出来て初の在学中の叙勲と爵位授与で学校生徒は一部を除き羨望の眼差しで見ていた

一部の除かれた生徒とは親が貴族の子供でようは嫉妬である

全員がそうではないが高爵位の子供ほど嫉妬の視線が多い

俺は気にも留めてないが敢えて言わせてもらうと、君らも同じ事すれば良いだけと心の中で言っておく


それを見て軽蔑の視線を送るのはSクラスの級友達だ

思いっきりジト目でそいつらを睨んでいる

更に学校外でも羨望と嫉妬の目線はあり、それに対しても周りは過敏に反応する

特に次女のルラーナ姉が人一倍きついがそれには理由がある


知った時は驚いたが実はこの世界では兄×妹・姉×弟の結婚は容認されている

但し腹違いに限るとの条件があるので実際はあまりいない

長女と三女は腹違いで俺との結婚は可能なのだが同腹の次女は出来ない

だからこそルラーナ姉は人一倍?人三倍?かはわからないが俺には大変過保護であり害意ある者には厳しい対応をする

厳しいと言っているが実際に対応された者は口々に「あれは人じゃない何か」と言い、暫くは震えて生活することになったと聞く

そうした経緯もあり初めは姉3人共睨んでいたのだが次女が特に酷かったので長女と3女の姉は自重したっぽい

一つ付け加えておくが別父同腹べっぷどうはらの場合でも結婚は出来ない

あくまでも腹違いである事が必須であるのだ


更に上の3人(長男・長女・次女)は成人しているのでいつ結婚してもおかしくない

しかし何故か3人には婚約の話も無く未だ長男の嫁も長女と次女の嫁ぎ先も決まっておらず両親は地味に焦り始めていた

神様達が何かしたんじゃなかろうかと疑う程に無いのだ

尚、婚約話が無いのは別に不思議な話ではなく、普通にお見合いとかもする

このお見合いは前世とは違い縁が無かったので・・・とはならず、お見合い=婚約又は結婚承諾である

来年には俺を除く全員が成人するのに婚約どころかお見合い話さえ誰一人決まって無い状況なのだ

当然俺にもいないので両親は余計に頭を抱えて悩んでいる


そんな日々が続く中、俺は12歳になり、遂に冒険者登録できる歳になった

今日の帰りにでも早速登録しに行こうと思っていたのだが相談があると級友から言われてギルドへは明日行くことにした

良く考えたら明日休みだし登録したら依頼も受けよう


相談を頼んできた相手はリアーヌとヴィオレッタで両者とも真剣な顔である

先に話始めたのはリアーヌで、その相談事が


「僕の家には兄が二人いて跡継ぎがいるから卒業後は高度学院に行けるかは別として最終的には冒険者になりたいと思ってるんだよ。それでパーティーを組んで貰えないかな?」


と言われた

次にヴィオレッタで


「私は6女で婚約者もいないし騎士家系だから研鑽も兼ねて冒険者をしたいの」


との事だった

二人共夏季休暇が過ぎないと登録できないので前向きに考えると返事をしたが、確認として二人の両親は許可をしてるのかと聞くとリアーヌは婚約者がいるそうで反対されているそうだ


ただその婚約者が今現在で40手前の脂ぎった上太ったおっさんで16番目の側室にと言われたが生理的に無理らしく嫌で父親に相談したそうだ

政略結婚など珍しくないし娘が嫌だと言っても結婚させられるのが貴族社会ではあるが、それは血と家を繋げていくためであり、生理的に無理となると流石に一考する

ただ、この辺りは繊細な話になるので、色々と調整して話をしないといけない

その結果は一部の話を隠したまま相手側と両親が話し合いをし、条件として『冒険者として活躍し、成人までにBランクになれたら婚約話を無かった事にする』と相手側に提示され、受けざるを得なくなった

一見厳しい条件にも見えるが、実家は王国の魔闘拳指南役でリアーヌ本人も魔闘拳の使い手である

3年という長く短い時間ではあるが勝算は十分にあり、きっとリアーヌの父親が娘の願いに対して何かしてやれる唯一の事だったのでは俺は思う


ヴィオレッタの方は冒険者をやる条件として俺と組むなら良いとの条件を出されてるそうだ

聞いて驚いたのが父親は近衛筆頭騎士だった

陛下と共にいたあのイケメン筆頭騎士がヴィオレッタの父親という事に驚いた

あー・・・ヴィオレッタの条件が俺なのは理解したわ

ぜってー嫁候補で許可を出しただろうな


俺は仕方ないと諦め「きちんと12になったら」と言って組むことを約束した

リアーヌの件は俺が同じ条件だった場合を想像したら鳥肌がたったし、ヴィオレッタに関しても信用されてるのは素直に嬉しかったからだ

二人に告げるとめっちゃ喜び「絶対だよ!」と念押しされて門の前で別れた





家に帰ると1台の馬車が止まっており、馬車から降りた所であろうか?フェル殿下と第一王妃リアフェル・ラグリグ・フィン・ランシェス様がクロノアス家の屋敷の前にいた

屋敷を下賜されて男爵になった俺が何故実家に帰宅するのか?それは学校卒業後迄は実家で過ごす事になっているからだ

未成人の学生なので学校在学中は家族と過ごす様にと陛下の恩情を頂いていた

なので後1年はクロノアス家3男で過ごせるので少し気楽である


では何でフェル殿下と第一王妃が実家にわざわざ訪れたかに戻るがわからん

状況的に丁度今来たようで玄関扉の前で鉢合わせしてしまったみたいだ

フェル殿下は手をひらひらさせ「こんばんは、ラフィ」と声を掛けてくるが思考停止していた俺には聞こえていなかった

3秒で何とか復帰できた俺は片膝をつき臣下の礼を取るが、第一王妃は「今日は非公式での訪問ですから」と立ち上がるように言った


頭を下げてから顔を上げるとフェル殿下がソワソワしている

珍しいと思いつつ、一つの可能性に至る

まさかな?でもフェル殿下の気持ちは多分そうだし

リリィ王女から聞いたのだが、フェル殿下の気持ちとは我が姉ルラーナの事である


フェル殿下が入学した時、ルラーナ姉は12歳で最上級生だった

2年前から面識はあり、学校でも度々は昼食時に話をしていた

ルラーナ姉とフェル殿下が共に学校にいたのは1年程だが、ルラーナ姉が卒業後はお茶会に呼んだり、お忍びで買い物に誘ったりしていたのを妹であるリリィ王女から聞いて知っている

もしそうなら我が家で今代初の婚約者誕生である


父は現在王城から来た別の使いの者と領地についての会話中でもう少し時間がかかりそうだとメイドが伝えに来て謝罪した

父も使者も何と間の悪いことだか

王族を待たせるわけにもいかないのでとりあえず応接室に案内し、メイドにお茶とお茶請けを持ってくるように指示をして、暫くの間は俺が歓待する事となった

俺が歓待すことになったのはフェル殿下の「母上もラフィと話をしてみては?」が原因です


応接室に二人を案内し、父が来るまで俺が歓待する

本来は家を継ぐグリオルス兄の仕事だよな?と思っていたら、その兄が来るもガチガチに固まっており、臣下の礼をして俺と同じ様に王妃に返され、頭を下げてから顔を上げてソファーに座るも未だにガチガチである

これはダメだなと思い俺がフェル殿下にド直球で聞く


「ルラーナ姉の事ですよね?フェル殿下?」


そう聞くと今日はフェル殿下の珍しい顏ばかり見る

なんで知ってるんだ?って顔だ

そりゃ俺にもリリィ王女って情報網があるし

リリィ王女曰く、「ようやく兄にも春が来ました」と言っていた


若干言葉が出会った頃の様に固いのは第一王妃がいるからで二人だけならもっと砕けて話している

フェル殿下は目線でいつもみたいに言えと訴えるが俺は出来るわけ無いだろ!と返す

それを見ていた王妃は「いつも通りで良いですよ。非公式ですから」と言ってくる

フェル殿下は勝った!って顔をしやがったので俺は思いっ切り砕けてやった


「で、もう一度聞くけどルラーナ姉の事だよな?」


俺の再度の質問にフェル殿下はさっきまでとは違い真面目に答える


「そうだよラフィ。僕は彼女を妻に・・正室に迎えたいと告げに来た」


「やっぱりか。聞いてた通り、一目惚れってわけか」


「誰から聞いたラフィ?いくつか予想はつくけど」


「秘密な。で、本人にはちゃんとプロポーズしたんだよな?」


「い、いや・・母上が話をする前にこの場でしようと思って」


「ないわー・・それはないわフェル殿下。普通は先に言うもんでしょ」


「いい加減フェルって呼んで欲しいものだよ・・で、やっぱりそう思うか?」


「俺から言わせたらヘタレだな。ヘタレはまだ殿下付けが相応しいな」


「ぐ・・よし分かった!母上!!お話は少しお待ち頂きたい!ルラーナさんと少し散歩をしてきてから結果を話します!!ラフィ!僕はヘタレではない!婚約できたら殿下は取ってもらうからな!!」


そういう事で俺はメイドにルラーナ姉を呼んできてもらう

ほどなくしてルラーナ姉が来て


「なぁにラフィ?用があるって聞いてきたけど・・って!殿下!?第一王妃様も!?」


慌てて臣下の礼を取るルラーナ姉だがフェル殿下がそれを止め散歩に誘う

王妃様をちらっと見るが王妃様は「他にも話があるので1時間位なら構いませんよ」と告げ、フェル殿下にもプレッシャーを与えたようだ

王族たるもの二言は許さないと言った感じだ


二人は応接室を出て行き散歩に向かうが時間も夕暮れであり、ましてや第一王子で王太子でもあるので当然の如く陰から護衛がついて行く

そんなやり取りを見ていた兄グリオルスが俺に一言「ラフィって何と言うか色々凄いな」とだけ言って呆気に取られていた


二人が散歩に行き、部屋には王妃様と兄グリオルスと俺だけになったのだがここで王妃様がえげつない爆弾を落としてくる


「グラフィエル君でしたわね?あなたうちのリリィと婚約なさい」


は?この人は一体何を言ってるんですかねぇ?

過去最強の爆弾に俺の思考は完全にフリーズした

1分経っても復活しない・・・2分3分と経つが未だに思考は止まったままポカーンとしてる

その状況に耐えきれなかったのか王妃様がプっ!と吹き出し笑い始めた

ひとしきり笑った頃にようやく俺もフリーズから解除されていった

その時間およそ6分・・過去最高記録である

こんな記録、出したくなかったわ


「リリィが少し愚痴るわけね・・ここまでだったなんて・・・」


小声で「他人の事はわかるのに自分は鈍感」と王妃は言うも完全復帰してない俺は気付かなかった

グリオルス兄も今の発言にフリーズしたまんまだった

ここまでフリーズするのには実はちゃんとした理由が存在する

貴族に王族・王家の婚約は例外を除き結婚と同意義で、例外は色々な事例があるので長くなるから省くが貴族の男爵位以上の貴族と王族との婚約は全て結婚しますと言う意味だ

王女が貴族に嫁ぐ場合は降嫁こうかになるので、本物の貴族とは言え最底辺の男爵と婚約などは到底あり得ない

婚約する爵位としては最低でも伯爵位からで嫁ぎ先の最有力候補は他国との政略結婚か侯爵位の家が濃厚である

ランシェス王国はそれなりの強国なので、王女もある程度までは自由意思で婚約することが出来る

しかし、それでも男爵位はあり得ない程の珍事になるのだ

そりゃフリーズもしますって


その後は話を逸らしてちょっとした雑談をし10分位経った頃に父が来た

王妃様は先手を打ち「非公式だから有意義な話をしましょう」と言い、座る様に促す

父が来たので兄と俺は離席し部屋を出ようとするが、俺は王妃様に、兄は父に残るように言われ、脱出の機会を無くしてしまう

兄はわかるが何で俺迄?と思うも「焚きつけた本人がいなくなるのはダメね」と王妃様に言われてしまう

やっべ・・・父がめっちゃジト目で見てくるんですが

王妃様は笑いを堪えつつ話を進めた


ルラーナ姉とフェル殿下の婚約話を聞いた父を見ると・・あ、フリーズしてるわ

だが父は辺境伯家当主!すぐさま持ち直し、兄は父を見て流石と思ったようだ

ただ王妃様は殿下がルラーナ姉を見事射止めない限り婚約話を進めないと宣言した

ルラーナ姉の年齢と殿下の年齢を考慮し期限は2年

クロノアス家からのルラーナ姉への説得は厳禁

この2つを提示した


2年で進展が無い場合ルラーナ姉の年齢も考慮し結婚相手は王家が責任を持って斡旋する

最悪の場合は特例を使う事も辞さないとの事だ

その特例が何なのか俺はわからなかったが父は気付き苦悶の顔をした

あまりよろしくない事なのだろう


話をしてるうちに時間になったようで殿下とルラーナ姉が帰ってきた

二人は向かい合って座り・・二人共顔赤くね?

何となく予想の付いた俺はこれは負けかなと初めて敗北を認めた

予想は的中し殿下は見事ルラーナ姉を射止めて戻ってきたのだ

王妃様も今日射止めてくるとは思って無かった様で驚いていた

俺は敗北を認めるも嬉しさの方が勝り誰よりも早く声を掛ける


「おめでとう。ルラーナ姉、フェル」


殿下を付けずに呼び捨てにしたのだ

父も兄も姉も慌てるが王妃様は笑顔でフェルは


「ありがとうラフィ!今日から真の親友だな!あ、親戚にもなるのか。この場合ラフィの方が産まれが早いから義兄さんになるのかな?」


と少し浮かれていた

ほんとに珍しいな今日のフェルは

俺は「今まで通りで良いだろ」と伝え「それもそうか」とフェルが返す

この関係は公の場では出せないが私事では遠慮なく交わし合える事にフェルは嬉しそうだ

なんか悔しいから後日、徹底的に情報収集してからかおう

ルラーナ姉も「ありがとう」と言いちょっと泣いていた


無事に婚約話は先に進むがちょっとした問題もある

理由はいくつかあるが最大の問題は年齢

ルラーナ姉はフェルより3つ年上で普通は跡継ぎの事も考えて同年代か年下の相応の爵位家の娘が正室になる

前世の感覚だと3つ位と思うがこの世界では貴族共がうるさいのだ

年上だから跡継ぎが産まれないとやっかみや側室の押し付け等が色々と面倒になる

その辺りの懸念もあったのだがフェルがあまり五月蠅いなら側室娶って飼い殺してでもルラーナ姉を守ると宣言した

何とも男気溢れる言葉である


フェルの飼い殺すとは側室として貰ってやるが一切手は出さないと言っているのである

飼い殺した相手との子供が無ければその貴族は子も為せない者を妻にさせたと陰で言われ続ける

何も無ければ次の王はフェルなので目を付けられると何代かに渡って確実に日陰者が確定するのだ

フェルはそう言ってはいるが内心は側室を娶る気はないなと思っていた

だが王家にそれが許される訳も無く、フェルは高度高等学院卒業後すぐに式を挙げるとルラーナ姉に約束していた


その後、話は婚約成立で進められ王家の婚約ではかなり珍しい婚前恋愛結婚になり本も出版される事をこの時は誰も知らなかった

王族の婚前恋愛は非常に珍しく大体は結婚後にお互いを理解していく

現陛下と王妃も後者である

どうしても馬の合わない夫婦も当然いるがそういった夫婦は跡継ぎが生まれればお互いに若いのを囲い合ったり10年経っても生まれなければ離縁もしたりする

但し、離縁に関しては女性の方の貴族家が夫より下の場合に限られる

フェルとルラーナ姉は恋愛なので離縁はあり得ないだろうが








1週間後フェルとルラーナ姉の婚約が発表された












後日ルラーナ姉から一部始終を聞いた

ルラーナ姉は初めフェルの申し出を断った

王太子からの申し出を断るとか不敬罪で捕まってもおかしくない話である

最もフェルがそれをするはずもないが

ルラーナ姉は断った理由に想い人が居ると・・・だが決して結ばれはしない相手と言ったそうだ

フェルはそれを聞き、何となく悟った顔をし、それでも諦めることなく申し出をし、その度に懺悔ともとれるルラーナ姉の話を黙って聞いてくれたと言った

想い人に関してはルラーナ姉は最後まで言わなかった

フェルは誰か聞いた上で彼女にいくつかある提案をしたそうだ

何を提案したかは二人の秘密だと少し惚気たルラーナ姉


その後は時間が来るまで色んな話をルラーナ姉はしてフェルは聞き手になり、かなり意気投合したルラーナ姉は先の提案が無くても一緒になるとフェルの申し出を受けた

最後にフェルはある人物に全てにおいて勝てないが、勝てるチャンスが今この瞬間にありそれを手にしたい事も打ち明けたそうだ


『国を担う以上秘密は出来る』


そう言ったフェルはだからこそ国以外の事で秘密は作りたくないと真摯に向き合った結果だった

それがルラーナ姉に言わせると決め手だったそうで殿下となら一緒にと、そして何処か想い人に似ているとも思ってしまい、生涯をフェルと一緒に歩もうと決めた

打算が少しあるもルラーナ姉はフェルの真摯な態度にその打算についても打ち明けたが、フェルに言わせると同じ事を考えていたそうだ

俺が思ったのはこの二人は案外似た者同士なんじゃね?だった


こうしてクロノアス家では次女ルラーナが婚約者第一号となった















私は家族と話をしてから自室に戻りとあることを振り返ながら日記を書いている

二人は帰宅時間も近づいて来たので帰ってきて婚約に至った後

ラフィが素直に負けを認め、喜んでいる彼

それを思い出し、次にルラーナは彼との今までのお誘いとデートと告白を振り返る


告白された時に気付いたのはとっくに彼を好きになって愛していた事実

想い人が居ると告げて彼の告白を断り心がチクリとした事を思い出す

彼の事は好きだし愛している・・・だからこそ断った

私は醜く酷い女だから

それを理由に初めは彼にも伝えて断った


彼の答えは常人とは少し違っていて喜びの言葉だった

彼は両思いだったのは凄く嬉しいと言った

私は罵倒されると思っていただけに何かが壊れて涙を流した

彼は王族で王太子で頭も良いのに何故かあたふたしててそれが面白くて笑ってしまった


その後私は色々話し、彼は否定も肯定もせず聞いてくれた

全て話し終えた私はこれで終わりと言うように歩き出そうとしてまた告白される

その告白の中に絶対に私を逃がさないとばかりに色々と提案を盛り込まれた前代未聞の告白

ううん、告白ではなく交渉に近かった

それは全て私の為だけの提案

だから・・・一つだけ聞いてみた

何故私なのかと

返ってきた答えは理屈や理由はどうでも良く私が良いだった


彼の答えに私は何も返せなかった

そしてまた気付かされる

彼への好きと想い人への好きが微妙に違う事に


彼への好きは理由も理屈も無く好きだった

初めは違かったが今では彼と同じことを言える

では想い人へはどうか?想い人は凄いから好き・可愛いから好き

他にもあるが何か理由が出てしまう

そしてそれが彼の先程の答えとわかってしまった

理屈じゃないと・・・


だから私は家族に話した内容とは違う答えを彼に返していた

たった一つだけの彼との約束


『私に遠慮して側室を取らないのは認めない』


これが彼に出した私の答えだった

彼は私の答えに初めは茫然として理解できていなかった

だから私は・・・勇気を出して彼の何度も諦めずに申し出てくれた言葉を紡ぐ

私を貴方の妻にして下さいと

静寂が流れ、お互い近付き、返答はお互いの口付けで返される

こうして私は彼のフェルジュ・ラグリグ・フィン・ランシェスの妻になると誓った



最後に何故あんな約束をしたか書いておこうと思う

理由は単純で私の為に彼が悩む姿を見たくないから

跡継ぎが生まれない事態は避けなければならない



私はきっと彼の為なら想い人と同じ様にきっと何でも出来るから

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