幕間 王女と公爵令嬢の約束

 3人の密会が行われている頃、実は別室でもとある密会がなされていた。

 いや、正確には密会ではないのだが、端から見れば密会に見えなくもないので、この場ではあえて密会にさせて貰おう。

 密会の主はランシェス王国第5王女リリアーヌ・ラグリグ・フィン・ランシェスとティアンネ・フィン・ランシェス公爵令嬢である。

 二人は顔を赤らめつつ、時に息を吐き、話をする。


「ラフィ様・・あの時、凄くカッコよかったですよね~」


「ティア・・その話、何度目かしら?」


 リリィは呆れた様に言うが、ティアの言葉を否定はしない。

 確かに、助けてくれた彼はとてもカッコよかったから。

 襲われた恐怖と助けられた安堵の相乗効果もあるが、それを差し引いてもカッコよかった・

 顔も良く、自分達と同い年のラフィが醸し出す雰囲気もカッコ良さの一つだ。

 彼の醸し出す雰囲気は幼い時に見た一流冒険者と遜色なく安心感がある。

 そして、圧倒的な力・・好意を抱くなと言う方が無理であった

 当然二人も一目惚れしており、この密談は将来の為の密談なのだ。

 ラフィの話は更に加速していき、本題へと入る。


「ラフィ様は大成なさるでしょうね。正直、私の旦那様になって欲しい所ですが・・」


「リリィの場合、厳しくないかな?辺境伯家三男で血筋は良いけど、成人したら貴族じゃなくなっちゃうし」


「問題はそこなのですよね・・・言い方は悪いですがラフィ様は超優良物件です。かなりの無茶をしても婚姻したい相手ですね」


「私の場合は弟でも出来ない限りはかなり現実的だからね。曾お祖父様も気に入ってるみたいだし」


「ティアは良いわね・・私の場合は王族という縛りがあるから」


「陛下に頼んで貴族に・・って、次は爵位の問題が出てくるよね?後、私の方も少し・・じゃなくて、かなりややこしくなりそう」


 二人はどうすれば問題を解決できるか話し合う。

 結論から言えば貴族になった場合、最低でも伯爵以上が必須との答えは出た。

 だが、王族も貴族も早期婚約が当たり前であり、二人が婚約できる可能性は極めて低い事も改めて知る事になった。


 王族も貴族も普通は成人前に婚約者を決める事が多い。

 だが、年齢は勿論だが血筋や爵位も見られるし、きっちりした貴族なら婚約者の性格も加味するので実際には成人前の婚約は半分決まれば良い方だろう。

 では何が問題か?それはリリィが王族である事とティアが公爵家の一人娘である事だ。


 仮にティアの婿になった場合、血筋は問題無いし、現状は跡継ぎの男性がいないのでティア自身は問題無いが、一夫多妻制である王国は婿でも複数の妻を持てる。

 その際に問題になるのがリリィである。

 ティアと婚姻した場合、正妻はティアだが爵位はラフィが持つことになる。

 そうなれば、リリィが降嫁する条件を満たしてしまう為、ティアの座が危うくなり、奥が荒れたり、最悪の場合は王家VS公爵家なんて可能性もあるわけだ。

 それを望まない二人としては円満に動かざるを得ない。

 本当に王族と貴族は面倒である。


 二人は将来に向け様々に話し合うのだが、どうしてもリリィとティアの立場がネックになっている。

 唯一の打開策はラフィが独自に最低でも伯爵に伸し上がる事が一番軋轢が少なかった。

 だが、可能性としてあるのか?と問われると、無い!とは言えないが、奇跡的な確率とも言える。

 ラフィなら簡単に奇跡を起こしそうだが、無責任に頑張って!と言えるほど恥知らずな事はしたくはない。

 ならば、今二人が出来る事とは?・・答えは、文句が出ない程の地盤固めである。


 二人は結論を出すと頷き合い、次の話へと移る。

 そうして、将来への真面目な話で合ったり、ラフィのカッコよさに戻ったり、褒め称え勝負になったりして最後の議題に移る

 その議題とは、告白についてであった・・。


「最後は告白の順番だけど・・」


「順番も何も無いのでは?」


「それはそうなんだけど・・・」


 ティアはこう見えて引っ込み思案で少し人見知りでもある。

 助けて貰ったとはいえ、ティアが初対面のラフィと話をしたのは意外だったとリリィは感じていた。

 そんなティアを簡単に喋らせてしまうところが彼が魅力でもあるし不安でもある。

 ただのお人好しであれば良いがと思うが、もし詐欺師などであればとも考えてしまう。

 今は違えど、歳を重ねれば性根は如実に表れるのを王女である私は知っているから。

 しかし、後者の考えは後日捨てる事になる。


 それは何故か?グラフィエル・フィン・クロノアスとは単に自由に生きているだけ。

 一つ不安があるとすれば、どこか抜けてる部分はあるが完璧な人間などいない。

 国王である父でさえ迷いながら答えを出すのだから当たり前とも言える。

 そこに人間味が生まれて魅力となってるのだが、そこに気付いているのは現状だとリリィと兄のフェルだけであった。

 だからこそ兄も友にと誘ったのであろうから。

 私は思案の時間を終えて、ティアに一つの案を出す。


「私とティアは抜け駆けしない事にしましょう。ただ、家の事もありますからその時は仕方ない事にしませんか?」


「私はそれで良いけど・・リリィは良いの?」


「私としてはむしろ都合が良いんですよ・・・それ以外での告白はお互いに報告し合ってからにしましょう」


「リリィが良いなら私は別に構わないよ」


 こうして最後の議題も終わり、少し雑談をして、次は王女と公爵令嬢としての話に入る。

 ティアはこう見えて人を見る観る目がかなり高い。

 王女の私は幼い時から色々な貴族と会ってきたので出来て当然

 そんな二人が一人の男の子を好きになった。

 私達の観る目は間違っていたのかいないのか?

 その答えは時が経てばわかるだろうと思い、王女と公爵令嬢は王族と貴族の子供の話に戻り、情報交換をして行くのであった。






 尚、余談ではあるがこの話をリリィの母親である王妃がとある方法を使い、全て聞いていたことを二人は知らない・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る