第37話 離れていた3泊4日

「おかえり、文ちゃん!」


文治郎が3泊4日の修学旅行から帰ってきた。

「美哉…会いたかった…」

憔悴した文治郎が美哉を抱きしめる。

「文ちゃん? どうしたの?」

「離れていた間、美哉のことが心配で心配で…」


「文治郎、美哉ちゃんから離れるにゃ」

不機嫌な正宗がベリッと美哉から文治郎を剥がす。美哉と文治郎が付き合っていることは正宗に秘密だが、久しぶりの再開で忘れてしまっていた。


「ごめん」

「ううん、それより修学旅行は楽しかった?沖縄は暖かかった?」

「暑かった。まだ夏だなって思った。アイスが美味かった、ブルーシールアイスってやつ。こっちに戻ってきたら涼しくて驚いた」

「そうなんだ、私も来年行くんだよね。楽しみだなあ」


「そんなことより、美哉は大丈夫だったのか?」

「何が?」

「俺がいない間、変な男に絡まれたりしなかったか?」

こんなに心配顔の文治郎は見たことがない。

「も、もう! 大丈夫だって言ったじゃん!」

美哉の顔が赤い。いつもと違う文治郎に、ときめいてしまう。


「文治郎。毎朝、由香ちゃんがお迎えに来てくれたにゃ。鉄平も一緒にゃ」

「そうか。由香ちゃんが…。良かった、美哉」

「うん」

安心した文治郎の無防備な笑顔にドキドキする。


「鉄平って狼獣人の鉄平か?」

「うん、由香は鉄平と太一と仲が良くて…」

「……太一? もしかして、あの太一じゃないだろうな。美哉をいじめた太一とは別人だろう?」

「…えっと、……その太一…かな」

どす黒いオーラを纏う文治郎から目をそらす美哉。


「美哉…?」

「…鉄平がいたし、太一は空気だったから」

「美哉、ちゃんと俺の目をみて答えて」

下から覗くように美哉の顔を見る文治郎。キスの距離だ。

恥ずかしそうに、うつむいたまま顔を上げない美哉。何を聞かれたか分からなくなった。


「おじさん?」

ゴゴゴゴ…という効果音と共に文治郎が振り返る。


「て、鉄平の取りなしで、もう太一を排除するのは難しいにゃ。圧倒的に人族が多い社会で子供の頃に人族のちびっ子から耳や尻尾をからかわれるのは、よくあることにゃ」

文治郎の迫力に珍しく正宗が圧される。


「その都度、断固とした態度で対応しつつ和解することで獣人と人族は共存してきたにゃ。僕は和解したく無かったけど、太一一家への対応がやり過ぎだって声は当時から獣人社会の中でもあったにゃ。

今回、美哉ちゃんの送り迎えを許すことは必要だったにゃ。嫌だったけどにゃ」


「くっ…やはり行かなければよかった。鉄平め…余計なことを…」



また文治郎の仮想敵が増えてしまったが、いつもと違うワイルドな文治郎にドキドキが止まらない美哉だった。

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