幕間 秘密会談
この話だが時期的には決闘後に、ゼロ、陛下、先代公爵の3人が密談した時の事で、陛下達からは数年後に聞いた話である。
内容を聞いた時は絶句した。
では、どんな話がされたかと言うと……。
クロノアス家を除いた三人は、そのまま密談を始める。
ゼロは防音と遮断を展開する前に。
「王さん、部下を下がらせないと全員死ぬぜ」
と告げ、陛下が部下を下がらせたのを確認した後、二重で防音と遮断を展開した。
「で、話と言うのはどんなことだ? 大叔父も巻き込んでとなると、相当面倒くさいか厄介事の匂いしかしないのだが?」
「正解だ王さん。だが利益がねぇわけじゃねぇ。それに、俺の秘密にも関わる内容なんでな。念には念を入れてるのさ」
「ゼロ殿の秘密とな? それは儂も大いに興味があるのぅ」
「焦んなよジィさん。まずこの話については、墓まで持って行って貰う。俺の許可があった時のみ、そいつにだけ喋ることができる。話を聞いた瞬間に契約が発動してしまう仕組みなんだが、覚悟はあるかい?」
「契約内容は?」
「そこを確認するのは最もな話だな、王さん。契約内容は破った場合は即座に死亡。その魂は俺の元に来て管理される。ただ、それだけだ」
「何とも物騒な契約だな……」
「そう言うなよ。王さんだって、他人に漏らせねぇ秘密の4つや5つあるんだろ? 今の契約、あったらぜってぇ使うだろ?」
「そりゃ使うさ。ただな……4つも秘密は無いからな!!」
「3つはあるのかよ……「2つだ!!」どっちにしてもあるんじゃねぇか!」
「2人共、じゃれあいはそれくらいにして話を進めんか?」
「ジィさんの言う通りだな。で、覚悟はできたのかい?」
「「聞かなくてもわかるだろ」」
ゼロの言葉に、ニヤリと笑って答える二人。
その言葉と顔を覚悟と受け取ったゼロも、ニヤリと笑い返してから、話を進めた。
「いい覚悟じゃねぇか。毒を喰らわば皿までってか? んじゃ話す前に、これを見な」
「これは……お主のステータスか? ……ってこれは!!」
「大叔父? 何を驚いているんだ?」
「見てみよ。儂が驚いた理由は、全てそこに出ておる。そして、何故、あの契約が必要だったかもな」
「そこまでのものか……っておい! なんだこれは!?」
「2人共、確認したな? これを信じるか否かで話は変わる。で、どうする? 今なら記憶から消せるぜ? ただ、この先を聞いたらもう、後戻りは出来ねぇぞ?」
「儂はお主の話を聞こう。老い先短い人生だが、まさかこの年で、こんな面白い話に出会えようとはな。儂が乗る理由は、それで充分だ」
「俺も乗ろう。これが本当なら、捨て置けない話だ。そんな者が、乗れば利益がある――と言いおったのだ。であれば、乗るしかあるまいて」
「やっぱあんたら、頭は切れるし、利口だわ。後は……ラフィが助けた王女か」
「娘には……」
「安心しな。俺からこの話をするつもりはねぇ。但し、ラフィが話すかどうかまでは責任持てねぇ。まぁ、今すぐ話すことはねぇだろうがな」
「将来的に、話す可能性があると?」
「そこは……ラフィと姫さん次第じゃねぇかな? 後は、ジィさんとこの曾孫か」
「なるほど……そういうことか」
「俺にも分かった。本人の気持ちは尊重させるつもりだが、やるかどうかは今、返事できん」
「それで良いと思うぜ。まだ全員ガキだ。時間はある」
「それで? お主とグラフィエル君の話を聞きたい、んだが?」
「その前に、ジィさんには動いてもらいたいことがある」
「なんじゃ?」
「ヴァルケノズって知ってるか?」
「次期教皇筆頭だの。教皇になるには、後十年位と言ったところか」
「2年後、現教皇は引退して奴が教皇になる。後釜も育てちゃあいるが、こっちはどう転ぶか不明だがな」
「……そういうことか。儂がヴァルケノズ殿と密かに連絡を取り、彼を支援すれば良いのじゃな?」
「正解だ。次に王さんだが、今すぐに動く事はねぇ。だが、早ければ5、6年後に動いてもらう」
「俺に何をさせるつもりだ?」
「何も難しい話じゃねぇ。ラフィが冒険者ランクを上げる際に、国の認可が必要なランクがあるだろう? それを承認するだけだ」
「それは構わぬが、実力のない冒険者は死ぬぞ? 少なくともCはあると見てはいるが、それ以上なのか?」
「それについては、これからする話を聞きゃあ嫌でも納得するぜ。しかし、てめぇらも物怖じしねぇなぁ……。ま、そういう人選をしてんだけどよ」
「お主に言われとうないわ!」
「俺も同意見だな。普通の冒険者は、一国の王にあんな喋り方はせん」
「そりゃそうか。さて、俺とラフィの話だな。その前に、この話をラフィに悟られるなよ?」
「そこまでの話か?」
「お主にしては、警戒し過ぎじゃと思うのだが?」
「あいつは、ああ見えて鋭い。結構抜けてはいるが、ここ一番では俺が知る限り、5本の指に入る。だから俺はあいつにした。まぁ、他にも理由はあるがな」
「ふむ……。して、お主とグラフィエル君の関係は?」
「表向きは家庭教師と生徒、師匠と弟子だ。裏の関係は……一応だが、俺の使徒だ」
「マジか……」
「大マジだ、王さん。後、アイツのステータスな……下手したら、俺を殺せるぜ」
「そこまでの人物か……。だが、何故敢えて、自分を殺せる者を育てる?」
「んなの決まってらぁ! その方が面白いからだ!!」
「神とはこうも傲慢なのか……」
「傲慢とは少し違うがな。あいつ自身を気に入ってるのもある。後、これは教会の中でも、ヴァルケノズ以外は秘密の内容だ。確実に絶句するぜ」
「これだけ聞いて尚、絶句する内容とは……。儂、心臓止まらんかの?」
「止まったら蘇生してやるから、安心して心臓止めとけ、ジィさん」
「やはり神は傲慢じゃな……」
「んじゃ言うぞ。あいつ、全加護持ちで、レベルも最高クラスだから」
「な……なんだと!? それはレベル10と言う事か!?」
「違うぜ王さん。加護と魔法には、10の上にもう一段階レベルが存在している。更に、一部のスキルにもレベルが存在しているのは知ってるな? それも、10より上がもう一段階存在している。
「そこまでとは……」
「ですが陛下、確かあの神の加護は今まで誰も授かったものはおりません。グラフィエル君が授かったとは言えないのでは?」
「俺の加護か? 使徒にした時に授けたぜ」
「なんと! では、13神全てを持つと言うのか!?」
「そもそも、俺の加護は絶対に出ねぇんだよ。理由は強すぎる。ただそれだけだ。俺の加護の強さはレベルが関係ない上に、最低でもレベル7相当の、12神の加護全員分を持っているに等しいもんだからな。そもそも、12神全員の加護なんざ、普通じゃ耐えられねぇよ」
「では、それがグラフィエル君を使徒にした理由だと?」
「理由の一つだな。さっきも言っただろう? 俺が気に入った! それが一番の理由だ。なんつうか、ダチと言うか口の悪い弟みたいな感じだな」
「神にそこまで言わせるのか、あの少年は……」
「あいつといると面白いぜ。見ていて飽きねぇんだよ。んで、間違いなく女難の相があるぜ。くっくっくっ」
「悪い顔しとるのぅ……。儂もその手の話は嫌いではないが」
「将来は〝英雄、色を好む〟――か。問題は、何歳で英雄になるかだな」
「その考えに行きつくなら、あんたらも俺と同類って事だ」
「「一緒にされたくねぇ!!」」
「くっくっく。いいねぇ。さて……後、あんたらには、俺から素敵な贈り物がある」
「不安しかない……」
「そう言うなよ、王さん。さっき言ってた利益ってやつだ。あ、交換条件として、ラフィにあれこれ聞いたり、言ったりは厳禁な」
「それは構わぬが、一つ疑問があるのだが?」
「なんだい、ジィさん?」
「わしらの契約じゃが、話をしてる限りだと、グラフィエル君には適応しておらぬようじゃが?」
「あー、そこに気付くかねぇ……。上手く誤魔化したつもりなんだがなぁ」
「誤魔化すと言う事は、何かあるんだな?」
「これについては今は言えねぇ――が答えなんだわ。この先どう転ぶかで言えるようになるか、一生言えねぇか。あ、一生はねぇか。死んで魂だけになったら、直接教えてやるよ。未練残されてもかなわねぇし」
「「そこかよ!!」」
「ま、伝えられる範囲は全て伝えたし、ジィさん以外、数年は暇だから」
「儂だけ貧乏くじ引いた気がするのは、気のせいか?」
「ヴァルケノズは、もっと前から動いてるぜ」
「あやつも大変じゃのぅ……」
「教会の中で俺のこと知ってる奴は、ヴァルケノズに聞きな。それも、ジィさんの仕事だぜ」
「久しぶりに頑張るかの……」
「んじゃ利益になるもん渡して、俺は行くわ。あ、一応出来る範囲は、自分達で切り抜けろよ。冒険者の仕事は普通にやってるから、そっちに依頼出せば引き受けるかもな。指名依頼は極力勘弁な。んじゃな」
これが後で聞いた密会の内容だ。
何故ここまで詳細がはっきりしてるのかって?
映像記録ってやつで見せられたからだ。
尚、この話を聞いたのは、15歳以降である事をここで言っておく……。
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