第21話 冒険者パーティー(仮)

 翌日の朝、待ち合わせの場所に決めた冒険者ギルドの前に来た

 ギルド内は活気があって少し騒がしい位だ。

 辺りを見渡しウォルド達を探すがまだ来てない様で、そうなると当然絡まれるわけで。


「ガキが何の用でここにきてんだぁ?家に帰ってママの乳でも吸ってろや!」


 と言われて、イラッ!とした俺は周りにバレない様に雷魔法でアババさせて麻痺させました。

 バタッ!!と倒れる音が響き、周りがこちらを見る。


「何か食べながら来てたんですけど急に倒れて・・」


 考えていた言い訳を受付のお姉さんに言って後を任せる。

 すると間が良いのか悪いのかウォルド達が姿を見せる。

 倒れていた男を見て、小声で声を掛けてくる。


「何をしたんだ?」


「何もしてないよ」


 俺が何かしたと思ってるようだ。

 失礼な・・向こうから絡んできたので大人しく退場させただけなのに・・・・。

 あれ?俺、自重しようと思っていたのにな。

 何でこんなに自重しなくなってるんだ?

 ふと思い出した様に考えて、ゼロにあってからあまり自重し無くなっていた事に気付くも「ま、いっか」と呟き考える事を止めて、依頼ボードを見て内容を吟味してるウォルド達の元に行くと1枚の紙を外し全員に説明する。


「ゴブリンでも良いかと思ったんだが。ラフィはオークを倒してるし、丁度オーク討伐の依頼があったからそれにしようと考えているが異論は?」


 誰も異論は無かったのでオーク討伐に決まったがそこに一人の男がウォルド対して声を掛けてきた。


「ウォルド。今更オークの討伐依頼を受けるのか?」


「ちょっと別件で依頼を受けててな。その依頼と合いそうな依頼を受けるんだよ」


「訳ありか変わった依頼のどっちかかよ。んで、ガキ連れて依頼か?」


「まぁな。これ以上は依頼主の許可がいるから無理な」


 そう言って受付カウンターに向かうウォルド。

 俺はいかついおっさんに睨まれながらウォルド以外の皆と話をしていた。


 受注も終わり、依頼のオーク討伐に向かうのだがウォルド達に色んな冒険者が話しかけている。

 ウォルド達って結構有名人?

 その辺りの事は全く知らないのでさっきのいかついおっさんに聞いてみた。

 このおっさん、見た目に反して面倒見が凄く良かったのだ。

 ゼロほどではないが口は悪いけど。


 聞いて驚いたのだがウォルド達のパーティーはBランク筆頭と言われるくらい強く、年も若いので今一番売れてる冒険者だそうだ。

 パーティー名も聞いてみた。

 パーティー名は【輝く星】って名前だった。

 これは後で理由を聞かねば・・

 そんな感じでちょっと時間を取られたが討伐へと出発した。


 昨日悩んでいた武器だが、丁度良いスキルと魔法があり、それを使ってミスリルの双剣を作っておいた。

 使ったのは【創造魔法】で、素材をミスリルにしたのは魔法との融和性が良いからだ。

 少し耐久性が低いが魔法付与には一番相性が良い。

 今日は色々実験もするしな。


 双剣を作った理由だが、神剣は流石にヤバいと自重した為だ。

 以前にリリィ達を助けるために使ったが、斬れ味が尋常ではないし、ミスリル以上の融和性の武器とかはっきり言って異常である。

 自重しないなら使っても良いが、使うと何となく面倒事が増えそうなので、使うしかない状況以外では普通の武器を使用しておこう。






 ・・・・・2時間ほど歩いただろうか。

 輝く星のメンバーは目的地の森に着いた。

 一度休憩を取り、作戦会議をしてから森に入る。

 ここでウォルドから注意事項を言われた。

 森なので基本は火属性は使用しない方向で扱いに注意出来るなら使っても良い。

 万が一木に火が移ったら戦闘後に消火だが状況次第では先に消火する。

 他の冒険者の獲物の横取りは禁止だが危険と判断した場合は助けに行く。

 助けに行った際の獲物は半々。

 他にも細かくあったが大きく守らなければならないのはこの4つで、最後の注意事項はギルドのルールでもあるので破ってはいけないそうだ。

 但し、最悪の事態に陥った場合は生き残ること優先で注意事項は破棄と強く言われた。


 次に陣形の確認。

 前衛はウォルドとバルドで、中列には俺とヤナが組み、ムムノとナユルは後衛。 遺跡や洞窟の探索時はヤナが最前衛になり後は基本大体そのまま行くそうだ。

 隊列変更も状況把握が出来るからこそ!と、一つ勉強になった。


 次に俺の力量だが片手直剣の二刀流(某◯の剣士風)でどの程度の魔法付与が出来てどれ位の威力になるか調べる事になった。

 剣技に関しては以前にゼロとの修練で見ているので問題無いそうだ。


 俺はここでちょっと思案する。

 ぶっちゃけ付与は何でもできるのでどれを使うかだ。

 火と雷は凄くメインっぽいが王道で想像通り。

 風は鎌鼬にすれば殺傷力抜群で風自体も足止めにも使える。

 土は壁を強固に作れて防御を可能にし、岩を散弾銃みたいにして攻撃にも使え、軽装や捕縛にも使え補助としても優秀で応用力が抜群。

 水は攻撃・防御・補助・消火と他にも色々できそうで万能っぽい。

(自重するなら風が適任かな)と思考してそれを伝えて驚かれる。


「一体何属性使えるの?」


 とはムムノの言葉だ。

 俺は2属性を隠し5属性と答えてまた驚愕された。

 ムムノ曰く、「適正5属性で3属性付与の魔法剣士とか超希少」との事。

 これでも相当抑えて言ったんだが5属性でも多かった様だ。


 ヤナは「すっご~い」でナユルは「自分に1属性分けて欲しいです」と言っていた。

 男性陣は「これはすごいな(よ)」と同じ言葉だった。

 早速、出来る事を証明するために二本の剣に別々の属性を纏わせるのだが・・・あれ?なんで皆呆然としてるの?


「・・・・並列付与」


 ムムノがボソッと呟き俺は首を傾げる。

 並列付与ってなんぞや?

 わからないので聞いてみると「なんでラフィが知らないんだ!」と全員に突っ込まれた。

 これは・・・やっちゃった?

 詳しく聞くと並列使用は超高難易度で使える者は歴史上でも片手で足りる位しか存在してないらしい。

 これは相当やっちゃった案件みたいだ。

 ウォルド達も信用できるもの以外には話すなと言っていた。

 今話して良いのはギルマスだけにしとけと釘を刺されたほどだ。


 そんなこんなで全ての確認が終り、いざ!オーク討伐へ!と張り切っていたのだがウォルド達は既に疲れている様だ・・・精神的に。

 依頼の内容的に失敗は出来ない知名度なので行くけど。


 森に入り俺は万能感知でオークの居場所を捉えた。

 ムムノも探知魔法を使い捉えたようだが様子がおかしい。

 俺はその理由に勿論だが気付いている。

 バルドが「ムムノ?どうした?」と聞かれ、ムムノは「オークの数が異常。群れが出来てる」と告げてリーダーのウォルドに判断を仰ぐ。


「ムムノ、目標の数は?」


「数は50位。中に強い反応が11」


「上位種か?」


「上位種っぽいのが7で残りはそれより上」


 情報を聞きウォルドは考え込む。

 引くか・・殺るか・・。

 俺は詳細な情報を探知しているので話そうと考えたが探知魔法は無属性なので下手に話せない。

 さて、どうしたものかと考えるよりも早く事態は動いた。

 オーク共が別の冒険者に気付き、襲撃する為に移動を開始した。


 事態は一気に最悪の方向に動く。

 先程の話なら助けに行かないとダメだがそれは自分達が無事に生還するのが前提条件だ。

 俺は問題ないがウォルド達にはそうでない。

 ならばと、俺はとある提案をした。


 まずはヤナに標的になった冒険者に事態を伝えて共に離脱し、その後にギルドへ報告に言って貰う。

 残りのメンバーはオーク達と鬼ごっこして時間を稼ぐ。

 上手く行けば殲滅は可能とも付け加えておく。


 ヤナに任せた理由を聞かれたので「ヤナはレンジャーで足はこの中で一番早いから」と答える。

 彼女なら早ければ1時間で遅くても誤差20分程でギルドに着くと考えているのも忘れずに伝える。

 この距離ならギリギリまで近づいてから十分に鬼ごっこは可能である。

 更に森の出口はこちらの方が近いのも理由だ。

 いざとなれば森を出て撤退戦も可能で、勝算は十分にある

 ウォルドはその案を一部変えて採用した。


 ナユルは12歳でまだ若く成人前だ。

 なのでヤナと共について行き、標的になった冒険者をヤナと共に森を出るまで行動し、その後にヤナは単独でギルドへ向かう。

 ナユルは森からある程度離れたら救助した冒険者達と待機。

 救助した冒険者が逃げ出したのなら時間がかかってもヤナと共に行動とした。

 ナユルは何か言いたげだがリーダーはウォルドである。

 全員が頷き作戦は決行される。


 狙われた冒険者達は無事に撤退し始めたようだ。

 オーク達と距離が開いているとムムノが伝えるがここで予想外の事態になる。

 オーク達が進路をこちらに変えたのだ。

 距離は十分に取ってあったにもかかわらずこちらに狙いを変えきた。

 作戦上こちらは直ぐに撤退はできない。


 普通のオークなら数がいても脅威ではなく、犠牲を出さずに討伐は可能である。

 だが上位種の数が多いほど危険は増え、犠牲を出さずに討伐するのは困難になる。

 更に今の群れには不明の4体・・恐らく変異種がおり、危険度は未知数だ。

 ウォルドは必死に考える・・だが妙案はない。

 完全に想定外なのだ。


 俺は自重してる場合じゃないのかなと考えていた。

 俺にしてみれば危険度ゼロで楽々お掃除の作業である。

 自重を止めればそれで解決なのだから。

 ただ自重を止めると、絶対に面倒事になる!のは明らかで、だからこそ最悪を想定してからウォルドに進言をする。


「ウォルド。ヤナ達に向かわない様にある程度引き付けてから距離を保って森を出よう。ムムノは探知魔法を維持してヤナ達が森の出口付近まで近づいたら教えて。バルドはムムノを担いで全力疾走」


「ラフィ、お前・・・」


「現状どうやっても援軍は間に合わない。それなら今あるカードで勝負して生き残るしかない。幸い撤退させた冒険者がいるし若干だけど戦力は増えてる」


 ウォルドは何か考えた後に、


「・・・わかった。ラフィの作戦が一番勝率も生存率も高い。懸念はあるが当たらなければこれがベストだ」


 決まれば作戦決行だ。

 最悪の場合は俺が本気でやればいい。

 作戦通りに動きギルドにヤナが向かう前に合流したのだが・・・懸念は的中し、結果は最悪になる。

 ウォルドの懸念とは助けた冒険者が新人か低ランクの場合だ。

 助けた冒険者はE3人のF2人で、Fの2人は冒険者になりたての新人だった。


 オーク単体はE~Dであるが今こちらに向かっている群れは想定Aとはウォルドの言葉だ。

 オークの足音が少しずつ近づいてくる。

 ウォルド達は全員が覚悟を決めた。

 若いDのナユルまで覚悟を決めたようだ。

 新人組は泣いてへたり込んでいる。


 俺は・・・この討伐においては自重を止める事にした。

 ウォルド達には世話になった。

 出来る力があるのにしないのは傲慢で、傍観者に他ならない。

 俺はこの場にいる当事者なのだ。

 全ての人を救うなんて言わない。

 世話になった者や友人と家族は手の届く限り助けよう。

 例え恐れられて関係が壊れたとしても・・・。

 それに・・臨時とは言えパーティーメンバーなのだから関係は壊れないと信じよう。

 そう自分に言い聞かせ、俺は隠していた力の一部を行使する。


「ウォルド、バルド、ムムノ、ヤナ、ナユル、ここで見たことは秘密にしてくれ。悪いがそこの新人冒険者には誓約を使わせてもらう。ここから無事に帰れる代わりに今から起こること他言しないだ。破れば死ぬ」


 俺は一方的に告げ屋敷にいるルリとハクをゲートを使って呼ぶ。

 二匹は瞬時に戦闘態勢へ移行し元の大きさに戻る。

 普段は子竜・子狼の姿なのだ。

 俺はミスリルの双剣を空間収納にしまい、右手に片手直剣の神剣と左手に神銃を持ち戦闘態勢に移行する。

 音はどんどん近くなり数分後、オーク達が森から姿を現し・・・俺の蹂躙が始まる。


 森から出てきたオーク50体のうち6体をルリとハクが瞬殺する。

 二匹が一度距離を取った瞬間に神銃に雷の魔力を込めて撃つ

 それだけで23匹を絶命させ、10匹は虫の息になり、上位種のソルジャーは麻痺し、メイジはダメージを負った。

 残りの4匹は変異種で前に出会った個体と同じ強さであった。

 4匹は上位種を盾にしノーダメージだが俺には無意味だ。


 神銃を空間収納にしまい神剣を構え蒼炎を纏わせる。

 一振りするだけで虫の息の10匹を炭にする。

 その間にルリとハクは上位種7匹中6匹を瞬殺し、俺は蒼炎に白雷を纏わせて残った上位種を瞬殺する。

 これで残りは変異種4匹だけだ。


 神剣を上段に構え距離がある中で振り下ろす。

 白雷を纏った蒼炎の飛刃は直線状に放出され1匹を真っ二つにして焼き殺す。

 次に氷を纏わせ一瞬で首を飛ばし、切り口から全身が凍る。

 残り二匹はルリとハクが仕留めたようだ。

 どちらも噛み殺されている。

 こうして俺は自重していた力の一部を初めて人前で使った。
















 ウォルド達を生かす為、俺は隠していた力の一部を行使した。

 結果はただの蹂躙劇で、1分程で全て終わった。

 ウォルド達はどんな顔をしているだろう・・・。

 俺はまだ、前を見たままだ。

 振り返るのを躊躇っている・・・怖い・・そう怖いのだ・・・・。

 神喰い戦もゼロとの死合も恐怖なんて感じなかった・・いや、死んで転生してから今まで1度も怖いと思ったことは無い。

 仲の良かった人達の豹変・・これが一番怖いとは思わなかった

 いや、本当は知っている・・・前世でそれを恐れて彼女を作れなかったのだから。

 自重と言って逃げていたのがグラフィエル・フィン・クロノアスなのだから。

 そんな思考の坩堝に囚われそうになった時、ウォルドが声を掛ける。


「ラフィ・・お前・・・」


 ああ、やっぱり恐れられたか。

 逃げたい・・逃げ出したい・・・。

 だが、選んだのは俺だ。

 自ら選択して行動したんだ・・逃げてはいけない。

 頭ではわかっているが心がそれを拒否する。

 もう、色々と自分の中がぐちゃぐちゃだ。

 だが、そんな俺の心が次の一言で安堵に変わる。


「スゲーな!!いや、マジでダメかと思ったわ・・・」


 その言葉を聞き、俺は後ろを振り向く。

 そこにはいつもと変わらないウォルド達がいた。


 口々に凄いとか助かったとか声を掛けてくる。

 新人冒険者は腰を抜かしてポカンとしたままだ。

 理解が追い付いていないのだろう。

 俺は意を決してウォルド達に問う。


「怖く・・ないのか?」


「俺達に向けられたのなら確かに怖いさ。でもラフィは俺達を助けるために、守るためにしたのなら驚きはするが怖くはないさ」


 ウォルドが答えると輝く星の全員が力強く頷き同意する。

 俺は嬉しかった。

 頬を水滴が伝う。

 ウォルド達が慌てている

 ああ、俺は泣いているのか。

 人とは違う力

 自重しようと隠。そうとした力。

 それをウォルド達は認めてくれたのだ。

 俺は涙を流しながら笑い。


「ありがとう、皆」


 と告げ輝く星の皆の元に戻って行った。

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